特集記事 「給油・給脂装置の概要について」 2003/12

はじめに

近年は機械設備の高速化,自動化,無人化が進み,連続した生産ラインの導入も盛んである。このような機械設備に不測の事態,精度低下等が発生したならば,修理費はもちろんのこと,機械設備の停止に伴う経済的損失は莫大なものとなる。

機械設備のトラブルには潤滑不良が係わっていることが多く,設備保全上のトラブルを回避するためには潤滑油剤を適正に選定・使用する潤滑管理が大切になっている。その中でも給油・給脂の管理は重要な項目の一つとして考えられており,潤滑個所に適正な油量を適切な間隔で給油することは機械設備の状態を良好に保つ秘訣である。

そこで本稿では給油・給脂装置の概要を紹介する。

1. 給油・給脂装置の種類と特長

給油・給脂装置には大別して潤滑油を少量ずつ摩擦面に供給し,摩擦面を潤滑し終わった油は給油装置に戻らず,装置外に出されてしまう全損式と,一度摩擦面を通過した潤滑油を回収して繰り返し使用する循環式とがある。

全損式は潤滑油の供給量が必要最低限なため,低中速,低中荷重の条件で使われることが多い。また,軸受へのグリース充填など,グリースの充填に使用される。一方,循環式は比較的多量の潤滑油を供給することができるため,冷却効果が期待でき,高速・高荷重の条件下でも使用可能である。

主な種類を以下に,各装置の特長・注意点を表1に示す。

(1)全損式

1. 集中給油装置
 1台のポンプ・分配弁・制御装置で適量を正確な間隔かつ一定圧で複数個所に供給できる装置。最近では供給量の精度などの他に,廃棄物の削減,作業効率の向上を目的に,使用後の容器へのグリース残りの少ないものが求められる傾向にある。


2. オイルミスト給油装置
 オイルミスト発生器で圧縮空気によりオイルをミスト化し,空気とともに配管を通して給油する装置。

また,最近では定量インジェクションポンプより圧送されたオイルを圧力エアーにより装置内でミスト化し,配管を通じて潤滑個所に圧送,先端ノズルで油膜となる湿ったミストに変換して最適極微量油量を供給する間欠オイルミスト(図1)などの方法もある。この方法では従来のオイルミスト給油に比較し,a.デジタルに油量を調整可能,b.微小油量の調整が比較的簡単,c.外的条件(圧力,気温,粘度,オイルレベル)の変化に影響を受けにくい,d.ストレイミスト(大気中に放出されるミスト)が少ないなどの利点がある。

間欠オイルミスト装置
図1 間欠オイルミスト装置*1

3. オイルエア給油装置
 連続した圧縮空気の流れの中へ定量のオイルを間欠的に供給し,油適状態で摩擦面に供給する装置。オイルミスト方式の場合,ミストになりやすいオイルが必要となるが,オイルエア方式の場合は,オイルの選定が粘度だけで可能である。一方で,高圧であるためエアーの消費量が多くなるなどのデメリットもある。


4. 自動給脂装置(グリースカップ)
 視滴形・びん形給油器の細孔から一定油量を常時供給する装置。給脂するためのピストンを動かす方式としてガス圧を利用するものとバネを利用するものとがある。グリースカップではグリースの再充填ができず,使い捨てタイプが多かったが,最近では廃棄物の削減の点からも再充填により,繰り返し使用できるタイプもある。この場合,単に廃棄物の削減だけでなく,使用可能なグリースをある程度自由に選定できる点もメリットである。


5. グリースガン(図2
 手動式(レバータイプ)とハンドタイプがあり,いずれも携帯式で持ちやすく油筒のキャパシティは80〜400gが一般的である。以前は油筒にグリースを手詰めで行っていたが,今では作業者がグリースに触れることを嫌がることと,効率化を図ること,衛生上の面からカートリッジタイプのグリースを使用することが多く,簡単にグリースを挿入し,終了後カートリッジは小さくまとまり廃棄できるようになっている。なお,手動式は文字通り手動で行う方法,ハンドタイプは動力源としてAC100V・24V・バッテリー式・エア駆動式を使用する方法である。

グリースガン
図2 グリースガン*1

(2)循環式

潤滑油をポンプで圧送し,給油個所へ直接または分配機能を持った機器を介して連続的に送油,循環させ繰り返し給油する装置。

表1 給油・給脂装置の特長と注意点
 
種類
特長
注意点


集中給油装置 1. 吐出量が調節できる
2. 給油個所の増減が容易である
3. 分配弁の詰まりが表示できる
1. ポンプ吐出量と分配個所数のバランスに留意
2. 使用油の粘度範囲に留意
噴霧給油装置 1. 常に新鮮な油を必要量供給できる
2. 空気による冷却効果が期待できる
3. 空気の吹き出しにより,ゴミ等の浸入を防げる
4. 「にじみ」による装置および環境汚染がない
1. 空気の除湿,保温が必要である
2. 給油量に制限がある
3. オイルミストによる環境汚染がある
オイルエア給油装置   1. 軸受昇温が低く,高速回転に対応できる
2. 油消費量が少なく(噴霧給油の1/5), 油量を個々の軸受で調節できる
3. 常に新しい油の供給が可能である
4. 圧縮空気により異物の浸入防止効果がある
5. ミストを発生しないため,作業環境がよい
1. 油の増減が生じないように配管の長さを設定する必要がある
自動給脂装置
(グリースカップ)
1. 手差しに比べ人手が省け信頼性が高い
2. 作業性が悪い危険な個所での給油に適する
3. 集中給油装置のパイピングができない個所への給油が可能
1. 排圧の高い個所には向かない
2. 使用後の処理(廃棄処理)に手間がかかる
3. 極度な振動が発生する個所には使用できない
グリースガン 1. 携帯式で持ちやすい
2. カートリッジグリースのため,使用 後の容器の廃棄が簡単である
3. カートリッジ交換の際に,グリース に異物等が混入しにくい
1. 定量給油ができない
2. 手詰めの場合,作業者がグリースに触れるなど,作業環境面で好ましくない


