貴社の廃油・廃液減量化対策関連製品導入の際のメリット | 水溶性油剤の廃油廃液減量化対策 | ジュンツウネット21

「貴社の廃油・廃液減量化対策関連製品導入の際のメリット」  2006/8

株式会社アタゴ

はじめに

金属加工に欠かせない切削油であるが,近年使用量の低減・廃油減量化が推奨されている。直接的廃油減量対策ではないが,適切な濃度管理により,切削油使用期間の延長,廃油・廃液量の減少につながることから,弊社製品による水溶性切削油の濃度管理とその効果について説明をさせていただく。

1. 濃度管理について

2つの濃度管理に液体濃度計(屈折計)が使用されている。

(1)水溶性切削油は原液を使用者が水で希釈して使用する。液体全体(水+切削油原液)の切削油原液の比率を濃度%で表す。単位は容量/容量を用いる。この希釈濃度を管理する。

(2)タンク内の使用開始後の切削油は時間の経過とともに水分の蒸発や工作機械や加工部品への付着により,濃度が変化する。この濃度変化を管理する。

2. 屈折計について

液体濃度計(屈折計)の測定原理は屈折率である。濃度と屈折率に直線性の相関があるので,濃度に換算している。

図1のように,コップに水を入れ,その中に箸を入れてみると,箸の先が曲がって見える。次に,水の代わりに濃い砂糖水を入れて同じことをしてみると,水の時よりもさらに曲がって見える。これが「光の屈折」現象であり,屈折計はこの原理(液体の濃度が高くなると,その屈折率も比例的に上昇する)を応用した測定器である。

水と砂糖水による,光の屈折の違い
図1 水と砂糖水による,光の屈折の違い

屈折率は空気が1.000,水が1.333というように数値が細かいので通常,屈折計は基本的な目盛としてBrix(ブリックス)という目盛が用いられる。

3. 換算表・グラフの作成

「屈折計目盛(Brix)対濃度」は液体の種類ごとに異なるので,水溶液の濃度を測定する時は,「屈折計目盛(Brix)対濃度」の換算グラフを事前に作成する必要がある。下記に換算グラフの作成方法の例を記す。

例)水溶性切削油を濃度0~20%の範囲で管理する場合

(1)換算グラフ作成用に,濃度10.0%および20.0%の水溶性切削油を作成する。濃度の単位がg/100g,g/100mL,mL/100mLのいずれかを前もって確認しておく。

g/100g(重量%)の場合,濃度10.0%とは天秤を用いて,切削油原液10.0gと水90.0gを混合する。mL/100mL(容量%)の場合,濃度10.0%とはメスシリンダーを用いて,切削油原液10.0mLと水90.0mLを混合する。このように,全量が100gまたは100mLになるように切削油を希釈する。

(2)濃度計(屈折計)で作成した濃度10.0%,20.0%の切削油を測定し,屈折率目盛(Brix)値を読み取る。

(3)仮に,濃度10.0%の切削油がBrix7.5%,濃度20.0%の切削油が13.7%だったとする。

このデータを基に,図2のような換算グラフが作成できる。

屈折計目盛(Brix)対濃度」換算グラフ

図2 屈折計目盛(Brix)対濃度」換算グラフ

以後,換算グラフから,屈折計の測定値(Brix) を基に,未知の切削油濃度%を知ることができる。

例えば,屈折計の測定値がBrix 8.5%であれば,上記の換算グラフから,濃度11.5%であることが分かる。

また,同じ水溶性切削油であっても,メーカーや液品種によって異なるので,液品種によって別の換算が必要である。切削油のメーカーの中には,品種ごとに換算係数を記載した資料を用意している場合もある。

4. 濃度計(屈折計)

(1)手持屈折計:蓋板を開いて液を2~3滴,プリズムに滴下して採光板(蓋板)を閉じ,接眼鏡を覗く。明暗の境界線が横切った目盛値が濃度(Brix値)になる。写真1は「自動温度補正・防水機能付手持屈折計MASTER-α」である。自動温度補正機能と手持屈折計では世界初の防水仕様(IP65)を兼ね備えたモデルである。目盛の見やすさ,持ちやすさ,サンプルの載せやすさ,排液のしやすさを改良した。防水性により耐久性も強化し,作業現場でも使用できる。

(2)ポケット濃度計:デジタルタイプの濃度計である。液を2~3滴,プリズムに滴下してスイッチを押せば瞬時に濃度をデジタル表示する。非常にコンパクトで片手で持ったまま簡単に操作ができる。防水仕様で使用後は器械全体を水で丸洗いできる。電池内蔵,重さ100gで携帯に便利である。写真2は「ポケット切削油濃度計 PAL-101S」である。切削油の濃度管理に適した測定範囲,温度範囲,材質,機能を備えている。誤って水に落としても「浮く」ので,現場での使用に最適である。

「自動温度補正・防水機能付手持屈折計MASTER-α」  
写真1 「自動温度補正・防水機能付手持屈折計MASTER-α」
 
「ポケット切削油濃度計PAL-101S」
写真2 「ポケット切削油濃度計PAL-101S」

5. 濃度管理のメリット

(1)原液使用の無駄を防げる

水溶性切削油は油槽に希釈液の状態で貯められている。濃度管理をきちんと行えば,不必要に原液を加えることが減り,原液使用の無駄を防げる。

(2)交換更油期間が伸びる

通常,油槽に原液を加える,又は,水を加えることを繰り返す。しかし,年に一度ぐらいの割合で,油槽の液を全て新しい希釈液に取り替える。日頃,濃度管理をきちんと行なっていれば,取り替えのサイクルを長くすることができる。

(3)廃油の量が減る

交換更油期間が伸びるということは,取り替えた古い油を廃棄する回数も減る。

また日頃も,濃度管理を誤ると,油槽の容量の関係から,槽内の液を一部,廃棄して,原液又は水を加えることが生ずる。

(4)工作機械の寿命が伸びる/保守が容易になる。

適切な濃度の切削油で加工することにより,工作機械の刃先を痛めることが防げ,刃先の寿命が伸び,保守も容易になる。

(5)作業効率が上がる

適切な濃度(pH管理との併用が望ましい)の切削油を用いることにより,作業者の手荒れや臭いを防止でき,作業効率が上がる。

(6)トータル的な経済効果

上記による経済効果は相当な金額になり,計り知れないものがある。これにたいして,屈折計(濃度計)は3万円以下の価格で購入できる。測定も2~3分で簡便に行なうことができ,作業の妨げにもならない。

ほんの僅かな投資と心がけで,投資額の10倍から100倍のコスト金額を削減することができる。

おわりに

以上,水溶性切削油濃度管理と効果について記した。弊社の液体濃度計(屈折計)が少しでもお役に立てば幸いである。

最終更新日:2023年5月2日