油圧ポンプの音が大きくなった原因には,種々のことが考えられます。ポンプの異常摩耗,油温が異常に低い場合,ストレーナの目づまり,カップリングの組立不良,吸入配管からの空気混入,もどり管からの空気巻き込みなどが考えられるので,実機について点検をして,それを除くように処置をして下さい。
油圧ポンプの音が大きくなった原因は
動き始めてから1年も経過していない油圧プレスの音が大きくなりました。調べて見たら,油圧ポンプの音でした。油圧ポンプはベーンポンプです。まだ続けて使っています。作動油はプレスメーカの指定したもの(ISO VG 32)です。どうしたのでしょうか。
解説します。
ポンプの音が大きくなる現象には,様々な原因が考えられますから,ズバリこれだという回答はできません。したがって,実際のポンプユニットについてその考えられる個所の点検をしなければなりません。
図1に示したようなポンプユニットから騒音発生の要因を調べてみて下さい。
1)ポンプの異常摩耗
ポンプのユニットを製作した時点で,作動油中に混入した固形のゴミ(サビ,鉄スケール,切粉,鋳砂など)によって,ベーンポンプのしゅう動するベーンとカムリングの接触部分が摩耗した場合が考えれられます。
とくに,カムリングが段上に摩耗しますと,ポンプの音がカタカタとして,極端な場合はポンプローターが破損しますから,作動油の汚染度検査とポンプ内蔵部品を取り外して調べることが必要です。
また,ベアリングが損傷を始めると異常音が出てきます。
2)油温が異常に低い場合
ポンプ始動時の油温が低く,たとえば0℃以下になった場合には作動油の粘度がISO VG 32であっても400~500cSt以下になりますから,吸入抵抗の増大によってキャビテーションを発生します。このために,ポンプからバリバリという音が出ます。このようなケースでは運転時間の経過につれて油温が上昇して,作動油の粘度が低くなりますから,騒音はやがてなくなります。
3)ストレーナの目づまり
ストレーナが油中のゴミを大量に捕捉して油の通過量が少なくなると,ポンプの吸入抵抗が大きくなり,2)と同様にキャビテーションを発生します。ストレーナの清掃をしなければなりません。
4)カップリングの組立不良
チェインカップリングの軸芯が狂っている場合,あるいはポンプユニットを使用するうちに精度に狂いが生じたり,注入グリースの不足などでカップリングの歯車歯先が摩耗した場合などに,カップリングからの騒音が出てきます。
表1にチェインカップリングの組立精度許容量を示します。
表1 チェインカップリング組立精度 単位:mm
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5)吸入配管からの空気混入
図1では,極端に吸入管が短かくなっていますが,ポンプユニットによってはストレーナからポンプまでの吸入配管に曲がりがあり,継手を多く用いたケースもあります。配管組立の不備やゆるみ,パッキンの老化などによって作動油中に空気が混入しますとカリカリという音が出ます。配管の点検をして,空気混入の恐れがある個所にグリースを塗布することによって音の消えることを確認します。
6)
図2のポンプ軸部にそう入されているオイルシールがゴミによる影響などで摩耗してきますと,ここから空気が油中に入り,音を発生します。その場合には,ポンプ運転時にポンプ軸部へ潤滑油(作動油でよい)を流しかけると音が消えることがあります。これによってオイルシール部からの混入空気が音の原因であると知ることができます。
7)
図1のようにストレーナともどり管がきわめて近い距離にあると音の出る原因となります。もどり作動油には,多かれ少なかれ気泡が混在しているために,油タンクの中で気泡が消えないうちにポンプに油が吸い込まれることによって音を出すわけです。
8)もどり管からの空気巻き込み
油タンクの液面が低過ぎると,もどり配管の油が油タンク内上部空間にある空気を油中に巻き込むこともあります。もどり配管が液面にとどいていない場合には,油中に入り込む気泡は多くなり,いっそう騒音はひどくなります。
このように,ポンプ関係のところから音が出てくる原因には種々のことが考えられますから,実機について点検をして,それを除くように処置をして下さい。