特に油圧システムはフィルタが重要な要素機器の一つといわれています。ならば適切なフィルトレーションはどのように考えて設計したらよいのでしょう。
解説します。
1. はじめに
適切なフィルトレーションには,油圧システムのそれぞれにマッチしたフィルタの選定基準があるようです。それは油圧システムのすべてを機能,体格,汚染感度,使用作動油,保守管理方法などからみて同一に扱うことができないからです。
油圧ポンプ,制御弁,アクチュエータなど,油圧要素機器のメーカーは,それぞれ作動油中のゴミが自社の製品に対して,どれほどの影響を受けるものであるかを把握しているはずです。
なぜならば,各メーカーは自社のもっている微少すき間,材質,面圧力,操作力などを知っています。また多くの耐久実験や,各ユーザーでの経験をデータとしてもっています。
したがって,各メーカーは,いろいろな油圧要素機器を組み合わせて構成する油圧システムに対してはフィルタを設置し,作動油の汚染度を定期的にチェックすること,いわゆる汚染管理の重要性をそれぞれのユーザーに推奨するのです。
2. フィルタの性能
2.1 ろ過粒度
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フィルタの性能中ではもっとも大切なもので,作動油中のゴミを捕えることのできるゴミサイズを示しています。
フィルタメーカーは自社製品のろ過粒度をそれぞれミクロン(μm)で表示しています。3μm,5μm,10μm,20μmなどとシリーズ化しています。
そこで油圧システムメーカーは,油圧要素機器メーカーの推奨する汚染管理基準と照合し,フィルタのろ過粒度のいずれが基準に到達しうるものであるかを調べます。表1はある油圧機器メーカーの推奨する汚染管理基準です。
表1 油圧機器メーカの汚染管理基準例
※Q&A第1集発刊時点
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2.2 圧力損失
フィルタはその作動油通路,エレメントの細かい目,作動油の粘度などによって作動油を通油すると圧力損失を生じます。作動油の流量が多くなるほど圧力損失は大きくなります。そこでフィルタはできるだけ大きいものを選定します。ところが同一ろ過粒度では大きなフィルタほど高価格となり,大きなスペースをとりますから,圧力損失の大きさで,フィルタの体格を選定します。
たとえば,高圧ラインではフィルタアセンブリイの初期圧力損失が1.5kgf/cm2程度,低圧アセンブリイでは初期圧力損失が0.5kgf/cm2程度です。
しかし油圧システムによっては,保守管理をより正確にするため,あるいはより安全性を向上させるために圧力損失の基準値を,この半分としたり,同一基準地の圧力損失をもったフィルタを並列に組むことも行われます。
2.3 ゴミの保持能力
フィルタは同一ろ過粒度で体格が同一であってもメーカーがことなるとゴミの保持能力がことなるものとみられます。
これは作動油をろ過する部分であるエレメント面積(有効ろ過面積)の大小によるものです。
2.4 耐久性
油圧システムでは作動油の流れや圧力が断続的に変化します。エレメントは使用時間の経過につれてゴミによる目づまりが生じて差圧力が大きくなります。
そこで,フィルタメーカーではでは耐圧力をもったケーシングを5kgf/cm2~420kgf/cm2程度の範囲で数種類用意しています。
単純に高圧フィルタにすれば,こと足りるというものではありません。システム圧力に見合ったものでなければ不経済となります。
エレメントの目づまりがいちじるしくなると,一次側と二次側の圧力差が大きくなり,いずれはエレメントがつぶれてしまいます。
一般には10~15kgf/cm2の差圧力によって破壊しますから,バイパス弁を内蔵したフィルタが多いのです。バイパス弁が開くと差圧力は,フィルタエレメントの初期圧力に2~3kgf/cm2プラスした程度です。
ここで重要なことはバイパス弁が開く構造のことです。バイパスによってゴミが二次側に流れます。保護をしたいと考えている機器にゴミを絶対に流したくないシステムのために,差圧力が210kgf/cm2になるまで破壊をしないエレメントも用意されています。
図1は高性能電気・油圧サーボ弁メーカの推奨するフィルトレーション回路です*1。
図1 フィルトレーション回路 |
2.5 差圧指示器
フィルタアセンブリイでは,目づまりによって生じる差圧力を検出して,エレメントの交換時期に到達したことを知らせる表示器が設置されたものが多く用いられます。
電気式差圧指示器では,エレメントの目づまり状態をキャッチしてブザーを鳴らしたり,パトライトを点灯したり,また必要に応じて油圧システムに非常停止をかけたりします。
目視式差圧指示器は,エレメントの差圧力上昇によって着色した小さなアクチュエータ(赤色が多い)を駆動させ,肉眼による識別をオペレータに行わせるもので,油圧システムの使用条件によっていずれかを選択することになります。
2.6 エアーフィルタ
最近の油圧システムでは,作動油の高い清浄度を必要とするものが増加しています。図1に示したようにリザーバの通気口を兼ねた3~5μmのエアーフィルタを設置し,外部から侵入するゴミを,しゃ断することも行われます。
<参考文献>
*1 日本ムーグ株式会社総合カタログ,p.168