添加剤の種類について説明します。また,浄油装置を構造別に分類し,添加剤に影響するかを解説します。
浄油機と添加剤
種々の浄油装置が市場に出ていますが,潤滑油中の添加剤に対する影響はないのでしょうか。
解説します。
まず潤滑油の添加剤にはどのようなものがあるか,またその添加剤の種類にはどのようなものがあるかを述べておきます。
1. 添加剤とその種類
(1)酸化防止剤
1.フェノール型酸化防止剤
比較的低い温度で使用する場合に用いられます。
2.アミン型酸化防止剤
比較的高い温度で使用されるもので,タービン油,トランス油,エンジン油等に使用されています。
3.ジチオリン酸亜鉛型酸化防止剤
いおう,リン系酸化防止剤で,酸化防止作用だけでなく極圧性もあるので多目的に使用されています。
4.いおう系酸化防止剤
この添加剤はもともと基油に含まれているものですが,極圧剤を兼ねて使用されているものです。
(2)清浄分散剤
金属石けんが使用されますが,その中でも水分が混入した場合,エマルジョンになりにくい金属石けんが使用されます。たとえばマグネシウム,カルシウム,バリウムなどです。
(3)さび止め剤
通常,分子中の極性基が鉄表面に強く吸着され,水分が鉄表面に直接接触するのを防止して,さびの発生を抑える作用をします。
(4)腐食防止剤
通常,潤滑油添加剤の場合に用いられる「腐食」という言葉は,酸性物質が非鉄金属を侵すことを意味します。さびについてはすでに前述の通りですが,さびは鉄の腐食ということも言えます。
(5)流動点降下剤
高粘度指数の潤滑油基油はパラフィン系ですので当然のことですがワックスが多く含まれています。このため基油の製造の際には脱ろうしますが,収率低下,粘度指数低下を考慮して流動点を-10℃前後が選ばれています。-10℃より低い流動点を必要とした場合には,流動点降下剤を使用することになります。
(6)粘度指数向上剤
水素精製法によって最高に過酷な条件でも,粘度指数はせいぜい130位です。しかし,潤滑油を使用する際には基油の粘度指数では不足する場合が少なくありません。そこで,この粘度指数向上剤が必要になってきます。
(7)極圧添加剤
大荷重がかかり潤滑部分より潤滑油が押し出され,ついには金属同士の接触が起こり,焼き付きが生じるような条件のもとで金属表面と反応して,潤滑性のある被膜や耐摩耗性のある被膜をつくり,金属接触を防止する作用をします。
1.いおう系極圧添加剤
2.ハロゲン系極圧添加剤
3.リン系極圧添加剤
4.有機金属系極圧添加剤
5.層状格子結晶体極圧添加剤
グラファイト,二硫化モリブデン,ナイロンパウダ,シリコンパウダ等。
(8)消泡剤
潤滑油に空気が吹き込まれると,当然のことながら必ず泡が出てきます。そこでこの泡を消泡するために消泡剤が用いられます。潤滑油に最も多く使用されているのはシリコーン油です。
以上,潤滑油の添加剤について述べましたが,以下は浄油装置を構造別に分類し,添加剤に影響するかを述べます。しかし,層状格子結晶体極圧添加剤はいかなる浄油方式でも影響を受けるので,ここではそれを省いて考えることにします。
2. 浄油装置と添加剤
(1)表面ろ過方式(写真1)
フィルタの表面で異物を捕捉するタイプで,作動油から潤滑油まで幅広く使用されています。ろ過精度が確実で,小容量から大容量までろ過可能で各油種に使用できます。添加剤には影響ありません。
写真1 フィルトレーションポンプ |
(2)深層ろ過方式(図1)
1.ロールティッシュ方式
体積ろ過方式でエレメントの内部に異物を取り込むため,収塵量が多くエレメントライフも長い。ろ過精度は表面ろ過と比べると信頼性に欠けるが,数パスすることによってNAS6~8級程度は得られます。しかし添加剤に対する影響は,消泡剤を吸着する可能性があるため,短時間でろ過することを薦めます。
図1 深層ろ過方式 |
2.クロスワインド方式(図2)
繊維の密度勾配を利用してろ過する方式です。圧力損失が多いため大容量には不向きです。ろ過精度は不安定のため,数パスでNAS8~9級は得られます。エレメントライフは長いですが,圧力損失が大きくなると二次側に異物が流れる恐れがあるため,早めに交換することが必要です。添加剤は消泡剤を吸着する可能性があるため,エレメント本数を多くし,早めにろ過することが必要です。
図2 クロスワインド方式 |
3.アモルファス方式
アモルファス金属とクロスワインドフィルタと組み合わせで汚染物を除去する方式です。ろ過ライフは長くメインテナンスは楽です。ろ過精度は,クロスワインド方式と同じく数パスすることでNAS8~9級程度です。添加剤に対する影響はクロスワインド方式と同じで,ろ過速度を早くし使用することを薦めます。
(3)静電浄油方式
電極とコレクタの組み合わせで使用されます。浄油には長時間かかります。ポンプスタート時はゴミの流出などがあるので要注意です。フィルタの寿命は長いのでメインテナンスはしやすいです。ろ過精度はNAS9~10級程度です。添加剤は消泡剤,粘度指数向上剤を吸着するため注意が必要です。
(4)不織布ロール方式(図3)
真空方式と自然落下方式があります。原理的には表面ろ過方式であるため,添加剤には影響を与えません。このろ過方式は,主に切削油,加工油,洗浄油,エンジン油などに使用されます。ろ過精度はNAS11級程度ですが,その用途を考え使用すれば,全自動化が可能なため大変有利です。流量は20L/min~600L/min可能。
図3 不織布ロール方式 |
(5)マグネット方式(写真2)
フィルタではありませんが,タンクの低部に置き異物の沈澱を促進させ浄油する方式です。前記の浄油装置と併用することで,エレメントライフが長くなりランニングコストの低下につながります。添加剤には影響ありません。
写真2 オイルリフレッター |
浄油装置は多くの種類のものが市販されていますが,添加剤との影響だけでなく使用するシステムに適合するかを考えて選択すれば,そのシステムの事故を防ぎ,生産性を上げコストの低減に寄与します。