真空ロータリーポンプ油は,次のような品質をもつ油を使用することが好ましいと考えます。(1)潤滑性・シール性等にすぐれ,蒸気圧が低い。(2)耐活性ガス性・耐熱酸化性等にすぐれる。(3)異物の混入に対して分散力がすぐれ,油の粘性変化が少ない。
真空ロータリーポンプ油の品質※
半導体ディバイス製造分野では真空装置内で作業することが多く,そのために,真空ロータリーポンプが多く使用されておりますが,その作動油の寿命が短く困っております。その原因と解決策をお教え下さい。
解説します。
半導体ディバイスの製造は図1に示すような方法により,真空装置内で行われています。そして,半導体ディバイスの要求品質が高性能化されることにより,ガリウム・ヒ素・りん・テルル・アンチモン・セレン・ベリリウム・カドミウム等の化合物を使用することが多く,それらの化合物を使用した,イオン注入・CVDおよびエッチング等の加工処理が真空装置内で行われています。そのために,生成する活性ガス「O2・CF4・AsH3・HCl…ほか」および微粒化された異物が真空ポンプへ排気されて来ます。したがって,真空ロータリーポンプに使用されている作動油に混入するため,作動圧力の低下,起動力が重くなる,フィルタの目づまりが起こる,材質の侵食が起こるなどの問題が発生します。
図1 半導体ディバイスの製造工程図 |
次に,解決策として,表1のような品質をもつ真空ロータリーポンプ油を使用することが好ましいと考えます。
表1 新しい真空ロータリーポンプの考え方
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具体的には,耐活性ガス性にすぐれた油に関しては,社団法人日本機械工業会・日本真空協会が行った「有毒ガス使用真空装置の安全化調査報告書(昭和57年3月)」の中に,表2の結果が記載されています。
表2 真空ロータリーポンプ油の耐活性ガス性
<試験条件> 排気量:1,200L/min
CF4+O2ガスを60分間排気したときの油の性状変化 |
特に,フッ素油は粘度変化がなく好ましい。炭化水素油では,アルキルナフタレン,ジフェニルエーテル等がすぐれています。
次に,異物の混入に対してすぐれた真空ロータリーポンプ油は,上記のような耐活性ガス性をもつ油に,少量で異物分散力があり,耐熱酸化性・耐薬品性をもち,適当な粘度のえられる蒸気圧の低いなどの性質をもつ添加剤を配合したものが好ましいと考えます。たとえば,一般の鉱油・合成炭化水素油およびフッ素系油等に,微粒化異物の代表化合物として「コロイダルシリカ」を添加すると,油の増粘が認められます。しかし,添加剤を配合した商品「クリスパーシリーズ(ライオン(株)製),ULVOIL-R-7500(日本真空技術(株)製),ネオバックSAシリーズ(松村石油(株))等」はコロイダルシリカを混入させても油の増粘は極めて少ないことがわかります。
※Q&A第1集発刊時点