潤滑油のパッケージ添加剤 | ジュンツウネット21

パッケージ添加剤とはどういうものですか。また，どのようにして分析すればよいのか教えて下さい。

解説します。

潤滑油のパッケージ添加剤とは，高度に精製された潤滑油基油に所定量の添加剤製品を添加すればそのまま潤滑油製品になるように，あらかじめ配合された添加剤のことです。

一例を挙げますと，マルチグレードガソリンエンジン油用パッケージ添加剤は粘度指数向上剤，清浄分散剤，流動点降下剤，酸化防止剤，摩耗防止剤などからなっています。パッケージ添加剤を適切に選択して潤滑油基油に添加すれば，そのままSE，SF，SG，SH等の規格に合格する製品が得られます。

パッケージ添加剤の赤外線吸収スペクトル図を図1に示します。また，エンジン油中のパッケージ添加剤の分析方法を図2に示します。

図1　パッケージ添加剤の赤外線吸収スペクトル（内容：過塩基性Ca-スルホネート，過塩基性Ca-フェネート，無灰分散剤，ZnDTP）

図2　パッケージ添加剤の分離分析法

エンジン油をゴム膜透析して，透析油と透析残さに分離します。透析油は次にシリカゲル・クロマトグラフィを行って基油を飽和成分，芳香族成分，レジン分に分離し，ジチオりん酸亜鉛やさび止め剤はレジン分に濃縮されますので金属分析と赤外線吸収スペクトル法（IR）で同定します。

一方，透析残さは粘度指数向上剤過塩基性フェネート，過塩基性スルホネート，過塩基性カルボキシレート等を含みます。次の塩酸分解を行うと，過塩基性Ca-フェネートはアルキルフェノールとCaCl₂，過塩基性Ca-カルボキシレートはアルキルカルボン酸とCaCl₂，粘度指数向上剤（例えばポリメタクリレート）は塩酸と全く反応しないのでそのまま残ります。

透析残さを20％HCl／メタノール溶液50mLで処理して蒸発乾固し，残さを50mLのトルエンで抽出してろ過します。Amberlyst29（表面積63m²/g，気孔率51％，平均細孔径650Å，ローム・アンド・ハース社製）を脱イオン水に24時間浸漬します。次に内径1cm，長さ30cmのクロマトグラフ管に充填します。樹脂をアセテート型に変換して使用します。500mLの4％NaOH水―200mL，脱イオン水―500mL，4％酢酸ソーダ水―200mL，脱イオン水と順次処理します。次に100mLメタノール―50mLトルエンを通します。次に上記のトルエン抽出液試料を注入し各種の溶媒を通して4つのフラクションに分けます。

すなわちトルエンによって粘度指数向上剤（ポリメタクリレート等）が脱着され，メタノールによってフェノールが，酢酸20％＋トルエン80％によってカルボン酸が，塩酸20％＋メタノール80％によってスルホン酸がそれぞれ脱着され定量することができます。

さらに金属および非金属元素分析（Ca，Zn，P，S，N），炭酸根（CO₃^{- -}）分析，赤外線吸収スペクトル分析，核磁気共鳴スペクトル分析，質量スペクトル分析を行うことにより，さらに詳細にパッケージ添加剤の化学構造と構成割合（定量）を明らかにすることができます。添加剤の構造と実用性能との関連を追求するうえでの本分離分析は重要です。

＜参考書＞
藤田稔　「燃料油・潤滑油および添加剤の特性と分離・分析技術」，技術情報協会　（1996）