1. アジア市場と潤滑油剤

日本や欧州の製造メーカーの本格的なアジア諸国への進出により，アジア諸国における自動車や鉄鋼，その他工業製品の生産量は急速に増加している。特に，持続的な経済成長を背景として二輪車・四輪車の生産台数の伸びは著しい。とりわけ中国では，WTO加盟を機に市場を開放し，世界各国と同じ土俵で産業力を競い合う立場になり，欧米や日本からの進出によりさらに巨大な生産国となった。また，生産国であると同時に消費大国でもある。さらに，2004年には自動車生産台数がついに500万台を突破するなど，急速にモータリゼーションが発展している。

日本の製造メーカーが本格的にアジア諸国に生産拠点を移し，アジア諸国で生産される自動車部品や家電などの製品が従来のような単機能・低価格を対象としたものだけではなくなってきていることもあり，日本国内で使用していた潤滑油剤や，現地では入手が困難な高性能・高品質な潤滑油剤が求められ，日本の潤滑油剤メーカーがアジア諸国へ進出していくのは当然の流れである。表1を見ても，中国を中心としてアジア各国へ進出し，現地メーカーとの技術提携や合弁会社の設立，また独立資本による現地法人化というように，アジア地域での製造・供給体制を強化していることが分かる。

図1

2. 今後の展望

アジアでの日本の潤滑油剤メーカーの供給先は，基本的にはアジアに進出した日本の製造メーカーであったが，現地の大手製造メーカーなども製品の品質向上などを理由に高品質な日本の潤滑油剤を求める傾向も強くなってきている。これまでは現地の潤滑油剤メーカーが一定の品質での商品の供給が難しいという面もあり，日本メーカーの潤滑油剤の需要は高い。しかし，現地の潤滑油剤メーカーが問題点の改善をはかり，一定の品質で商品を供給できるようになれば，日本の潤滑油剤メーカーは価格競争では不利な状況に立たされる。今後は，製品供給体制の整備や現地生産体制の増強，サポート体制の強化などはもちろん，更なる商品開発などの対応が課題となってくるだろう。

本稿は，取材にご協力頂いた潤滑油剤メーカー各社の回答を元に，現状におけるアジア地域への進出状況をとりまとめた。