循環式給油装置 1. 給油量,給油温度,給油圧力の調整 がきめ細かくでき,信頼性が高い
2. 軸受の高速相対運動や駆動伝達の高面圧による発熱や摩耗に対し,油切れを発生させない
1. 同一油を回収再使用しているため,定期的な油の性状分析,交換が必要

2. 給油・給脂装置のトラブルとその影響

給油・給脂のトラブルの原因とその影響を表2に示す。表2は集中給油装置での例であるが,他の方法についても同様のことが考えられる。

一般に給油・給脂装置のトラブルで最も多い原因の一つとして,グリースまたはオイル中への異物の混入が考えられるが,密閉された機器や配管経路では異物が混入するところはなく,主にポンプタンクへの潤滑剤の補給の際に異物の混入が生じている。最近では市販のペール缶に直接集中給油装置のポンプを取り付けるタイプやグリースガンで使用されるカートリッジグリースなどタンクへの補給作業の改善策なども検討されている。また,集中給油装置などでのフィルター設置など,オイルでは混入した異物の影響を排除することも重要となる。

表2 給油・給脂のトラブルの原因と影響*1
区分 原因 現象および影響
取り扱い ○潤滑剤に異物混入(塵埃,砂,摩耗粉,スラッジ等) 1)ポンプの作動不良(シリンダの損傷,異常摩耗,圧力低下)
2)切換弁等機器の作動不良
3)分配弁の作動不良(異物詰まりによるピストンロック)
4)ラインフィルタの詰まり(分配弁に圧力伝達されない)
5)配管内の詰まり
6)軸受の損傷
○潤滑剤に多量のエアー混入 1)ポンプの作動不良(空打ち,吐出しない)
2)切換弁等機器の作動不良
3)分配弁の作動不良(油切れ状態)
4)ラインの圧力が上がらない
5)潤滑油の劣化
6)電動ポンプの運転時間延長による故障警報が出る
環境 ○潤滑剤に水の混入 1)機器や配管の錆,腐食
2)潤滑剤の劣化
3)給油軸受の腐食,焼損
○高温度 1)機器の作動不良または焼損
2)潤滑剤の劣化(分離,酸化,炭化)
3)潤滑剤の劣化現象による配管の詰まり,分配弁の作動不良
○低温度 1)機器の作動不良(温度特性,結露の影響)
2)潤滑剤の高粘度化によるシステム不良(圧力不足,ポンプ吸込み不良,分配弁の作動不良)
品質 ○製造,設計不良
○摩耗・寿命
1)機器の故障による給油不良
2)機器の作動不良による給油不良(加工精度等の製造上の問題,材質・機構等設計的要因)
3)機器の摩耗による圧力・吐出量不足による給油不良
設置計画 ○機器選定不良
○耐環境性不適
○配管工事不良
1)圧力不足(配管が長く細くて流動抵抗が高くなる)
2)ポンプ吐出量不足(長時間のポンプ運転による給油渋滞・分配弁のリーク現象による誤作動,給油量の過不足)
3)屋外・悪雰囲気場所使用による機器の腐食,故障(対応仕様検討が不十分の場合)
4)取り扱いの不合理性(システムが手動式か自動式か)
5)取付機械とのミスマッチ(機器特性,サイズ,給油量不適)
6)配管漏れの発生
7)配管経路の点検不能や他配管と干渉などの不具合
メンテナンス   ○取り扱い不良 1)ポンプタンクへの補給時に異物やエアーを混入させる
2)ポンプタンクへ潤滑剤の補給忘れによるポンプ停止
3)配管路の漏れ,損傷,機器の点検,修理不良
潤滑剤 ○選定不適 1)高粘度の潤滑油脂による機器の作動不良(集中給油装置に使用されるグリースは一般的にNLGI.No.0〜1)
2)熱や機械的安定性が悪く性状変化を起こす(グリースは長時間放置したり圧送すると基油と石鹸基が分離して管路を詰まらせることがある。固体添加物が含入の銘柄も注意が必要)
3)耐熱,耐水環境性(潤滑剤の劣化現象による機器の作動不良)
4)ポンプの吸込み性が悪く吐出しない(高粘度のグリースが起こりやすい)
5)圧送性(流動性)が悪く分配弁が作動しない(高粘度のグリースが起こりやすい)
警報 ○電気的(電動式) 1)タンク油面低下(補給忘れ,充填装置の故障)
2)過負荷(ポンプモータ,ポンプ本体の異常)
3)給油時間延長(ポンプ故障,配管漏れ,切換弁故障等)
4)異常高圧(進行作動形分配弁の詰まり)
5)その他電気的な不具合

おわりに

最近では工場での効率化が最重要課題となっている中,設備保全上のトラブル回避は必須のものとなっている。そのためにも,設備毎に最適な給油・給脂装置を選定し,装置自体のトラブルを回避することが重要となる。


〈参考文献〉
*1 潤滑経済 1999.11(No.404)