ポリアルキレングリコール系合成潤滑油の種類,特徴,用途などについて解説します。ポリアルキレングリコール系合成潤滑油は,作動油,ブレーキ油,水溶性切削油などに使用されています。
ポリアルキレングリコール系合成潤滑油
ポリアルキレングリコール系合成潤滑油は,作動油やブレーキ液に使用されていると聞きましたが,その他どのような用途に使われているのでしょうか。
解説します。
1. 種類,特徴,用途
ポリアルキレングリコール(以下PAGと略します)は,アルコール類にアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド,プロピレンオキサイド,ブチレンオキサイド)を付加重合して合成するもので,プルロニック型非イオン界面活性剤ともいわれています。1943年,アメリカのUnion Carbide Co.,(UCC)がUCONという商品名で発売したのが最初で,日本でも1960年頃から,ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等が生産され始め,PAGも国産化されています。
PAGは付加重合の方法によって,ブロック型とランダム型があります。
(1)ブロック型
ポリプロピレングリコール(PPG)にエチレンオキサイド(EO)を付加重合させたもので,次のような特長を持っています。
1.潤滑性があり,水溶性潤滑剤として使用できる。
2.原料のPPG分子量とEOの含有量により,図1に示すように性状が変化する。
3.洗浄力があり,低起泡洗浄剤として使用できる。
4.乳化,可溶化,分散力が優れている。
5.酸,アルカリ,過酸化物,金属イオン等に対して安定。
6.毒性が極めて少なく,無色,無味,無臭,無刺激性。
7.消泡性がある。
図1 浸透力,洗浄力,粘度等の相関図 |
(2)ランダム型
エチレングリコールまたはブチルアルコールにエチレンオキサイド(EO),プロピレンオキサイド(PO)をランダムに付加重合させたもので,次のような特長があります。
1.潤滑性が優れている。
2.粘度範囲が広く,高粘度指数。
3.低い流動点(-50℃)を持つものがある。
4.スラッジやカーボンの発生はわずか。
5.酸,アルカリ,過酸化物,金属イオン等に対して安定。
6.毒性が極めて少なく,無色,無味,無臭,無刺激性。
このような,ブロック型,ランダム型PAGの用途を図2に示します。
図2 プルロニック型界面活性剤の用途一覧表 |
2. PAG系合成潤滑油の用途
PAGを合成潤滑油として使った場合の用途,長所,短所は表1の通りです。
表1 PAG系合成潤滑油の用途および特長
|
主な用途は,作動油,ブレーキ液,水溶性切削油などで,使用数量を表2に記載しました。
表2 PAGの使用数量
(潤滑要覧[1993年,潤滑通信社] 資料による)
|
(1)作動油
難燃性作動油の中心となっている水-グリコール系作動油の材料としてPAGが使われています。(表3)
表3 水-グリコール系作動油の配合例
|
(2)ブレーキ油
PAGはブレーキ液に10~20%配合されており,使用量は年間2000~4000kLに達しています。
(3)水溶性切削油
水溶性の切削油や研削油の原液に5~50%添加して使用します。なお,PAGは,鉱油との相溶性が悪いので,不水溶性切削油や研削油には使用されません。
PAGはアルキレンオキサイドの種類,重合度などによって,性状や性能の異なった製品となります。したがって,今後は,これまでと違った用途に使われる製品の開発も期待されます。