圧力補償とか温度補償というのは,油圧システムの中でシリンダあるいはオイルモータなどのアクチュエータの速度をコントロールする流量調整弁に設けられた機構を指します。
圧力補償と温度補償
油圧制御弁の中で圧力補償とか温度補償機構のある弁について説明してください。
解説します。
圧力補償とか温度補償というのは,油圧システムの中でシリンダあるいはオイルモータなどのアクチュエータの速度をコントロールする流量調整弁に設けられた機構を指します。
アクチェエータの速度をコントロールするためには流体の回路中において,流路を絞ることによって行います。たとえば図1や図2にあるようにハンドルによって流体の通過量を絞って減らすか拡げて増やすかで可能となります。しかし,図1,図2は流量調整弁とはいわずに絞り弁と呼ばれます。
図1 絞り弁
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図2 チェック弁付絞り弁 |
この弁は構造が簡単で操作も容易であり,速度コントロール範囲が広いという利点をもっています。ところが,油圧システムでは油の入口側と出口側の圧力差が変動することがしばしば起こります。絞り弁の開度が一定であっても圧力差が変化するために通過流量が変化してしまいます。つまり,速度が変化してしまうのです。
また,作動油の温度が変化しても速度が変わります。作動油の温度変化はすなわち粘度変化です。流量調整弁は圧力差が変動しても速度変化を小さくおさえる機構を内蔵しています。あるいは,作動油の温度変化による流量変化を最小限度にとどめる機構も同時に設置されています。
(1)圧力補償機構・・・・・・圧力差による設定流量の変動をおさえる。
(2)温度補償機構・・・・・・作動油の温度変化による設定流量の変動をおさえる。
図3が圧力補償と温度補償の機構を組み入れた流量調整弁です。(2)の矢印と(3)の矢印が絞り部分です。油出口側の圧力が高くなったと仮定すると,この圧力が中央のピストンの左側(大きなスプリングの入った小部屋)に入ります。
図3 圧力・温度補償流量調節弁
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ピストンは右側に移動して(2)の絞り部分を大きくして通過流量を保持します。(3)のハンドルによって開度を調整する絞り部は薄い刃のように加工された構造になっています。これは薄刃オリフィス形絞り弁といって温度変化の影響を非常に小さなものにしています。
圧力補償,温度補償機構を設けることで,圧力(負荷)および温度(作動油粘度)の変化にかかわりなく安定した流量制御が行えます。ですから,絞り弁による流量コントロールがラフであるのに対して,圧力補償,温度補償機構付弁は精密であるわけです。