工作機械用潤滑剤の規格の移り変わり
(社)日本工作機械工業会では,昭和30年代から工作機械に使われる油圧機器及び潤滑油の問題点の究明とその標準化について検討を行い,特に工作機械用としての潤滑油の標準化は1959年(昭和34年)にMAS 901(工作機械用潤滑油選択基準) として制定した。この規格化は,国内はもちろん国際的にも最初のものであった。
その後,実用上での実態の変化及び国際的な規格化に対応するためISO 3448-1975(Industrial liquid lubricants, ISO viscosity classification)及びISO 3489(Lubricants for machine tools-Classifications 案,1979年に規格となる)を参考に1978年「工作機械用潤滑油の選択基準」として潤滑油の種類を規定するとともに,現場で活用できる資料にするため,規定した潤滑油の市場で販売されている製品名,それらの性状などを「参考資料」として附加し全面的な改正を行ったものである(このMAS 901は,その後1981年,1984年,1986年及び1989年に部分改正又は,確認を行った)。
このMAS901は1990年にMAS 903 (工作機械の潤滑管理表示方法=ISO 5169 Machine tools-Presentation of lubrication instructions), MAS 904(工作機械の潤滑方法=ISO 5170 Machine tools-Lubrications systems)を統合してJIS B 6016(工作機械-潤滑通則)が制定され,これに伴い,MAS 901の「参考資料」を独立させ,1993年に技術資料32「工作機械用潤滑剤の選択基準」が発行された。
技術資料32「工作機械用潤滑剤の選択基準」は発刊から7年を経過し,各社製品の内容,潤滑剤メーカーの連絡先等の変更が予想されるため,2000年(平成12年)に(社)日本工作機械工業会技術委員会標準化部会機械規格専門委員会専用機・機械要素・流体機器分科会において,内容の見直し及び潤滑剤メーカーへの製品アンケート調査を実施し,技術資料45-2000「工作機械用潤滑剤の選択基準」として改定発刊されている。
工作機械用として使用される主な潤滑剤の種類
工作機械に使用される潤滑剤(油及びグリースを含む)の種類は,参考 JIS B 6016-1(工作機械-潤滑指示図の表示方法)に規定されている41種類についてまとめた。
「軸受潤滑油」では,FCタイプとFDタイプの2種類としているが,FDタイプは,FCタイプに対して耐摩耗性が付加されており,将来は,軸受けの寿命向上及び軸受け潤滑油の油種統一を重視し,FDタイプへ移行していくと思われる。
また,主軸軸受けの潤滑は,潤滑方式や軸受け種類により適正粘度が異なるため,選定に当たっては給油機器メーカー,軸受けメーカーとの打ち合わせ及び確認が必要となる。
「油圧作動油」では,HLタイプとHMタイプの2種類としているが,HMタイプは,HLタイプに対して耐摩耗性が付加されており,将来は油圧機器の耐久性(寿命)向上及び油圧作動油の種類統一によるメリットを生かした潤滑管理を重視し,HMタイプへ移行していくと思われる。