世界最大のB to B専門展示会「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」とイントラロジスティクスとサプライチェーン管理に関する世界有数の専門展示会「CeMAT(セマット)」が2018年4月23日(月)~27日(金)の5日間,ドイツ・ハノーバー国際見本市会場で同時開催される.
主催のドイツメッセ株式会社によると,この二つの展示会を合わせると出展規模は約6,000社,来場者は24万人が見込まれている.
世界有数の産業技術見本市であるハノーバーメッセは,今回初めての試みとしてイントラロジスティクスとサプライチェーンマネジメントの専門見本市「セマット」と同時開催にすることで,産業サプライチェーンの最適化に関する最新情報をより迅速に入手,インダストリー4.0からロジスティクス4.0までを一気通貫に見ることができる.
また今回注目されるのが,日本政府が提唱するコネクテッド・インダストリーをロボット革命イニシアティブ協議会(事務局長:久保智彰氏)と日本能率協会を中心にジャパンパビリオンとして出展すること.コネクテッド・インダストリーは,2017年3月にドイツ情報通信見本市「CeBIT」で安倍首相が第4次産業革命に関する我が国が目指す産業の在り方として発信したもので,「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」「バイオ・素材」の5分野を支える横断的な支援策を早急に整備することを重点取組分野としている.ジャパンパビリオンでは「ものづくり・ロボティクス」分野を海外にアピールする.
今回は,2018年2月にプレス向けにドイツ・ハノーバーと東京で開催されたプレスカンファレンスから展示会のミドコロをいくつか紹介する.
1.「Press Conference HANNOVER MESSE / CeMAT Preview 2018」
「ハノーバーメッセ」「セマット」開催の約2ヵ月前となる2018年2月6日(火),会場となるドイツ・ハノーバー国際見本市会場で大規模なプレスプレビュー「Press Conference HANNOVER MESSE / CeMAT Preview2018」が開催され,世界中から200人以上のジャーナリストが参加し,一足先にミドコロなどが紹介された.
当日は主催者のドイツメッセ社CEOのJ.KOECKLER 氏(写真1),パートナー・カントリーのメキシコ合衆国の在ベルリン大使S.E.R.GRANGUILLHOME氏(写真2),ドイツ機械工業連盟(VDMA)会長のK.D.ROSENBACH 氏(写真3)が登壇し,概要や抱負を述べた.
J.KOECKLER 氏は,ハノーバーメッセ&セマット2018の概要やトレンド,そしてトピックについて触れ,「メインテーマは“Integrated Industry –Connect & collaborate”,自動化技術やロボットの世界的リーディングカンパニーや,IT・ソフトウェアをはじめとする著名なグローバル企業が数多く出展するハノーバーメッセでは,インダストリー4.0の最先端技術やトレンドがいち早く体験でき,インダストリー4.0が次の段階に移行していることを実感できる場になるだろう」と抱負を述べた.

写真1 J.KOECKLER氏によるスピーチ
今回パートナー・カントリーとなるメキシコからは,メキシコ駐独大使のS.E.R.GRANGUILLHOME 氏が,「ラテンアメリカとして,またスペイン語を公用語とする国として初めてメキシコが,ハノーバーメッセ2018のパートナー・カントリーを務めることを大変光栄に思う.メキシコとドイツの貿易総額は2017年には220億USドルと歴史的な記録となり,メキシコとEUの貿易の中で40%を占める規模となっている.今回のハノーバーメッセが,二国間貿易と投資フローにとって新しい時代のスタートになると確信していると同時に,メキシコとEU間の更なる交易と投資のためのプラットフォームになるものと考えている」と期待を述べた.

