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Q 新幹線車両に使用する潤滑剤,潤滑管理の方法※

新幹線車両に使用する潤滑剤並びに潤滑管理の方法はどのようになっていますか。

A

1. 新幹線車両の潤滑部分

新幹線車両の各潤滑部分で使用している潤滑油・グリースの種類は非常に多岐にわたっています。新幹線車両にある数多くの潤滑部分のうち,特に重要な部分は,走行に関係する車両の動力発生部分と,発生した動力を車軸に伝える動力伝達部分です。すなわち,モーターや駆動歯車装置,そして車軸軸受の部分がこれに相当します。

新幹線車両にはこれら以外,たとえば空調やサービス関係の部分にも潤滑部分がありますが,これらは新幹線車両特有のものではなく,また現状では特に問題となっていないので,以後は走行関係部分の潤滑についてのみ触れることにします。

2. 新幹線車両で使用している潤滑剤

現在営業に供されている新幹線車両の主な潤滑機器と,使用されている潤滑油・グリースを表1に示します*1。

表1 新幹線車両の主な潤滑機器と適用潤滑剤
適用個所
潤滑剤
品質
車軸軸受 潤滑油  新幹線用車軸軸受油   添加タービン油68の改良油
駆動用歯車装置 ギヤ油 GL-5級,#80(のぞみ)
GL-5級,#90(東海道,山陽)
GL-5級,#80(東北,上越)
ブレーキ増圧シリンダ   車両用トルコン油1号  
各種ダンパ ダンパ油  
回転空気圧縮機 新幹線用車軸軸受油
コンプレッサ油
添加タービン油68の改良油
#32
主電動機軸受 グリース  主電動機軸受グリース リチウムコンプレックスグリースNo.2  
(のぞみ,Max,山形新幹線)
リチウムグリースNo.2
(上記以外の新幹線車両)
歯車型たわみ継手 たわみ接手用グリース リチウムグリースNo.2+MoS2
空気シリンダ 空気シリンダグリース  

新幹線電車の車軸軸受(コロ軸受,玉軸受を使用)に使用される潤滑油は,添加タービン油68を基礎にしてこれに必要な性状を付加(低流動点化,若干の耐荷重性の付与等)した油です。

新幹線電車駆動用歯車装置に使用されるギヤ油は,その高速性のため,在来線のギヤ油より性能アップしたGL-5級相当の油としています。粘度についてはのぞみを除く東海道,山陽新幹線車両で#90が,寒冷地を走行する東北,上越新幹線車両で#80が使用されています。一方,「のぞみ」については,高速走行によるギヤ油の油温上昇を抑えるため#80が使用されています。

主電動機の軸受には2種類のグリースが使い分けされています。開業以来,新幹線車両の主電動機には,起動時にトルクの大きい直流電動機が使用されてきていますが,このタイプの主電動機の軸受には主電動機軸受用リチウムグリースNo.2が使用されています。一方,近年のパワーエレクトロニクスの進歩により,新幹線の主電動機にも誘導電動機が使用されるようになってきました。誘導電動機は同一出力の直流電動機と比較して回転を高速化することにより小型軽量化できますが,高速回転のため軸受の潤滑が非常に過酷となります。このため,誘導電動機を装備している「のぞみ」や「Max」では主電動機軸受の潤滑に高速性能のよいリチウムコンプレックスグリースNo.2を使用しています。

3. 新幹線車両の潤滑管理

新幹線車両の潤滑管理は,車軸軸受油及び駆動歯車ギヤ油については,48時間ごとに車両基地で油量,色,濁り等を保守要員が油面計によってチェックしています。また,主電動機軸受部については,軸受部に温度シールを貼付して軸受温度を日常的にチェックしています。

潤滑油,グリースの交換は,原則として軸受部分を解体検査する際に行い,現在では車両が30万キロもしくは45万キロを走行するまでの間に実施しています。

新幹線車両の主要潤滑油の管理項目及びその管理基準値を表2に,また,グリースの劣化管理項目及びその管理基準値を表3*2に示します。

  表2 新幹線車両用主要潤滑油の管理項目
      及び管理基準値(使用限界地)
管理項目
(管理性状)
管理基準値
駆動歯車
 装置ギヤ油 
 車軸軸受用 
色相(ASTM) - 6.0以下
粘度増加率(100℃) % ±10以下 ±10以下
ナフサ不溶分 wt% 0.5以下 0.2以下
トルエン不溶分 wt% 0.2以下 0.1以下
摩耗金属 (Fe) wt% 0.1以下 0.1以下
全酸価増加値 mgKOH/g   - 0.2以下
水分 wt% 0.1以下 0.1以下
極圧添加剤残存率 % 20以上 -
注) 各油とも管理項目の中の1項目でも管理基準値を超えた場合には
   使用限度とみなし,更油することが望ましい。
表3 新幹線主電動機軸受用グリースの管理基準
管理項目
管理基準値
ちょう度 (不混和) 150〜350
滴点 ±20℃
酸価 (オレイン酸として) 5%以下  
水分 5%以下
金属分 鉄:0.5%以下
銅:0.3%以下
油分離 30%以下
添加剤の残存量   (参考として測定)

これらの管理基準値は,実験室的試験による検討と長期の実車試験による検討を総合的に評価した結果を基に決定されているものであり,これらの各項目の一つでも管理基準値を超えた場合には,継続使用しないことにしています。これらの管理基準値は,潤滑管理だけでなく,潤滑剤の耐久性評価にも使用しています。

4. おわりに

新幹線車両で使用している潤滑油・グリースの概要と潤滑管理等について述べてきました。新幹線車両では,最近特に高速走行が可能となる車両が相次いで開発されてきており,これに伴って潤滑油・グリースの耐熱性,耐久性等の向上が要求されています。この方面での潤滑剤の進歩に期待しています。

※Q&A第2集発刊時点


<参考文献>
*1 鈴木政治:車両用潤滑油,トライボロジスト,35,2 1990,p101〜106
*2 鈴木八十吉:使用グリースの劣化判定,鉄道技術研究資料,37-2, 1980,p89〜94


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