油圧の省エネルギ化の第一は油圧回路を構成するポンプ,弁,アクチュエータ,配管の効率を改善する方法,第二は負荷が必要とするエネルギだけを供給する方法です。第二の方法のうち,負荷の変化に合わせて必要なエネルギのみ供給するものについて説明します。
油圧の省エネルギシステムとは
省エネルギは時の要請となっていますが,油圧機器の省エネルギ化にはどのような方法があるのかご教示下さい。
解説します。
1. 油圧における省エネルギの方法
省エネルギ化の第一は油圧回路を構成するポンプ,弁,アクチュエータ,配管の効率を改善する方法です。
第二は負荷が必要とするエネルギだけを供給する方法です。これはさらに三つの考え方に分けられます。
(1)負荷を正確に把握し,むだのない設計をする。
(2)負荷停止時にはポンプを停止あるいはアンロードさせる。
(3)負荷の変化に合わせて必要なエネルギのみ供給する。
今回の質問は第二の(3)についてのものとして説明します。パワーセービング,ロードセンシング等々の言葉は各企業がこの省エネルギシステムにつけた名称です。
2. それぞれの方式の説明
油圧のエネルギを電力kWで表すとkW=P×Q/612となります。Pは圧力,Qは流量です。これを小さくするにはPかQのどちらかを負荷の変化に合わせて変えれば良いのです。以下,圧力が負荷に合わせて変わるときには“P”,流量のときには“Q”で示します。
図1~5は各社から販売されている省エネルギ用油圧機器です。三つのグループに分けて説明します。
第一グループは図1と図2です。この原理を図6に示します。原理図はすべて説明に必要なところに限り,安全弁等は図も説明も省略します。Aの流量制御弁,Bのリリーフ弁が一体に組み合わされています。リリーフ弁にはCとDの回路があり,Dは負荷側,Cはポンプ側から導かれ,1対1の比で対抗しています。Aを開いて負荷流量QLを送ると,負荷の大きさに応じた圧力PLがDに発生します。負荷圧力PLにばねの圧力(これは流量制御弁の圧力損失ΔPと同じである)を加えたものがCの圧力P(ポンプ圧力)となります。すなわちポンプ圧力Pは負荷圧力PL+圧力損失ΔPに制御されます。ここで負荷が変化すればPLが変化し,ポンプ圧力も変わります。負荷変化に追従する圧力可変形の省エネルギシステムです。
図1 パワーセービング弁 |
図2 負荷感応弁 |
ポンプの出力を式で表すと図6のようになります。ここでむだになっているエネルギはΔP×Q/612の分です。この弁は定吐出形ポンプと組み合わせて使用します。メータイン・ブリードオフ方式の一種です。
図6 第一グループパワーセービング弁原理図 |
第二グループは図3と図4です。原理図は図7と図8に示します。可変ポンプと流量制御弁Aを組み合わせてあります。負荷圧力PLとポンプ圧力P(PL+ΔP)は弁Bによって対抗しています。Aを開くとQLが流れ,負荷圧力PLが発生します。弁BはP=PL+ΔPが成立するように,ポンプ吐出量を制御します。ここで流量制御弁Aを開閉してQLを変えた場合を考えます。QLが増加すれば一時的にポンプ吐出量が追いつかず,Pは低下します。弁BはP=PL+ΔPとなるように,ポンプ吐出量を増加する方向に働きます。第二グループでは可変ポンプを使うことによって負荷にあわせた圧力と流量の両方を制御しています。第一グループは定吐出形ポンプのため余った吐出量はリリーフ弁からタンクへ捨てていました。第二グループは流量も制御できるので省エネルギ効果が高くなります。図4のタイプは図8に示す原理のように制御弁Aがポンプから分離されているだけで原理は同じです。
図3 ロードセンシングポンプ |
図4 パワーマッチシステム |
図7 第2グループロードセンシングポンプ原理図 |
図8 第2グループパワーマッチシステム原理図 |
第三グループ図5は図9に示すように負荷流量QLの制御を弁で行うのではなく,ポンプの斜板の角度制御で行うものです。このポンプの制御は電子回路と比例弁と圧力センサ,斜板角センサによってクローズドループ制御で行われます。まず吐出量指令によって斜板角が決められ,必要流量QLが吐出されます。制御弁による圧損がないため負荷圧力PLはそのままポンプ圧力Pとなります。すなわち吐出量だけ制御していれば吐出圧力は負荷によって自動的に決まります。必要な流量と圧力のみ供給する,第二グループ以上の究極の省エネルギシステムです。
図5 電子制御 EH ポンプ |
図9 第3グループ EHポンプ原理図 |