グリースの構造安定剤(グリース特有の添加剤) | ジュンツウネット21

グリースに用いられる添加剤には,酸化防止剤,防錆剤,極圧剤などがあります。ほとんどが液体潤滑油と共通なものですが,グリース特有の添加剤として構造安定剤があります。この構造安定剤の機能と使用例について解説します。

グリースの構造安定剤(グリース特有の添加剤)

グリースの構造安定剤について説明して下さい。
解説します。

グリースは多くの産業機械・設備をはじめ,自動車,家電製品など様々な分野で使用されており,社会生活上,必要不可欠なものになっています。グリースは,液体潤滑油に金属石けんなどの増ちょう剤を分散させた半固体状または固体状の潤滑剤のことであり,本質的な性能は主に増ちょう剤と基油の種類により決定されます。また,近年の各産業分野の著しい技術の進歩発展により,グリースへの要求性能はますます高度なものになっています。そのため,グリースの性能の向上・改善のために各種添加剤が使用されています。グリースに用いられる添加剤には,酸化防止剤,防錆剤,極圧剤などがあります。これらはほとんどが液体潤滑油と共通なものですが(ただしグリース構造に悪影響のないものを選択的に使用する),グリース特有の添加剤として構造安定剤があります。

ここでは,この構造安定剤の機能と使用例について説明したいと思います。

1.グリース構造安定剤の機能

グリースの主成分の一つである増ちょう剤は,基油中でミセル構造を形成するように生成分散され,グリースを安定化しています。構造安定剤の機能は,増ちょう剤のミセル構造の安定化を助けることです。構造安定剤の添加により,グリースの性状は次のように改善・向上します。

(1)滴点の向上
(2)油分離の低減
(3)機械的安定性の向上
(4)耐水性の向上

2.構造安定剤の使用例

構造安定剤の代表的な例としては,含水型カルシウム石けんグリース中の水分があげられます。含水型カルシウム石けんグリースを作る場合,増ちょう剤のカルシウム石けんと基油だけではグリース状を形成しません。この場合,水分が構造安定剤として必要不可欠なものとなります。そのため,含水型カルシウム石けんグリースは耐熱性に乏しく,80℃を超えると構造安定剤として存在する水分が蒸発してグリース構造が破壊し,石けんと基油が分離してしまいます。そこで,耐熱性を向上させるため水の代替として,高級アルコール,グリコール,モノグリセリドなどの沸点の高い物質を構造安定剤として用いることにより,120℃位まで分解しないカルシウム石けんグリースがあり,無水型カルシウムグリースと呼ばれています。

これ以外にも表1に示すように,構造安定剤には種々の物質があり,増ちょう剤と基油に応じて単体または複数物質を組み合わせて用いられており,ミセル構造の安定化に効果を上げています。

表1 構造安定剤に用いられる物質
物質
金属石けん Ca,Al,Zn,Mg
高分子物質 ブチレン重合物(ポリイソブチレン)
グリコール プロピレングリコール
高級アルコール グリセロール
モノグリセリド グリセロールモノオレエート
脂肪酸 低級脂肪酸,多塩基酸

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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最終更新日:2021年11月5日