写真2 S.E.R.GRANGUILLHOME氏
ドイツ機械工業連盟(VDMA)会長のK.D.ROSENBACH 氏は,「今回,イントラロジスティクスのトレードショーであるセマットとハノーバーメッセが初めて同時開催される.フラウンホーファー研究所によって構想された『テクノロジー・ロードマップ・イントラロジスティクス2025』によれば,インダストリー4.0の更なる要求に応えるためには,特にセンサー技術,通信,そしてデータ・サイエンスの分野における技術的発展が求められている.ロードマップの内容については,セマット2018で発表されるが,イントラロジスティクスは,それ自体で機能するソリューションではなく,物流と生産プロセスが統合されたシステムであるため,様々なシステムをつなぎ,システム同士の通信を可能にすることが重要である.こうした考え方はハノーバーメッセとセマットを同時開催する理由にも通じたコンセプトだ」と同時開催の意義を述べた.

写真3 K.D.ROSENBACH氏
その後,展示会場では,出展企業を代表して40社がミニブースで会期中の出展内容を紹介した(写真4).以下では出展企業をいくつか紹介する.

写真4 出展社ミニブースの様子
2.出展企業の紹介
TOYOTA MATERIAL HANDLING EUROPE
豊田自動織機(株)のグループ企業でフォークリフトトラックや倉庫設備やサービスを手掛けるTOYOTA MATERIAL HANDLING EUROPEは,「THINK : LIKE : TOYOTA」のテーマで出展する.トヨタの製造プロセスにおける品質と効率の評判は非常に高く,トヨタ生産方式は世界中の製造モデルとなっている.この方式を物流プロセスにも適用することで,無駄をなくし最大限の価値が創出できる.最新の車両管理システム「TOYOTA I Sitesystem」では,フォークリフトトラック運航の効果的な管理を可能にし,過去10年間で6万台以上のシステム利用がある.トラック操作の測定や監視により事故や損害の削減による業務の安全性やバッテリー管理,トラック使用率の向上などのメリットや最新バージョンの紹介などをする.
トヨタのパビリオンで実施される「Toyota Logiconomi Forum」では,リーン生産方式,コネクティビティ,安全性,自動化にフォーカスしたプレゼンテーションが行われる.
OMRON Electronics GmbH
オートメーション(自動化)技術のリーディングカンパニーOMRON Electronics GmbHは,最新のインテリジェント・ソリューションを発表する.このソリューションは,持続可能な個別生産(Personalized Manufacturing)を可能にするもので,高い総合設備効率(OEE),最大限の安全性,高品質を実現する.
オムロンは,「人間と機械の調和の実現」という目的に沿ったビジョンである「Sensing & Control + Think」について,第4世代の卓球ロボット「Forpheus」を使ったわかりやすい方法で展示を行う予定.来場者は,ディープ・ラーニングのAI技術と制御技術が活用された卓球ロボットが,ボールをサーブし,トスを補助したり,スマッシュを予測したり,適切な助言をしたりする姿を見ることができる.
SCHARFFLER Technologies AG & Co. KG
エンジン,トランスミッション,シャーシなどに使用される高精密部品とシステムや様々な産業機械分野に向けたころがり軸受ソリューションを提供するSCHARFFLER Technologies AG & Co. KGは,機械状態監視と潤滑のためのソリューションを提案する.コンディション・モニタリングシステム「SmartQB」は,設備の正常な稼働を可能にする.電気モーター,ポンプ,ファン,回転軸受の異常を特定することができる.また,同システムは,軸受の摩耗,不均衡,フリクション,温度上昇,振動パターンの変化などの要素から,故障の潜在的な原因を特定することができる.従来の機械状態のためのシステムは,高コストで複雑だったが,同システムは利用しやすいだけではなく,振動診断に関する専門知識がない作業者も使用できることなどを紹介する.
Igus GmbH
エンジニアリングプラスチックの樹脂チェーンやケーブル,すべり軸受を製造するIgus GmbHは,インダストリー4.0に対応可能なモーションプラスチックを開発した.各部品に搭載されているセンサーにより,稼働状況をモニタリングでき,そのデータはインターネット回線等を通じ遠隔地にて受信可能で,現場にいなくても変化をリアルタイムにモニタリングすることにより装置の予防保全が現実的なものになる.自動車や工作機械業界,港湾クレーンなどで機械が故障する前に交換時期を予測できる.機械の予防保全だけではなく,保全作業の効率化や省力化の促進が可能となる.
また,ユーザーの仕様に合わせトライボロジー材質の利点をフルに生かした特殊パーツ製作サービス“スピード・イグス”では,寿命を延ばしてコストを下げる「plastics for longer life」などを紹介する.
Bosch Rexroth AG
自動車,工業用テクノロジー,消費財,エネルギー技術の4セクションに分かれ,IoTのリーディングカンパニーとして,スマートホーム,スマートシティ,コネクティッドカーを提供しているBosch Rexroth AG は,ITシステムを使用して油圧機器制御をコントロールすることができる「EDGvalve block」を紹介する.
倉庫には,様々な品物があり,フォークリフトの管理者は十分ケアをしながら,壊れやすい沢山の品物を運ぶ必要がある.倉庫の規模が大きくなればなるほど,フォークリフトのドライバーは,運搬する品物に傷をつける可能性が高まってしまう.IoTを駆使することで品物がフォークリフトで持ち上げられ,傷がつかないように移動して所定の場所に置くことが可能となることなどを紹介する.
3.ジャパンパビリオンなど日本企業の出展社に関する発表

