低温と消音性を両立したグリース | ジュンツウネット21

デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル モリコートで製造販売する,低温と消音性を両立したグリースを紹介する。

デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社(旧 東レ・ダウコーニング株式会社) モリコート  2016/4

モリコート® 消音グリース G-1056,1057,1067の製品詳細

1.ジレンマ

 今日,電気,電子機器だけでなく,自動車においても静粛性が顧客満足度に大きな影響を与える要因になっている.そのため,製品の設計段階では消音性が重要な項目に挙げられている.また,プラスチック材料部品がより広く使用されることに伴って,潤滑性と消音を目的としたグリースの使用が増加している.これらの要求は設計だけで対応することが難しく,また単に潤滑性を付与したグリースでは十分な解決が得られない.そのため,消音効果を高めたグリースに対する期待は非常に大きい.すでに市場では消音効果を謳った多くの製品が紹介されている.その多くは,高粘度のベースオイルを使用し,その粘りによるクッション性を利用して摺動物同士の接触を抑え,結果として消音効果を持たせている.この場合,常温での消音効果は認められるものの,低温での摺動抵抗の増大につながり,また塗布時の糸引きによる作業性が犠牲になることがある.低温での摺動抵抗の増大は,家電や自動車部品の作動不良を引き起こすことがある.糸引きについては,生産現場での作業性と直結し生産効率の低下,さらには製品の外観不良といった問題を引き起こすことがある.また,設計においてもこれらの点を考慮する必要があるため駆動部の仕様など,設計的な制約を受けることがある.

2.消音と背反する低温性

 このように,消音効果を重視すると低温性が犠牲になり,その逆に,低温性を考慮すると消音効果に欠けるというジレンマが従来型のグリースには存在した.

 弊社は,このジレンマを解消すべく,消音と低温性の要求項目を同時に満たす新しいタイプのグリースを開発した.開発した消音グリース(Molykote™G-1056,G-1057,G-1067グリース,以下「新製品」と呼ぶ)は,弊社で実績のあるプラスチック用グリースの技術を基にベースオイルと添加剤を最適化している.性能試験のために,このグリースの開発に合わせて騒音試験装置を準備し比較試験を行った.常温でのプラスチックギアの摺動音試験では,新製品と弊社の汎用高粘度タイプの消音グリースをそれぞれプラスチックギアに塗布し,同様の条件で摺動音レベルを比較した.試験結果から消音効果は一目瞭然で,新製品を塗布することにより騒音は従来品の高粘度のグリースと比較して大きく減少し,音圧で4dB以上の消音効果を示した.これは人間の耳で感じる音として半減したことを意味しており,従来品以上の消音効果が期待できる.

3.低温性

 同時に行った-40℃での低温トルク試験(図1)では,従来品の消音グリースと比較して新製品が格段に小さなトルクであることがグラフから読み取れる.これはグリースが温度にあまり依存せず,低温においてもスムーズに摺動することを示している.一般的にベースオイルの粘度(粘り)は温度に大きく依存するが,常温で消音効果を持たせるために高粘度のベースオイルを使用している消音グリースは,低温での粘度上昇が大きくなる.結果的に製品によっては,それほどの低温でなくても部品の動きを阻害することがある.

-40℃の環境でも摺動抵抗が小さい
図1 -40℃の環境でも摺動抵抗が小さい

 -40℃でのトルク試験と聞くと,極端な試験条件と思われるかもしれないが,世界中の様々な気候・自然環境に対応する必要がある自動車部品として要求される温度である.常温からの温度の低下によりこの値に到達するため,実際に多く使用される温度領域,例えば-10℃程度においても明らかにこの低温特性が確認されることとなる.

4.作業性

 グリースの塗布時にグリースが糸引きを起こし,狙った箇所ではない部分に付着してしまったという経験はないだろうか.そうなると作業性に大きな影響を与えることになる.その一方,作業性を重視するあまり消音特性が犠牲になる場合もある.他にも,塗布を正確にコントロールするために,塗布機のスピードを抑えた結果,作業スピードが落ち生産性の改善ができないでいる,ということはないだろうか.従来型の消音グリースでは,高粘度のベースオイルを使用するため,この糸引きが作業面で大きな問題となっている.

