マシニングセンタの定義,種類,各機種の特徴などを解説します。
マシニングセンタとは
工作機械の中でマシニングセンタはどのように定義され,機械はどうなっているのでしょうか。
解説します。
1. 定義
マシニングセンタ(Machining Center)は日本工作機械工業会の定義によりますと,次のようになっています。
「工作物の取り付けを変えずに,フライス・穴あけ・中ぐり・ねじ立てなど種々の作業ができる数値制御工作機械であり,多数の種類のことなる工具を自動的に作業位置にもってくる装置を備えたもの,または,少なくとも二面以上を加工できる構造で,工具の迅速な交換機能を備えた機械」。
図1と図2を参照して下さい。
図1 マシニングセンタによる穴あけ加工 |
2. 種類
マシニングセンタは主軸の方向によって横形と立て形に大別されます。横形は主軸が水平方向になっていて,立て形は垂直方向となっています。
ただし,立て形は一面加工となり定義とことなりますが,自動工具交換装置が装備されているためにマシニングセンタと呼ばれます。
主軸の方向については,横・立て両方を備えたものや,または一つの主軸頭が旋回して横と立てに変化して5面を加工することができるものもあります。
また,コラム構造によって門形,片持形があり,その他にも旋削機能を備えたものもあります。
マシニングセンタはドリリング,リーマ通し,タッピングなどのようにボール盤のような機能をもっているのに加え,フライス,エンドミルなどのフライス盤的機能,さらに中ぐり盤的な機能をも備えています。
このような複合機能をもっていますから,きわめて生産性が高いわけです。
マシニングセンタの種類
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3. 各機種の特徴
(1)横軸
工作物を割出しテーブルに固定し,1回の取付けで多面加工ができます。加工面が垂直ですから,切削粉,切削くずを容易に除去することができます。
(2)立て軸
一方向からの加工となりますから,金型加工のように一面当たりの切削量が多い場合に有効です。また板材の加工にも利点を発揮することができます。
(3)門形
このタイプは工作物が大形の場合に有効です。
(4)工作物回転形
旋削機能をもっていますから,工作物を加工機械間で搬送することが省略できます。また段取り時間を短縮することができます。省スペースを計ることも可能です。
4. その歴史
マシニングセンタが最初に世へ出たのは,1960年(昭和35年),米国のカーネイ&トレッカー社が「ミルウォーキーマチック」という名称でシカゴショウに出品した時であります。1965年(昭和40年)のシカゴショウからは数多くのメーカーから「マシニングセンタ」と名付けられ出品されました。
わが国では1964年(昭和39年)に日立製作所が工具25本を格納した,自動工具交換装置付きマシニングセンタを完成させました。
工作機械の機種では従来数値制御(NC)旋盤が生産台数では第1位でしたが1971年(昭和46年)にはこれを追い越して,それ以来はトップの位置を占めているのです。
5.その構成
マシニングセンタの構成要素はコラム,ベッド,テーブル,割出し機構,主軸頭,自動工具交換,および制御装置がおもなものです。
(1)自動工具交換装置は工具の格納,マガジン(Magazine)の回転と位置決め,主軸とマガジン間の工具交換がその役目です。
自動工具交換装置は取付け位置と工具収納マガジンの形状に種々の工夫がなされています。
この機構は本体の構造,工具の格納本数,スペースなどによりますが,円筒形,円錐形,楕円形,矩形などがあります。
格納工具の選択(呼び出し)の方式は次の2つに分けられます。
1)シーケンシャル方式
加工の工程順序にしたがって工具を配置しておき,その順番で呼び出すもの。
2)ランダム方式
工具の格納順序には関係なく,任意の工具が呼び出せるもので,近年の装置ではその大部分が,ランダム近回り方式になっています。
(2)割出しテーブル
マシニングセンタは1回の段取りで,多種多面の加工を迅速,正確に行うことが必要であり,割出し機能は特に大切なものです。
今日では数値制御機構により,非常に精度の高い任意割出しが可能となっています。