クーラントの長寿命化と生産性の向上 | ジュンツウネット21

日本ホートン株式会社 甘利 幸亮,亀田 敦  2004/5

清浄なクーラントは寿命が長く,潤滑性が良く,冷却性も優れていて,より低いコストで製品を作ることを可能にします。良いクーラント管理には何も秘密はありません。クーラントシステムの色々な場所でどんな変化があるかを知り,不安定になるサインを注視し,定期的に基本的な管理方法を実施することが大切です。清浄なクーラントということは安全で,気持ちの良い職場を意味します。そこでは,廃液のトラブルがなく,数ヵ月,いや,数年間にわたりトラブルなしで加工できるようになります。だから,適切なクーラント管理は価値があるのです。

1.水質

まず,一番は水質です。クーラントの90%以上は水なのですから,そこから始めるのが大事です。クーラントを作成する水の品質は他の因子よりもクーラントの全体的な性能に与える影響が大きいと言えます。今日,クーラント寿命の延長が求められることが多く,そのためには水の組成が重要になってきます。しかし,水の状態は一定ではなく,使用中に変化します。

クーラントの調整や補給に使う工場の水には色々な種類があります。公共水道,井戸水のように未処理のものは金属イオンや塩類を含んでいます。これらのものはクーラント性能に影響を与えます。

2.水の種類

(1)軟水

硬度を下げる一つの方法は水をイオン交換樹脂(ゼオライト樹脂)を通すことです。この方法は多価のカルシウムイオンとマグネシウムイオンをナトリウムイオンで置き換えます。しかし,注意しなければならないのは,この処理方法により硬水が石けんやスカムを作るのを防止することはできますが,置き換わった塩化ナトリウムと硫酸ソーダ塩がそれまで入っていたカルシウムとマグネシウム塩と同じくらい腐食性があるため,処理された水の腐食性は変わらないということです。

(2)ボイラー凝縮水

ボイラーからの水が水溶性切削油と混ぜるために使われることがあります。この水は防錆剤やスケール防止剤のような清缶剤が入っていなければ充分に使えます。これらの清缶剤はクーラントの原液との相溶性がなく,クーラントの性能に悪影響を及ぼします。

(3)純水

1.透過膜処理法-逆浸透法(RO)および限外ろ過法(UF)
 逆浸透および限外ろ過は物理的に圧力をかけて,フィルタを通して水の品質を向上させる分離プロセスです。ROでは高圧を利用してイオンスケールの不純物を除去します。UFは低圧で分子サイズの不純物をろ過します。両処理法ともに化学物質を使用せず,安定した純度の高い水を作ります。UF処理された水は溶解イオンは残るので,それが加工液の添加剤と反応して液寿命を短くすることがあります。そのため,RO処理水の方が加工油には適しますが,溶解塩分を完全に除去することはできません。

2.蒸留
 この処理によって全ての不純物が取り除かれ,純水ができます。クーラントの原液との混合に純水を使用すると,機械のクーラントタンクから水が蒸発しても堆積物を生成しません。切削液の腐食性もほとんど除去されます。ほとんどの切削油を純水で混合すると,どんな濃度でも腐蝕防止効果を発揮します。長寿命で,よく管理されたシステムを実現するためには純水を使うことを推薦します。

3.鉱物やイオンがどうしてクーラント寿命を短くするのか

水中の鉱物や溶解イオンは乳化している油滴のサイズに影響を与えます。鉱物やイオンは油滴のサイズを大きくする傾向があります。これらの大きなサイズの油滴同士がくっついて,さらに大きな油滴をつくり,その結果,クリームや分離油分ができます。鉱物分の含有量が多いと,水溶液は効果的に分散しなくなり,液寿命を縮めることになります。

4.適正なメンテナンス管理

まず最初に機械をきれいにしましょう!!
 ここまでに良い水の品質についてお話しました。それがクーラント管理の成功の秘訣です。
 その次に,二つのキーポイントについてお話します。それは機械の清掃と保全作業,特に濃度管理です。

5.工作機械のクーラントシステムをどう清浄に保つか

最初に適切な殺菌剤を汚れた(劣化した)クーラントに加え,排出する前によく循環して下さい。切粉や見える限りの堆積物を取り除き,それから,新しい水と高品質な機械洗浄剤(弊社製品:クレノール)をタンクに入れ,数時間循環して下さい。洗浄液が直接流れていかない個所の表面にはこの洗浄液を吹き付けて下さい。循環し,洗浄した後は使用液を抜き取り,新しい水を張り込みます。さらに循環し,機械表面を濯いで清浄にします。濯いだ水を抜いた後,再度水でフラッシングして,残った洗浄液や汚れをすっかり取り除きます。洗浄液で洗った物が残っているなら,完全に取り除くために,さらにもう一度フラッシングして下さい。水で濯ぐ工程で,機械の錆が心配な場合は切削液の原液を少し加えると錆の発生を防げます。最後のフラッシング液を抜き取ります。
 さあ,最終段階です。速やかに機械に新しい切削液を再充填して,システムを腐食から守りましょう。