 弊社の新製品は,この課題に注目して開発され,糸引きを抑えることに成功したグリースである.単純な比較試験ではあるが,以下の方法で異なるグリースの糸引きに関する試験を行った(図2).まず,従来型の消音グリースと新製品をそれぞれ一定量容器に取って並べ,各容器内に浸漬した刷毛を同時に同じ速度で引き上げる.この際に,刷毛から垂れるグリースの糸の長さを比較すると,目視で半分程度の差が出ることが確認された.新製品は糸引きが大幅に軽減され,従来品と大きく異なることがわかる.

グリースの糸引き試験
図2 グリースの糸引き試験

 前述の消音試験,糸引き試験については,百聞は一見にしかずということで,試験内容を動画撮影し,YouTube(動画サイト)と弊社ウェブサイトに掲載している.ウェブサイトに掲載している図表などと合わせてその効果をご確認いただきたい.

5.にじまない

 新製品グリースの想定される用途を挙げると,家電,事務機器などの室内で使用される製品や自動車のアクチュエーター,ボディ部品,内装など多岐にわたる.そのため,プラスチック用グリースとして多くの樹脂に対して影響が少なくなるようにベースオイル,添加剤を選定している.したがって幅広い用途でご使用いただけると期待している.これらの用途では潤滑剤の油のにじみ出し,飛び散り等での周辺の汚染が嫌われるが,新製品では油分離を大幅に抑えることを可能にした.

 図3では,従来の消音グリースと新製品の油分離を比較しているが,ご覧のとおり違いが明らかである.また,にじみ出しの抑制は実際に使用される,自動車インテリア,ボディー,家電などのケースではとくに重要である.本来グリースは油を少しずつ潤滑面に供給する重要な役割を示すが,油がにじみ出し,部品の表面を伝わって,周囲を汚すことがある.稀ににじみ出した油が近くの電気電子部品に流れ込みトラブルを引き起こす問題も認識されており,少なからず油のにじみの問題で悩まれた経験がおありではないだろうか.新製品はにじみ出しも極めて少ない.意図的に擦りガラス上に塗布して24時間放置しても,従来型の消音グリースのような大きな油のにじみ出しが生じることはなかった.

試験前
油分離,にじみ出しの抑制(試験前)
試験後(100℃×24時間)
油分離,にじみ出しの抑制(試験後)
 ※試験方法:離油度試験(JIS K 2220・100℃×24時間)
 ※グリースは試験用に青色に着色してあります

図3 油分離,にじみ出しの抑制

6.なかったから作る

 消音グリースにも様々な要求項目があり,ニーズに幅広く応えるために,3製品をラインアップした.それぞれ,消音効果に加えて,高荷重,金属潤滑用のMolykote™G-1056グリース,汎用タイプのG-1057グリース,プラスチック用のG-1067グリースである.いずれのグリースも,通常のプラスチック部品用のグリース,あるいは一般のグリースと単純に置き換えるだけで消音効果を期待できる.特にG-1067グリースは弊社において,意図的に砂塵などの混入を想定したスライドの鳴き試験でも異音の発生までの寿命を延長させる効果を示している.自動車ボディ摺動部品など,外部からの埃が混入する可能性のある部品に検討が考えられる.

 今後も,汎用家電やアクチュエーターの小型化によりプラスチックギアの使用が増加すると見込まれる.従来型の消音グリースでは対応しきれないケースが多くなっている中,従来型の消音グリースを我慢して使用し続けるのではなく,ぜひ一度弊社の消音グリースの新製品を試していただきたい.すでに消音効果を高めるため汎用グリースの置き換えが家電,自動車用途で広く検討されている.

7.カスタマイズ

 弊社のサービスとして,使用条件を確認しながら最適なグリース,潤滑剤を提案させていただくことに重点を置いている.その中で,提案した製品でご満足いただけない場合,使用条件を詳細にお伺いし,開発を検討し,新たな製品を紹介することを常としている.当該新製品も,用途によりカスタマイズは可能である.すでに,この技術から派生した製品が何点かあるので,今回紹介した製品だけの評価だけではなく,消音グリースについて気軽に相談して欲しい.
 


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    最終更新日:2020年11月16日