水溶性油剤腐敗対策の製品導入事例 | 水溶性油剤の廃油廃液減量化対策 | ジュンツウネット21

「水溶性油剤腐敗対策の製品導入事例」  2006/8

田中インポートグループ株式会社

混入油除去器 チューブスキマー

水溶性切削液への混入油は,機械の摺動面の潤滑油,加工物に付着した防錆・潤滑油が発生源である。最近の機械によっては,摺動油が液タンクに流れ出ない構造を持ったものや,潤滑油の代わりにグリスを使用している機械もあるが,加工物に付着した油の混入は防ぎようがなく,入った油を除去する以外に方法はない。

混入油の除去としては,オイルスキマーが一般に使用されている。ベルト状や円盤状の油取り器具を液タンク内で回転させ,それに付着した混入油をタンク外に取り出す原理のものである。ベルト式スキマー,円盤式スキマーと呼ばれている。比較的安価であること,取り付けが簡単であることより,油除去には非常に便利である。

ただ,ベルト式・円盤式ともに取り付けのために,タンク液面とその上方に設置可能な空間が必要であり,取り付け・設置上の制約がある。例えば,タンク上面がオープンである大型マシニングセンターでは設置は容易であるが,NC旋盤,複合機,小型マシニングセンターなどのように,切削液タンクの上にすっぽりと機械が乗り,機械を覆った構造のものでは取り付けは難しい。補助タンクを追加設置し,補助タンクにスキマーを設置する方法があるが,コスト面,フロアースペースの問題であまり利用されていない。

このような機械のユーザーでは,切削液の腐敗や悪臭になすすべもなく,交換頻度を頻繁にされているところも多々見られる。環境とコストの無駄である。

このようなタンク密封型の工作機械にも対応できるスキマーとして開発されたのが,米国Zebra社製のチューブスキマーTS900である。基本原理はベルト式・円盤式と同じであるが,その特長としてベルトや円盤の代わりに直径約5mmのビニール製チューブを使用したことである。チューブがタンク内を旋回し,チューブに付着した混入油をタンク外に取り出す仕組みのものである。(図1

チューブに付着した混入油をタンク外に取り出す仕組み 
図1 チューブに付着した混入油をタンク外に取り出す仕組み

チューブを入れることができる小さなすき間(50×100mm程度)さえあれば取り付けが可能で,ほとんどどのような工作機械にも使用できる。本体も75×200×150mm(高さ)とコンパクトで,設置が非常に簡単である。最近の例としては,床設置面積を極小にした最新型超コンパクトNC旋盤にも取り付けることができた。

クーラント用防臭・防腐剤 ブルーフレッシュ

混入油の除去により雑菌の繁殖・増殖はかなり抑えられるが,梅雨や夏場の繁殖しやすい季節では,不十分な場合がある。雑菌そのものに対して何らかの手を打つ必要がある。

雑菌対策としては,殺菌剤が一般的である。雑菌そのものを死滅させるので,効果は劇的である。タンクに殺菌剤を入れることにより雑菌が死滅するとともに,悪臭が消され,pH値も上昇する。切削液の腐敗・悪臭は瞬時におさまる。

ただ,殺菌剤は瞬時の殺菌効果がある一方,それが殺菌剤であるだけに,作業者の健康に対する影響,廃棄時に環境に対する影響など,取り扱いには充分な注意を要する。

殺菌剤と同じような効果を持ちながら,より安全に取り扱えるものとしてZebra社が開発したのが,ブルーフレッシュである。

ブルーフレッシュはホウ素系化合物を主成分にした,直径約50mmの錠剤である。動植物に有害な物質は含んでおらず,取り扱い上の注意は水溶性切削液より簡易で,切削液の取り扱い以上に特に注意を要するものはない。効果としては,殺菌剤と同じように悪臭が消され,pH値が上昇する。切削液の腐敗進行がおさまる。

ただ,殺菌剤と違い,雑菌を死滅させるのでなく,その活動を不活性化させることに特長がある。殺菌剤に比べ,より安全である。ブルーフレッシュは雑菌の増繁殖を抑え,硫化水素の発生を止めることにより,切削液の腐敗・劣化のプロセスを断ち切る。

使用方法はごく簡単である。臭い始めたタンクに1週間から2週間に一度,ブルーフレッシュを100Lあたり1錠,投入するだけである。最近の使用例を表1に示すが,様々な加工環境で効果を上げている。今回は特に,建機メーカーユーザーの集中タンクでの劇的効果を報告する。

集中タンクはタンク最大容量が6,000L,通常3,000Lのエマルジョンが入れられている。機械や集中タンク近辺のみならず,周辺通路でも悪臭がひどく,改善のテーマになっていた。

ブルーフレッシュ5錠を網状の袋に入れ,集中タンクへの切削液還流口にぶら下げたところ,約3日で悪臭が激減した。ブルーフレッシュ投入前後の悪臭の変化を表2に示す。その後,10日に1度ほどブルーフレッシュを網袋に入れるだけで効果は持続している。

表1 ブルーフレッシュ使用事例
業種・加工内容 機種 タンク容量 切削液のタイプ 備考
自動車デフ・シャフト加工 MC 300L エマルジョン 悪臭がひどかったが,5日で完全消臭
機械・歯車部品加工 NC 100L エマルジョン 年に二度の液交換でも悪臭がひどかったが,投入後3日で完全消臭
ガス器具製造 NC 100L エマルジョン  
金型加工・研磨 MC 300L エマルジョン チューブスキマーと併用して使用
油空圧機・シリンダー NC 100L ケミカル 切削液管理が厳しいとの理由で使用
船舶部品加工 車軸旋盤 100L ケミカル 液交換をせずに放置状態だったが,5日で完全消臭
車軸・部品研磨 円筒研削盤 50L 研磨液 浮上油を除去しても悪臭がひどかったが,投入後1日で消臭
ステンレスパイプ切断 自動切断機 200L ケミカル  
自動車エンジンアルミ部品 MC 200L エマルジョン  
車両部品製造 MC 400L ソリュブル  
東北地方寒冷地ユーザー様  MC 300L エマルジョン 冬季暖房使用によりタンク内の液温が上がり,切削液が腐敗するために使用 
表2 建機メーカーからの使用結果
測定場所 ブルーフレッシュ
投入前
ブルーフレッシュ
投入後
手洗い所前の通路 305 86
MC4号機前の通路工 290 85
圧嵌機前の通路 270 87
MC6号機前の通路 - 70
集中クーラントピット上  450 91
集中クーラントピット内 - 120
MC1号機内(外) 304 96(87)
MC4号機内(外) 430(290) 115(84)
MC5号機内 - 114
MC6号機内(外) 263 223(115)

 ※臭い確認センサ:ポータブル型ニオイセンサXP-329
  (新コスモス電機製)

なお,悪臭の対策として良性のバクテリアを投入した切削液では,バクテリアとブルーフレッシュの効果が相殺されるので,併用は望ましくない。ご注意願いたい。

最終更新日:2023年5月2日