PAOと合成炭化水素をベースにした高性能な生分解性潤滑剤の日本市場展開 | ジュンツウネット21

RSC Bio Solutions 富永 英樹 氏に聞く  2022/2

 近年世界中で環境保全に対する意識が高まっており,国連が機関投資家に対してESG(環境・社会・ガバナンス)の視点を投資に組み入れることを提唱している.そこで,今後さらに環境対応を意識した生分解性潤滑剤の採用拡大が予想されるなどさらなる環境対応型潤滑剤の使用が期待されている.

 米国RSC Bio Solutions(RSCバイオソリューションズ)では,船舶用の潤滑油やグリース,洗浄剤を中心に生分解性潤滑剤の製造販売を世界で展開している.

 今回は同社の富永 英樹 事業開発部長(写真1)に同社独自のPAOと合成炭化水素をベースにした生分解性潤滑油・グリースの特長や今後の日本での展開についてお話をお聞きした.

富永英樹 事業開発部長(RSCバイオソリューションズ)

写真1

製品の特長や適用例などについて

 1924年にブルメンタルファミリーが米国ノースカロライナ州シャーロットで,今でもGUNKブランドとして人気の高い自動車のエンジン洗浄剤を製造販売する会社をスタートしました.1980年代には環境配慮型の潤滑油やグリースの製造販売をするRSC Bio Solutionsをグループ会社の一つとして設立し,従来の石油系から生分解性系への転換をコンセプトとした商品開発をしてまいりました.

 その後合併などを重ね,ブルメンタル・ホールディングスを親会社に持つRSC Bio Solutionsとなり現在に至ります.

 2012年には海洋での環境規制が厳しくなり生分解性の潤滑剤として,油圧作動油のFUTERRA™(ヒュッテラ),ギヤオイル,ワイヤーロープ用グリース等のENVIROLOGIC®(エンバイロジック)を上市しました(写真2).過酷な使用条件下において高性能でかつ粘度や耐摩耗性を長期間維持できるといった特長があります.現在は米国複数の拠点で製造し世界へ供給しています.

RSCバイオソリューションズの生分解性潤滑剤

写真2

製品の特長や適用例などについて

 弊社生分解性潤滑剤の特長として,再生可能資源をベースとしたポリアルファオレフィン(PAO)と合成炭化水素をバランスよく配合することでHEPRという最高難易度のISO環境基準をクリアしています(図1).特に海事産業では2013年の米国環境保護庁(EPA)船舶入港規制(VGP)に準拠した環境配慮型潤滑油(EAL)として数多くの採用実績があります.OECD301の生分解性試験をクリアしていることから生分解性が高く,毒性が少なく,生物体内への蓄積性が少ないといったEALの基準をクリアしています.さらに仮に油が漏れても海上で光らないことや,再利用可能な原材料を使用していること,PHニュートラルといった特長があります.

HEPR:PAOと合成炭化水素の配合によりISO環境基準における最高難易度製品(世界でわずか数社しか上市されていない)

図1 HEPR:PAOと合成炭化水素の配合によりISO環境基準における最高難易度製品(世界でわずか数社しか上市されていない)

 更油ができないような場所で他社の鉱物油ベースのオイルから交換をしても,シールの交換をせずにオイル交換ができることや,加水分解,相溶性,抗乳化性が良く,海水が入ってもエマルション化しにくく,泡立ちが少なく,耐摩耗性が良くポリオールエステル(POS)よりも優れた特長があります.

 FUTERRA™シリーズは,高性能エコラベル認証作動油で,加水分解を起こさず優れた酸化安性と,さらにゼロに近い起泡特性から長寿命でシール材との相溶性が良いことが特長です.

 ENVIROLOGIC® GOシリーズは,容易な生分解性合成ギヤオイルで,耐摩耗性と超高圧特性,優れた腐食とさびからの保護,際立ったシステム清浄度特性を備えています.

 ENVIROLOGIC® WREPグリースは,耐水性,容易な生分解性のグリースで,耐久性のある粘着特性から水中での使用が可能で,低温圧送性効果,高温安定性や高荷重保護が要求される用途において高い性能を発揮します.

 これまで世界で主要な船舶のOEM承認を取得することで主要船舶会社での数多くの採用実績があります.現在では米国やヨーロッパ,アジアを中心に世界80ヵ国への供給をカバーしています.

 また,製品を販売するだけではなく,使用油のオイル分析を無償で行っています.経験豊富なスタッフによる世界規模での組織営業部体制と米国本社技術部との一体型サポートにより,お客様が直面している問題点についてヒアリングして改善提案などサポートしています.

国内販売や今後の展望について

 世界的に代理店による販売活動を行っていますが,日本では2021年5月からスタンダード石油大阪発売所(SSOH)が発売元となりました.同社は,1927年スタンダード・オイル・カンパニー・オブ・ニューヨーク日本支社の代理店として設立され,長年モービルブランドの船舶用や工業用製品の販売実績があります.既存ブランドにはない特長ある弊社品を取り扱って頂くことで,お客様への新たな提案をして頂けるものと期待しています.

 今後は,これまで採用実績の多い船舶用を中心に港湾工事での重機や作業船,洋上風力発電,オフショア分野への展開にも力を入れていきたいと思います.

―ありがとうございました.

最終更新日:2022年3月25日