清浄機で処理したとき添加剤はどうなるか | ジュンツウネット21

作動油のスラッジの95%以上は,油や添加剤の変質物で,1ミクロン以上の粗粒子と1ミクロン以下のコロイド粒子ですが,ほとんどが分子よりも大きいコロイド粒子です。清浄機で処理されるゴミは分子よりも大きいコロイド粒子や粗粒子で,分子サイズの添加剤を除去することはできません。

清浄機で処理したとき添加剤はどうなるか

使用油を浄油機で清浄したいと思っているのですが,浄油機で処理すると添加剤はどうなるのでしょうか,添加剤への影響はないのかどうか解説してください。
解説します。

潤滑油の添加剤

(1)酸化防止剤

油は酸化すると次のような経過を経て樹脂となって潤滑故障のもととなります。

油→油溶性酸化物→重合/複合→油に不溶性な樹脂

その酸化速度は高温であるほど速く,また油中に鉄や銅の摩耗粉があると,これらが触媒となって一層酸化が促進されますが,さらに水分があると益々酸化が進行しやすくなります。

酸化を防止するためには,上記の酸化反応を停止させるものと,抑制するものとがあります。その効果にも限度があり,油は次第に樹脂化してスラッジとなります。

(2)防錆添加剤

鉄の表面に水滴がつくと空気中の酸素とともに反応して水酸化鉄となり赤錆を生じます。それゆえ摩擦面の鉄の表面に付着した水分を置換したり,鉄の表面に疎水性の保護被膜を構成するものを用いて防錆効果をあげています。

(3)耐荷重添加剤

摩擦面が金属間接触するときの焼付防止や,摩擦抵抗を軽減するために,油性剤,極圧剤および耐荷重剤が用いられます。

油性剤―極性基をもつ脂肪酸などが摩擦面に活性吸着膜を構成して金属接触をなくして滑りを良くするものです。

極圧剤─摩擦係数を減少させるために,摩擦面に低せん断性の極圧膜を構成させるもので,イオウやりんの化合物が用いられます。

耐荷重剤─焼付防止にイオウやりん化合物が用いられますが,酸化防止剤と耐荷重剤を兼用するものもあります。しかし焼付防止のため鉄と反応して化学摩耗を生じ,反応生成物質がスラッジとなるなど副作用を伴うことも止むをえません。

(4)粘度指数向上剤

油温変化に伴う粘度変化を少なく抑えるために,ポリマー化合物が用いられます。これらは油との混合物をつくり,高温で油にとけて粘度低下を緩和することができます。

(5)消泡剤

油が空気とともに激しくかくはんされると,あわを生じ,またポンプストレーナの目詰まりによるポンプのキャビティションによってあわを生じます。この場合,油の圧縮異常から操作異常や油切れによる障害が発生します。これを防止するため,消泡剤としてシリコン油などが0.005%以下の微量で添加されますが,油に溶解せず微粒子となってあわの膜を破る効果をもっています。

以上は作動油の代表的な添加剤について述べたものですが,これがブレンドされて添加剤入りの油として市販されています。この添加剤による油の寿命延長効果にも限度があり,また添加剤自身も酸化変質などによってスラッジとなるので,浄化処理が必要となることはいうまでもありません。

清浄油中の添加剤

新油は,以上の添加剤のうち,消泡剤を除くと基油に溶解して透明な油の溶液となっています。溶液が透明であるのは,基油も添加剤もともに分子状態で存在し,それぞれの分子は分子の拡散エネルギにより分子運動を行って均一に混合しており,粒子による光の散乱が起こらぬためです。このような拡散エネルギに抗して基油と添加剤を清浄機で分離することは不可能です。

ただし,前記あわ消剤は液体粒子で理論的には除去されるはずですが,油が濁らない50ppm程度の微量成分であるために,存在可否を実証することが困難です。その上作動油では,消泡効果そのものの重要度が極めて低く,ほとんど問題にされていません。

汚染油中のゴミ

作動油を1年間継続使用すると(5~10)g/100L位のゴミが発生して濁りを生じます。この濁りの成分がいわゆるスラッジです。

スラッジの95%以上は,油や添加剤の変質物でそのほかに砂ぼこりや摩耗粉,そして綿ゴミが存在しています。

その大きさは1ミクロン以上を粗粒子とし1ミクロン以下をコロイド粒子とに大別すると,ほとんどが分子よりも大きいコロイド粒子で,これが綿ゴミを骨組みとしてスラッジの集団を作り,潤滑故障の元となっています。

ろ過機はその機能上,除去精度は粗粒子の範囲にとどまり,静電処理の除去精度はコロイド粒子にいたる範囲とみなされています。

添加剤はもともとスラッジの発生を防止するためのものです。しかしそれも限度がありやがてはみずからもスラッジとなり,これらが潤滑故障の原因となります。

さらに生じたスラッジは酸化触媒ともなるので,常時清浄機で浄化してスラッジを除去すれば,添加剤の消耗や劣化が防止され,その上添加剤も有効に作用することになります。つまり添加剤入り潤滑油こそ一層清浄処理が必要です。

また清浄機で処理されるゴミの大きさは分子よりも大きいコロイド粒子や粗粒子であって,分子サイズの添加剤まで除去することはできません。潤滑管理にとってもっとも重要なことは,コロイド粒子の除去であることもお分かりと思います。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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最終更新日:2021年11月5日