ホーニング油はホーニング加工する際,加工物と砥石との間にあって砥石の目詰まり状態を遅らせたり,加工物との潤滑作用,加工物の熱変形を防ぐなど種々の目的をはたしているようにいわれています。このような多くの機能をそなえたホーニング油を実際に使用する時,ホーニング加工要因といったものとどのようにかかわりがあるのでしょうか。
解説します。
1. ホーニング加工とは
ホーニング加工は,砥石を用いてこれを一定の圧力で加工物面に押し付け,加工物との間に回転と往復運動を与え,多量のホーニング油を注ぎながら目的とする表面あらさと寸法,形状を得る加工法で,精密仕上げ法の一種とみなせます。すなわち,ホーニング加工では,刃物に代えてホーニングツール(図1に示す)によって,中ぐり,リーマ仕上げまたは内面研削仕上げを行ったものを,ラッピングより能率よく真円度,円筒度,および表面あらさをより精密に仕上げるものです。
図1 ホーニングツール |
2. ホーニング油と加工要因
ホーニング油は,切削粉や砥粒の破片を洗い流す清浄性を保つことが大切で,基材としては主として灯油か軽油が用いられます。これに潤滑性を付与するため塩素系または硫黄系の極圧剤や油脂を配合したものが多く,表1にその一例を示します。なお,水溶性油は不適当です。
表1 ホーニング油
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ご質問のホーニング油と加工要因とのかかわりと言うことになりますと加工になにが重要な因子となるのかといったことになります。
ホーニング加工での重要因子としては, (1)砥石 (2)切削方向角 (3)ホーニング速度 (4)圧力 (5)ホーニング油の5点をあげることができます。
(1)ホーニング砥石
A砥粒またはC砥粒を用いたビトリファイド砥石が広く使用されますが,精密仕上げ用にはレジノイド砥石も多く用いられています。砥石の粒度とホーニング仕上げ面のあらさとの関係を一例とし図2に示します
図2 ホーニング仕上面のあらさ |
(2)切削方向角
砥石面上の一点は加工物に対して斜めの線を描き,ホーニングツールヘッドが下がるときと上がるときでその方向が変わり,仕上げ面には図1(b)で示しましたようにクロスハッチ線が描かれます。
(3)ホーニングの切削速度
円筒方向で30~60m/min,軸方向速度はその1/3とするのが標準とされています。
(4)圧力
ホーニング圧力は砥石の接触面積当たり3~7kg/cm2のものが多く見受けられますが,レジノイド砥石による精密仕上げでは1kg/cm2程度の低圧力のものもあります。
なお,ホーニング加工の主な用途には,軸受金,内輪内径,外輪ハウジング仕上げなど軸受部品仕上げや鋼製軸の外周面仕上げ等の分野があります。