Web版潤滑油そこが知りたいQ&A > 合成潤滑油

Q フッ素系合成潤滑油の特長

フッ素系合成潤滑油はどのような特長をもっているのですか。用途についても解説願います。

A

1.種類

次のような種類があります。

(1)PFPE油(パーフルオロポリエーテル)
 フッ素系の中では最も多く使われています。
(2)CTFE油(クロロトリフルオロエチレンの低重合体)
(3)PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
 グリースの増ちょう剤として使われています。

2.特性

(1)高温特性:フッ素系潤滑剤(オイル,グリース)は,150℃で長時間使用しても,酸化,重合,分子破断等の化学変化は全く起こりません。

(2)低温特性:表1の通り,フッ素系オイル(バリエルタ 商品名)はシリコーンやエステル系,合成潤滑油に次いで低い凝固点を持っています。

表1 フッ素オイルの粘度と流動点
バリエルタ Fluid 密度 20℃
約 g/mL
粘度 mm2/s 約 (cSt) VI値
DIN 51564
使用温度範囲 ℃ 凝固点 ℃ 約
20℃ 40℃ 50℃ 100℃
バリエルタ IS Fluid 1.90 1,400 390 230 36 VIE 140 -25…260/280 -30
バリエルタ IMI Fluid 1.90 550 180 115 21 VIE 140 -35…220 -40
バリエルタ IEL Fluid 1.90 280 95 60 12.5 VIE 130 -40…180 -45
バリエルタ O Fluid 1.88 65 25 17 4.5 VI 85 -55…160 -60
バリエルタ IS/V Fluid 1.90 1,400 390 230 36 VIE 140 -25…260 -30
バリエルタ IMI/V Fluid 1.90 500 180 115 21 VIE 140 -35…220 -40
バリエルタ IEL/V Fluid 1.87 140 65 46 13 VIE 200 -65…200 -70

(3)酸化安定性:極めて優れています(表2)。

表2 各種グリースの酸化安定性
グリース 基油 増ちょう剤  酸化安定性 
バリエルタ L55/2 フッ素油 PTFE 0.1kg/cm2
シリコーングリース シリコーン油 Li石けん 0.2kg/cm2
合成油系グリース A   ジエステル油 Li石けん 0.3kg/cm2
合成油系グリース B ジエステル油  Ba石けん  0.3kg/cm2
合成油系グリース C ジエステル油 ウレア系 0.3kg/cm2
合成油系グリース D αオレフィン油   Ba石けん 0.3kg/cm2
鉱油系グリース E 鉱油 Li石けん 0.4kg/cm2
鉱油系グリース F 鉱油 ウレア系 0.4kg/cm2
酸化安定性とは,高温(99℃),高圧(7.7kg/cm2)の酸素雰囲気中に,一定時間(100Hr)グリースを置いた後の酸素圧の降下具体(kg/cm2)をいう。(JIS K 2220.5.8)

(4)潤滑性:表3に四球試験の結果を示しましたが高い焼付荷重となっています。

表3 各種オイル,グリースの焼付荷重
オイル,グリース 組成  合格限界荷重 
バリエルタ IEL フリュード   フッ素油 >10kg/cm2
バリエルタ L55/2 フッ素油,PTFE >10kg/cm2
汎用グリース 鉱油,Li石けん 2〜3kg/cm2
シリコーンオイル シリコーンオイル 1.5〜2kg/cm2
ウォームギヤオイル 合成油,極圧添加剤 7.5kg/cm2
ウォームギヤオイル 鉱油,極圧添加剤 4.5kg/cm2
極圧グリース 鉱油,Li石けん,MoS2   3kg/cm2
高温チェーンオイル 合成油 7kg/cm2
 (条件:曽田式四球テスト,300rpm,昇圧法による,温度室温)

(5)加水分解性:湿気,水,熱水によって分解しません。
(6)耐火性:不燃性で引火性もありません。
(7)耐薬品性:強酸,強塩基に対して高い温度でも安定です(表4)。

表4 バリエルタ フリュードの耐薬品性
薬品の種類 薬品名  耐薬品温度  観察結果
有機溶剤 すべての有機溶剤 300℃ 溶剤蒸発,オイル変化なし
有機酸 すべての有機酸 300℃ 有機酸は昇華または分解,オイル変化なし
有機塩基 トリブチルアミン 200℃ アミンは変色,オイル変化なし
無機酸 塩酸,フッ化水素酸 250℃ 酸は蒸発,オイル変化なし
無機酸 オルトりん酸,硫酸 200℃ オイル変化なし
無機塩基 水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸ナトリウム  200℃ オイル変化なし
無機塩 塩化カリウム 250℃ オイル変化なし
無機酸化性薬品  過マンガン酸カリウム,クロム酸カリウム 200℃ オイル変化なし
ルイス酸 塩化第二鉄,塩化亜鉛 200℃ オイル変化なし
ルイス酸 塩化アルミニウム 100℃ オイル変化なし

(8)揮発性:極めて低い揮発性を示します(表5)。

表5 フッ素オイルの蒸気圧
  オイル名 バリエルタ
O
フリュード
バリエルタ
IEL
フリュード
バリエルタ
IS
フリュード
   
粘度 20℃ 65cSt 280cSt 1,400cSt
    40℃ 25cSt 95cSt 390cSt
    100℃ 5cSt 25cSt 36cSt
蒸気圧 20℃  2×10-5Torr   5×10-8Torr   2×10-10Torr 
     100℃  3×10-3Torr 6×10-5Torr 7×10-7Torr

(9)ゴム・プラスチックへの影響:ほとんど影響を与えません(表6)。

表6 バリエルタ フリュードのゴムへの影響
加硫ゴムの種類  引張強さ(kg/cm2)  伸び(%)  重量変化 
(%)
浸漬前 浸漬後  浸漬前   浸漬後 
天然ゴム 245 246 394 336 0
スチレンブタジエンゴム   201 211 223 229 -0.1
ニトリルゴム 179 189 385 368 -0.4
ブチルゴム 133 138 287 306 0.1
ブタジエンゴム 182 180 494 439 0
クロロプレンゴム 179 177 230 205 -0.1
ウレタンゴム 476 507 521 497 0
エチレンプロピレンゴム 113 98 234 206 0.1
シリコンゴム 62 58 159 129 0
フッ素ゴム 120 119 190 183 0.1
 注) 70℃×100時間   加硫ゴム浸漬試験

(10)毒性:基本的に人体に無害です。

3.用途と使用上の注意点

フッ素オイル,グリースの主な用途を表7に示しました。

表7 フッ素オイル,グリースの代表使用例
  用途例 発揮している特長
オイル 半導体真空ポンプ   耐ガス性,低揮発性  
高温ロール軸受 高温特性
酸素ブロアー 不燃性
グリース   電着塗装オーブン 高温特性
フィルム延伸機
ユルゲーター
PPC複写機
LBP
コーン製造機
クリーンルーム 低揮発性
真空機器,装置
遠心分離機 耐薬品,溶剤
各種バルブ

なお,フッ素系潤滑剤は他の油剤類との相溶性が全くありません。したがって装置に充填や塗布する際には,これまで使用してきた油剤類を完全に除去する必要があります。次に,フッ素系潤滑剤は,熱分解によって有害なガスを発生する恐れがあり,高温(300℃以上)にさらされる可能性がある場合には,換気を十分行う必要があります。また,これを指につけたままタバコを吸うことも厳禁です。


コンテンツ一覧

Web版潤滑油そこが知りたいQ&A カテゴリ