R&Oタイプ油について解説します。R&Oタイプ油のRはRUST INHIBITOR(さび止め剤),OはOXIDATION INHIBITOR(酸化防止剤)の頭文字のRとOの意味です。したがって,基油に添加剤としてさび止め剤と酸化防止剤を配合し,両性能をもたした潤滑油ということになります。
R&Oタイプ油とはどのような潤滑油か
R&Oタイプ油とはなにを意味するのでしょうか,またR&Oタイプ油はどのような潤滑個所に用いられる油なのかその用途をあげて分かりやすく説明してください。
解説します。
まず,言葉の意味から説明しますとR&Oタイプ油のRはRUST INHIBITOR(さび止め剤),OはOXIDATION INHIBITOR(酸化防止剤)で,両添加剤の頭文字のRとOの意味です。したがって,R&Oタイプ油とは,基油に添加剤としてさび止め剤と酸化防止剤を配合し,両性能をもたした潤滑油ということになります。
ところで,潤滑油を作る基油には製造工程上から溶剤精製基油と水素精製基油の二つの工程の基油がありますが,色安定性,添加剤の効果などの点では後者がよいとされています一方,用途分野の立場からみますとエンジン油基油としては前者がまさっているといわれています。
各種潤滑油は,添加剤の中から必要とする性能を持ったものを選択し,適量をホモジナイザーにより配合して潤滑油製品とします。こうしてできた製品の性能の確認は,実験室の試験機による場合と実際に使われている機械を用いて行う実機試験とがあります。
一般にR&Oタイプ油のさび止め剤の性能確認には,JIS K 2510試験法に準拠した蒸留水法か塩水法のいずれかで実施しています。この実験室的な評価と実際の機械との性能上の相関性は特定の機械で求めた例はありませんが,この試験条件で24~48時間後に「さび」を認めないものであれば循環給油システムに用いる潤滑油としてさび止め性能は十分と考えられています。
次に,酸化防止剤の性能の確認には各種酸化安定度試験(1)~(7)(下記)などがあります。わが国ではR&Oタイプ油の評価には一般に(4)JIS K 2514 タービン油酸化安定度試験 (3.2)が多くの場合用いられています。この試験は,アメリカのASTM(アメリカ材料規格協会)の試験法を引用したもので,ASTM D 943試験は試料油300mL,蒸留水60mL,鉄と銅線の触媒コイルを試験管に入れ,これを95℃の恒温槽に浸漬し,酸素を3L/hrの流量で細管から吹き込み,油の寿命は全酸価が2.0mgKOH/gになるまでの時間としています。この試験結果と実用性能との相関性は,添加タービン油で1000時間以上の油であれば実用タービン機で10年あるいはそれ以上の使用を保証し得ると考えられます。
このことは,JISが1000時間で酸価1.0mgKOH/g以下とASTMの1/2であり,非常に厳しい規格値に合格しており,より信頼性の高い相関性を持っていると言えるのではないでしょうか。
では,R&Oタイプ油と無添加油(ストレート油ともいう)とでは酸化安定性はどの程度違うかについて図1にその関係を示します。この図からもわかるように,無添加油では短時間に酸価が上昇してスラッジの生成,油の色変化がみられるようになります。しかし,油が酸化を受ける度合は基油の違いによって,その度合に大きな差があるため無添加油ならば何時間といった具体的な時間を示すことはできませんが,概して短く,同一基油では目安として1/3~1/5程度と思われれば良いと考えます。
図1 R&Oタイプ油と無添加油の酸化安定試験の比較 |
次に,R&Oタイプ油の代表的製品にはどのような製品があるかと申しますと,JIS製品規格では添加タービン油です。また,市場品としてはR&O作動油がこれに相当します。これら製品の用途は今さらいうまでもなく,添加タービン油は火力用発電タービン機の軸受用潤滑油や,各種循環給油システムの潤滑油として最も広く用いられています。
また,R&O作動油は圧力70kgf/cm2以下の比較的マイルドな油圧システムの媒体,軸受用潤滑油に広範に使用されるとともに各種軽荷重下の増減速機の潤滑油としても使用されています。
各種酸化安定度試験
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作動油の分類―工業用,船舶用
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