第4回世界トライボロジー会議(World Tribology Congress 2009,以下WTC IV)が,(社)日本トライボロジー学会と日本学術会議の共同主催で,2009年9月に国立京都国際会館で開催される。今回は,その概要について紹介する。
WTCとは
世界トライボロジー会議は,国際トライボロジー評議会(International Tribology Council)が4年ごとに開催するトライボロジー分野最大のイベントである。研究発表や展示などでの情報交換を通じ,トライボロジーの国際レベルでの普及と発展を目的とするもので,今回で4回目の開催となる。
今回の会議の開催趣旨は,世界中のトライボロジストが集い,未来の地球のためのトライボロジー分野の諸問題に関する先端の研究と技術開発について議論し,方向性を見いだすことである。また,この会議を契機として,人間と地球が共存していくための技術イノベーションの鍵をトライボロジーが握っていることを,広く一般社会の方に知ってもらうことを目指している。この目的のために,トライボロジストだけでなく,より広い分野からの参加者を歓迎し,また一般市民にも参加いただける特別講演会や技術展示会が計画されている。京都という街で開催すること,京都国際会館を会場とすることはすべてこの趣旨にもとづいたものである。
また,このような重要な会議を,日本において開催することは,日本から世界に向けてトライボロジーの重要性を発信し,当該分野でアジア地域を先導する日本の役割を確固たるものにする上で極めて意義深いものとなるだろう。
WTCの歴史
第1回の世界トライボロジー会議が英国ロンドンで開催されたのは1997年。これは,ちょうど60年前の1937年に世界で初めて,潤滑と摩耗に関する国際会議が開かれたことにちなんだもので,会場も当時と同じくウェストミンスターセントラルホール(Westminster Central Hall)が使用された。
以降,国際トライボロジー評議会から付託を受けた選考委員会が立候補国の中から開催地案を決め,それを同評議会が審議して最終決定するという手順で開催国が決まり,開催国のトライボロジー関連団体が国際トライボロジー評議会から主催を任されるという形式をとり,運営されてきている。
第1回世界トライボロジー会議に続いて,第2回は2001年にウイーンで,第3回は2005年にワシントンD.C.で開催されたが,その初日に開かれた国際トライボロジー評議会会議で,第4回世界トライボロジー会議を日本において2009年に開催することが決定された。これはアジアで初めての開催であり,従来からトライボロジーに関する研究と技術の先進性が認められていた日本での会議開催を期待する声が強かったことはもちろん,世界レベルでみた(社)日本トライボロジー学会の貢献が同評議会から高く評価されたものである。
運営組織
WTC IVの運営組織として,実行委員会,組織委員会,インターナショナル・アドバイザリー・ボードが編成されている。
実行委員会は,会議全体の計画と実行をつかさどる組織で,実行委員長である木村 好次氏(東京大学・香川大学名誉教授)のもと,事務局,広報委員会,展示・イベント委員会,総務委員会,学術プログラム委員会,論文委員会からなり,委員数延べ80名の布陣で組織的に準備を進めている。(社)日本トライボロジー学会にとって,これまでに国内で開催してきた国際会議International Tribology Conference(ITC)をしのぐ規模の大きなイベントを成功に導くためには,このように大人数の組織が有機的に動く必要があり,委員一同,多くの初めての経験に戸惑いながらも連日打合せを重ねて進めている。
組織委員会は,関連企業などからの積極的な参加登録・研究発表・展示出展などを期待し,財政基盤を確固たるものにするための組織で,瀧本 正民氏(トヨタ自動車(株) 副社長)を委員長とし,民間企業や公的研究機関,関係省庁などから100以上の団体および個人が参加している。
インターナショナル・アドバイザリー・ボードは,会議に関するアドバイスや海外での周知PRをいただくことを目的として編成し,国際トライボロジー評議会のPeter Jost氏を含む海外16名の著名なトライボロジストに委員をお願いしている。

WTC IVホームページ
開催概要
開催日:2009年9月6日(日)~9月11日(金)
会場:国立京都国際会館(京都市)
主催:日本トライボロジー学会,日本学術会議
共催:日本機械学会,自動車技術会,情報ストレージ研究推進機構
後援:文部科学省,経済産業省
協賛:応用物理学会,化学工学会,軽金属学会,高分子学会,情報処理学会,精密工学会,石油学会,ターボ機械協会,電子情報通信学会,日本液晶学会,日本エネルギー学会,日本化学会,日本金属学会,日本材料学会,日本磁気学会,日本セラミックス協会,日本塑性加工学会,日本鉄鋼協会,日本マリンエンジニアリング学会,日本表面科学会,日本物理学会,日本フルードパワーシステム学会
使用言語:英語
本会議についての情報は,会議ホームページにてお知らせしている。また,一部の情報は,学会のホームページに日本語で掲載している。
WTC IVホームページ URL:http://www.wtc2009.jp/
JASTホームページ URL:http://www.tribology.jp
日程
第1日 9月6日(日)
参加受付開始,歓迎レセプション
第2日 9月7日(月)
開会式典,開会講演,特別講演,基調講演,展示会
第3日 9月8日(火)
一般講演セッション,シンポジウム,展示会,ランチョンセミナー,テクニカルツアー
第4日 9月9日(水)
一般講演セッション,シンポジウム,展示会,ランチョンセミナー,バンケット(懇親会)
第5日 9月10日(木)
一般講演セッション,シンポジウム,展示会,ランチョンセミナー,テクニカルツアー
第6日 9月11日(金)
一般講演セッション,展示会,閉会式
予定行事
◇学術プログラム
