生分解性潤滑油剤の基礎知識 | ジュンツウネット21

21世紀になり,ますます地球環境問題が注目されていますが,潤滑油剤の河川や海水,土壌への漏洩対策も重要な課題のひとつです。

機械に使用される潤滑油剤の多くは鉱油をベースとして製造されていますが,一般的に鉱油は自然界で分解されにくく,長期間にわたり残存してしまいます。漏れないように対策をとることが一番望ましいのですが,万が一,自然界に流出してしまったことを考えて,分解しやすく生態系への汚染の影響の少ない潤滑油剤(生分解性潤滑油剤)を使用することも対策のひとつです。

そこで今回は生分解性潤滑油剤の知識を身につけ,地球環境のことを再度見つめ直してみましょう。

知識1 生分解性潤滑油剤ってどんなもの?

生分解性潤滑油剤とは自然界に存在する微生物によって分解される潤滑油剤のことをいいます。微生物自体も二酸化炭素と水に分解されて自然界に戻るので自然界に与える環境負荷を低減するといえます。通常,生分解性の定義は各国で定められており,日本では日本環境協会が運営する『エコマーク』に生分解性潤滑油剤の認定基準が設けられています。

生分解性は微生物により物質が壊れる,あるいは変化することです。一般的に,二酸化炭素と水まで分解することを完全生分解といい,さらにはOECDなどに定める易生分解性試験をパスすれば易生分解性であると判定されます。表1に一般的な各種潤滑油剤の生分解率を示します。

生分解性潤滑油剤

表1 各種潤滑剤の生分解性の比較
潤滑油剤
生分解率(%)
鉱物油(ナフテン系)
0~30
鉱物油(パラフィン系)
40~60
植物油
80~100
合成油(エステル系)
70~100

知識2 生分解性潤滑油剤にはどんなものがあるの?

エコマークが対象とする生分解性潤滑油剤には「油圧作動油」「2サイクルエンジン油」「グリース」「その他の潤滑油」の4項目があります。

油圧作動油

建設機械,芝刈り機,農業用機械に多く用いられますが,その他にも橋の制振装置や遊園設備などにも使用されています。

2サイクルエンジン油

チェーンソーや発電機,船外機などの2サイクルエンジン用として使用されています。

グリース

屋外で使用される機械で漏洩の可能性のあるいたる所で使用されています。

その他

切削油,食品機械用潤滑剤,アスファルトの離型剤,一部のチェーンソーなどに使用される4サイクルエンジン油などが含まれます。

知識3 生分解性潤滑油剤は使わなければいけないの?

現在日本国内においては生分解性潤滑油剤の使用を義務づけてはいませんが,(社)日本建設機械化協会の油脂技術委員会では建設現場における油の漏洩対策の一環として,建設機械用の生分解性作動油の品質・性能を追究した規格((仮称)HX-2:生分解性作動油,GX-2:グリース)を策定中で,今後JMCA規格((社)日本建設機械化協会規格)として提案されることになっています。その他にも2004年度をめどに生分解性作動油使用の建設機械としてグリーン購入法へ提案する予定になっており,万一の漏洩に対応するための生分解性潤滑油剤の普及に取り組んでいます。

環境や生態系保護に対する意識がさらに強くなってくれば潤滑油の漏洩は機械ユーザーにとって無視できる問題ではなくなり,必然的に生分解性潤滑油剤の使用がますます普及すると思われます。
(詳しくは「潤滑経済」2003年10月号に掲載しておりますので合わせてご覧下さい。)

知識4 生分解性潤滑油剤はどこで手に入るの?

該当する機械の種類を確認して,油剤メーカー,機械メーカーに相談してみるのが一番確実ではないでしょうか。「ジュンツウネット21」の商品検索BOXでも検索できます。

エコマークについて

エコマークは「第三者認証による自主的な環境ラベル」であり,(財)日本環境協会がISO14024の規定に則って運営しています。日常生活に伴う環境への負荷の低減などを通じて,環境保全に役立つと認められる商品に「エコマーク」を付けることにより,商品の環境的側面に関する情報を広く社会に提供し,環境に優しくありたいと願う消費者による商品の選択を促すことを目的としています。

1998年に,資源採取から廃棄・リサイクルにわたるライフステージごとの環境負荷を考慮した「生分解性潤滑油」の基準が制定され,油圧作動油,グリースなど55商品が認定されています(2003年6月)。そして2003年は5年に1度の認定基準の見直しが行われ,8月30日に「生分解性潤滑油Version2.0」として新しい認定基準案が公開されました。10月30日までパブリックコメントを受け付けています。

新たに,化学物質の適正な管理がなされていること,塩素系添加剤を処方構成成分として添加していないこと,また製品の適正な取り扱い・廃棄を促す注意喚起を表示することなどの基準項目が追加されました。その他生分解度の試験方法も一部追加され,生態毒性についても,現行の魚類の急性毒性試験に加え,化審法の動向などを見ながら将来的にはミジンコ類の試験も追加するという方向性が示されました。

エコマーク

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●お問い合わせ先
(財)日本環境協会
エコマーク事務局基準課
TEL:03-3508-2662
E-mail:ecomark@japan.email.ne.jp

エコマークの認定基準が厳しくなることで生分解性潤滑油剤の品質・性能は高くなり,環境負荷低減に貢献できる商品へと進化していくことでしょう。詳しくはhttp://www.jeas.or.jp ホームページをご覧下さい。

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    最終更新日:2021年2月3日