工作機械の保守点検と使用油の管理 | ジュンツウネット21

工作機械を使用するユーザーにとって高い生産効率を維持するためには機械の故障は未然に防止するのが得策です。とくに潤滑油によるトラブルは簡単な日常の保守・点検による確実な給油管理に合わせて,定期的な使用油の分析を実施し,汚染や劣化が進行していないかを判断することが重要になります。今回は工作機械の日常点検のポイントと使用油の分析管理について紹介します。

ポイント1 日常保守・点検のポイント

日常の保守・点検は,未然に機械のトラブルを防ぐ最も重要なことで,機械の寿命と加工精度にかかわってきます。毎日数分の点検作業がトラブルを防ぎ,またなんらかの異常が生じた場合でも早期発見でき,最小限の時間で復旧できます。工作機械の一般的な保守・点検の内容を表1に示します。

表1 工作機械の日常保守点検の内容
精度要因項目
動作機能項目
潤滑
エアー
その他
○主軸の振れ
○送り系のバックラッシュ
○ギブの調整
○機械のレベル
○ファン,モーターの回転
○リミットスイッチ,リレー,ランプ類の動作/機能
○クラッチ,ベルトの摩耗,緩み
○油量,油温,吐出圧力,汚染状態,潤滑状態,漏れ ○圧力
○漏れ
○フィルタの目詰まり,汚れ,ゴミ
○ベアリングの昇音
○動作の異音
○機構部の振動,緩み

これらは,毎日,週1回,月1回,半年ごと,年1回などと点検周期が機械の取扱説明書や保守点検マニュアルに明示されています。まずは機械の取扱説明書(保守点検マニュアル)をテキストにして保守・点検する項目と周期および具体的な実施方法を機械の型式ごとにまとめ,日々確認できる場所に設置しましょう。また,チェックシートを作成し,運転前に各項目を点検することを日常化してみましょう。

ポイント2 使用油の管理

工作機械の保守・点検の中でその項目の多くを占めるのは潤滑油にかかわる項目です。給油個所や給油量については保守が容易で作業が単純なため作業の確実性は高いのですが,定期的に使用油の正常を把握すること,油剤の汚染・劣化の進行を判断することで,機械の故障率の低下や廃液量の削減などの効果をもたらすことができます。使用油の汚染劣化によるスラッジの生成,不適切な濃度・粘度(温度),異物(残油)の混入は機械の故障頻度を高めることになるので日常の管理が重要になります。

使用油の汚染管理基準として表2の基準値が目安になります。これらの分析項目について,生産現場で実施できる自動分析装置や,簡易分析機器として粘度計,簡易ミリポアフィルタ試験機,デジタル型汚染度表示機器,簡易測定キットなどが市販されていますので定期的に使用油の性状を測定・管理しましょう。

表2 使用油の汚染管理基準
 
油種
油圧作動油
軸受油
歯車油
項目  
R&O型
耐摩耗性型
R&O型
極圧型
色相(ASTM)
2以下
4以下
4以下
4以下
粘度変化率
±10%以内
±10%以内
±10%以内
±10%以内
±15%以内
全酸価
0.25以下
0.4以下
0.25以下
0.25以下
1.0以下
ミリポアフィルタ
10以下
5以下
10以下
30以下
不溶解分1.0wt%以下

デジタル式油性状分析器

デジタル式油性状分析器

使用中の潤滑油の油中水分,全塩基,全酸価,粘度,不溶解,密度,混合安定性,流動点などの測定が可能。現場で短時間,高精度に分析できることが特長。

ポケットサイズの汚染度点検用ツール

ポケットサイズの汚染度点検用ツール

工作機械の潤滑トラブルは汚染物質(他油や切削油,切粉など)の混入に起因していることが少なくありません。汚染物質の混入を防止するためには設備上の改善が第一ですが,日常の給油作業・点検作業における簡単な改善でトラブルを予防できます。例えば(1)油種ごとに給油用オイルジョッキを専用化する。(切削油用と潤滑油用,摺動面油用は必ず区別する) (2)日常点検項目には油量だけでなく潤滑油の外観確認による汚染度点検を行う。(現場担当者が携帯して使用できる汚染度点検用ツールがある)

潤滑油によるトラブルを未然に防止することは機械の延命,故障ロスタイムの低減など生産効率を向上させ,計画的な保全活動が可能になります。適油の選定とともに,測定機器などを上手に活用することで日々の適切な管理をし,正常で安全な機械の稼動を行ってください。

ポイント3 ジュンツウネット21 information

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最終更新日:2019年9月13日