学術プログラムは,一般講演セッションとシンポジウムセッション,特別講演などで構成される。また,会議の趣旨にもとづき,世界を代表する一線級の方々によるオープニング講演・プレナリー講演などを予定している。
(1)一般講演セッション
- Tribology Fundamentals
Contact mechanics / Friction / Wear - Materials and Surface Engineering
Tribomaterials / Texturing / Coatings / Surface modifications - Manufacturing and Mechanical Components
Manufacturing processes / Bearings / Gears / Seals / Other components - Lubrication and Lubricants
Hydrodynamic lubrication / Elastohydrodynamic lubrication / Boundary lubrication / Lubricating oil / Grease/Solid lubricants / Additives - Micro-, Nano- and Molecular Tribology
Molecular tribology / Superlubricity / Molecular simulations / Microtribology - Tribosystems
Automobiles / Railways / Aerospace / Hard disk drives / Heavy machinery / Manufacturing equipment / Maintenance / Condition monitoring / Biotribology
(2)シンポジウムセッション
アジア・太平洋地域で初めて開催される世界トライボロジー会議WTC IVの趣旨と,トライボロジーにおける最近の急速な進展をふまえて,以下の4つのテーマでシンポジウムセッションが企画されている。
- Environmentally friendly tribology (Eco-tribology)
- Human-related tribology
- Large scale simulations in the field of tribology
- Industrial tribology issues in the Asia-Pacific region
これらのほかに,公募テーマによるミニシンポジウムセッションが企画されている。
- Science of friction
- Ultra-mild wear and tribo-chemical interactions
- Diamond-like carbon for tribology
- Energy savings by use of synthetic lubricants
- Innovative study of lubricating grease
- Additives for lubricants (tentative)
- Tribology for automotive fuel economy
- Tribology in information storage systems
- Tribological aspects of fluid power
- Hydrogen tribology for future energy
- Tribology issues in novel field
- History of tribology
(3)特別講演など
2日目(9月7日)の開催式典に引き続き,世界を代表する一線級の方々によるオープニング講演・プレナリー講演を予定している。
- 小柴 昌俊博士(東京大学 特別栄誉教授,2002年ノーベル物理学賞受賞
- クリストファー・フレイヴィン氏(ワールドウォッチ研究所 所長)
- 瀧本 正民氏(トヨタ自動車(株) 副社長) ほか
◇技術展示会
会期中,京都国際会館のイベントホールで技術展示会(Technical Exhibition)が開催される。技術展示会は,学術プログラムとともに本会議の重要な柱であり,スローガンは「世界の省エネ・環境技術展~次世代を担う子供たちへ」。トライボロジーや関連分野の技術者,研究者だけではなく,一般市民や小中学生,高校生たちにもトライボロジーの先端技術に触れてもらえるような,通常の技術展示会とは一味違う楽しい展示会を目指している。自動車,電機,機械,潤滑剤,試験計測装置など,トライボロジーに関連する様々な製品デモや新規技術の紹介などを募集している。展示会場は参加登録者だけでなく一般市民や小中学生・高校生にも開放し,多くの方々にトライボロジーを身近に感じてもらえるような展示会を目指している。
◇その他の行事
(1)バンケット(懇親会)
日時:9月9日(水)
会場:グランドプリンスホテル京都
(2)テクニカルツアー
京都近郊の工場見学を予定。
(3)同伴者プログラム
茶道,華道,折り紙など日本の伝統文化に関するカルチャー・プログラムを用意。
展示会の出展案内
前述の展示会開催趣旨にもとづき,関連の企業などからの出展を募集中。
募集の詳細については,JASTホームページ(http://www.tribology.jp)から「展示のご案内」をダウンロードしてご覧頂きたい。
- 問い合わせ先
第4回世界トライボロジー会議技術展示会事務局
TEL:03-5216-5551 Fax:03-5216-5552
E-mail:congre-exhi@wtc2009.jp
会議全体についての問い合わせなど
- 問い合わせ先
WTC IV会議事務局
(株)コングレ
TEL:03-5216-5551 Fax:03-5216-5552
E-mail:congre@wtc2009.jp