写真5 日本企業9社が出展内容をプレゼンテーション
ドイツメッセ日本代表部の竹生学史部長によると,日本企業の出展数は82社となっており,毎年広がりを見せている.ジャパンパビリオンでは以下の6社が出展する.
自動車部品製造の旭鉄工(株)のグループ会社であるi-Smart Technologiesは,生産の見える化をツールとして開発した「製造ライン遠隔モニタリングおよび生産性向上サービス」を紹介.これまで大企業だけのものであったIoTモニタリングを中小企業でも使える低コストで実現できる.
ITやマネジメントなどのコンサルティングのアビームコンサルティング(株)は,「ABeam Digital : IoT Data-Driven Manufacturing」を紹介.データを活用し製品品質と生産性を向上する製造業IoTデータソリューションで,従来把握できなかった設備状態の検知や生産活動予測に基づいた止まらないライン作りなどをアピールする.
電子デバイスやソフトウエア開発と販売をする東海エレクトロニクス(株)は,山洋電気(株)製の小型エアーフローテスターによる「外観検査技術:San Aceエアフロ―テスター」を紹介.測定結果を熱設計などのシミュレーションに使用することで,装置に最適なファンを簡単かつ的確に選定できる.
ロボットシステムインテグレータのマクシスエンジニアリングは,ホログラム技術を用いた微細な傷や塗装不良を外観検査する「塗装・コーティング表面検査用カメラ」を紹介.樹脂,板金製品などの塗装・コーティング表面上の塗装ブツ,ゴミ,異物などを観察し,ホログラム技術を用いた特殊な照明により微細な塗装不良を手軽に観察でき,デジタル画像として記録できる.
情報機器やネットワーク機器販売のPRI WG1 sub-working group/ミツイワ(株)は,工場内の機器同士や工場間をセキュアに簡単につなげることができる新しいネットワークプロトコル「EVER / IP」やハードウェアレベルでマシンを分離するセキュリティ技術「LynxSECURE」と「EVER / IP」を組み合わせたデータダイオードによるIoTゲートウエイを出展する.
AIソリューションにより技能継承を支援するLIGHTzとプラスチック射出成形やアルミダイキャスト金型設計製作のIBUKIは「ORGENIUS(スペシャリストの思考を汎知化し,次世代につなぐAI)」熟練者から若手社員への技能継承として知見や思考様式を活用できるソフトウェアを紹介.また金属の表面処理加工であるヘアライン加工やカーボン繊維状の模様を加工することで金属のような質感など高級感を増す金型成形技術(加飾の技術)といった独自技術をそれぞれがアピールする.
また単独出展となるヤマハ発動機(株)は,統合制御型ロボットシステム「Advanced Robotics Automation Platform」,5年連続での出展となる高石工業(株)は「水素ステーション用ゴムOリング」をそれぞれ出展する.
IVI(Industrial Value Chain Initiative)-JEMA(日本電機工業会)は「IVIが世界で様々に提案されているIoTのためのリファレンスモデルの新規提案:IVRA-nextを,JEMAからは2030年の製造業のあるべき姿FBM(Flexible Business and Manufacturing)」といったコンセプトをオムロン,日立産機,富士通,Edgecrossとともに出展する.
ロボット革命イニシアティブの久保事務局長は,「ものづくり・ロボティクス分野の,各国との連携強化を図るとともに,日本が掲げるコネクテッド・インダストリーを世界に発信し,日本のプレゼンス向上を目指す.ジャパンパビリオンでは,IoT関連技術,サービスを有する日本企業の展示を介して技術力の高さを訴求したい.特に日本の強みでもある現場力や膨大な質の高いデータを活用することで世界に貢献することができることなど日本の存在感を示したい」と展示会への期待を述べた.
ハノーバーメッセ&セマット2018の開催概要については本誌2018年1月号に掲載しているのでご参照頂きたい.また日本能率協会ドイツメッセ日本代表部のHPから入場券を購入できる(2018年4月10日まで).
https://www.jma.or.jp/dms/ticket_form/

ハノーバーメッセ 前回(2017年)の様子

セマット 前回(2016年)の様子
ハノーバーメッセ 前回(2017年)の日本からの出展者
iCAD,愛知時計電機,アイファ電気商会,明石合銅,アスカネット,アネスト岩田,新井工業,飯塚製作所,稲畑産業,イワキ,WELCON,NC ネットワーク,江沼チェーン製作所,エプソン,荏原製作所,オムロン,オイレス工業,川崎重工業,カワソーテクセル,キーエンス,京セラファインセラミックス,神戸製鋼所,コニカミノルタ,サクラテック,ジェイアンドシー,ジェイテクト,CKD,杉本織物,図研,住友重機械工業,住友理工,タイカ,髙石工業,たけびし,CHAdeMO 協議会,THK,TDK,テクノ高槻,東亜鍛工所,東海アヅミテクノ,東京ウエルズ,徳島県,トヨタマテリアルハンドリングヨーロッパ,トレンドマイクロ,日東化成工業,日本アキュムレータ,日本航空電子工業,日本トムソン,日本電産シンポ,日本ベアリング,能瀬精工,パナソニックマーケティングヨーロッパ,日立製作所,廣瀬バルブ工業,ファナック,不二越,不二ラテックス,ミスミ,三菱電機,三ツ星ベルト,安川電機,山岸製作所,油研工業,横河電機,横浜ゴム,ライン精工
セマット 前回(2016年)の日本からの出展者
伊東電機,川崎重工業,協和製作所,極東貿易,島津製作所,象印チェンブロック,トヨタマテリアルハンドリング,北陽電機,矢崎化工
- 主催・運営:ドイツメッセ株式会社(Deutsche Messe AG)
所在地:Messegelände, 30521 Hannover, Germany
E-mail:info@messe.de
Tel:+49(0)5 11/89-0 - 公式HP http://www.hannovermesse.de/home
- お問い合わせ
一般社団法人日本能率協会 ドイツメッセ日本代表部
〒105-8522 東京都港区芝公園3-1-22
TEL:03-3434-6447 FAX:03-3434-8076
E-Mail:DMS@jma.or.jp
<ハノーバーメッセ2018詳細情報>
https://www.jma.or.jp/dms/search/detail/23