6.加工中の予防保全

予防保全(PM)プログラムは液寿命の最長化と最高の性能発揮に欠かせません。PMがコンタミ(夾雑物)や水の補給,微生物によるクーラントへの影響を防ぎます。これらの影響がクーラントの化学,物理的性状を変化させるので,その変化を定期的にチェックする必要があります。使用クーラントの分析により,クーラントの性状が通常の管理値に入っているか確認できます。たとえよく設計されたシステムに優れたクーラントを入れても,クーラントの保全プログラムがないと,長寿命にはならないでしょう。

7.濃度管理

適切な濃度管理は最長の工具寿命,最大の生産性,完璧な錆防止,バクテリアの生成防止には不可欠です。正しいクーラント濃度はどんな水溶性切削液にとっても,その性能を十分発揮させるための大事な項目です。濃度の選択は色々な要素で決まります。その作業時間に変更は? 時間外に水分が蒸発しますか? 加工条件に変更はありますか? もし,このどれかの質問に対し,答えが“イエス”なら濃度の調整が必要でしょう。したがって,毎日濃度をチェックするべきです。

(1)濃度検査の方法

デジタル濃度計(提供:アタゴ(株))

写真1 デジタル濃度計(提供:アタゴ(株))

1.屈折率計
 この簡単な手持ちの光学機器(写真1)はかなり信頼性があります。ポータブルなので機械の側で濃度を測定できます。ただし,油分の混入や,クリーナその他の混入物により精度は低下します。

(左)2-1 油分分離法,(右)2-2 化学滴定法

(左)写真2-1,(右)写真2-2

2.油分分離法
 この方法は屈折計とほぼ同じ精度で,夾雑物の混入により同じように精度が低下します。このテストには簡単なラボの器具が必要です。(写真2-1

3.化学滴定法
 この方法は他の方法に比べ,精度の高いものです。ただし,滴定方法はクーラントの性質によりますので,各加工油会社の指示に従ってください。(写真2-2) 注意してほしいことは,正確な濃度管理のためには機械の使用者や工場のその他の方々が,クーラントに他油が混入しないようにすることが大切だということです。

8.補給

クーラントシステムに液を補給するには良質の水と事前に混合したものを補給する方が,直接,液槽に原液を補給するより望ましい。それは,液槽中に存在する金属分やバクテリアによりクーラントの乳化性が悪くなっているからです。

9.pHコントロール

前述したように水質は水溶性加工油の性能を発揮させ,長寿命を得るために重要であり,水の品質はその水のpH,硬度および溶解固形分により決まります。そのため,pHを毎日測定することを薦めます。なぜそんなにpHが大切なのでしょう。ほとんど全ての水溶性加工油はpHがアルカリサイドで働くように設計されています。それはアルカリ条件下では錆を防止し,微生物の繁殖を防ぐことができるからです。例えば,もし,新液のpHが 9.1で2週間後に7.5まで低下した場合,バクテリアの数が急激に増え,乳化剤や界面活性剤その他の添加剤が消化されているかもしれません。また,バクテリアの吐き出す副産物がpHを下げ,そのため錆や腐食を起こし,刺激臭を発生させます。これらの現象がクーラントの操業安定性を低下させます。不安定で,化学的にもバランスが崩れると工具寿命を短縮することにもなります。明確なことは正しいpH管理は生産性,経済性を得るための第一歩です。

もちろん,適切な量のアルカリあるいは原液に入っている添加剤を投入することによってpHを上げることはできます。全ての水溶性加工液は一定の範囲のpHにするように設計されています。その範囲以上へのpH上昇は危険のサインで,肌荒れの一般的な原因です。もし,pHが異常に上昇していたら,何かが誤って混入されたか,確認してください。よく洗浄剤が入っていることがあります。

(1)pHの測定法

pHの毎日のチェックは簡単です。最も簡単なのはpH試験紙です。写真3のような携帯式のpHメータでも簡単に測定できます。写真4のように正確には試験室でポテンシオメータ(pHメータ)を使って測定できますが,採取後時間が経過するとサンプルのpHが変化する可能性があるので,現場で測定することを薦めます。

pH計(提供:(株)堀場製作所)

写真3 pH計(提供:(株)堀場製作所)

ポテンシオメータ(pHメータ)

写真4

10.毎週あるいは隔週のチェック

金属加工液中では微生物―バクテリア,酵母およびカビ―が発生し,堆積物,悪臭,腐食などの問題を引き起こします。問題を起こす二つの要因は液の化学的性質とクーラントシステムの設計と保全です。

11.殺菌剤

今日の水溶性クーラントは微生物の発生を抑制する殺菌剤を含んでいます。適切に清浄にされたシステムであれば,製品中の殺菌剤は適当な量の液の補給に伴い補充され,微生物の発生を抑制します。使用中に,金属分や潤滑油が混入してくると,殺菌剤の添加が必要になるかもしれません。

微生物の繁殖状況を知るには毎週あるいは隔週のチェックで十分でしょう。繁殖の程度を調べるには,寒天培養法とディップスライドの二方法があります。寒天培養法では液のサンプルを寒天の培地に植え培養し,発生した微生物のコロニーを確認し,その数を数えます。写真5のようなディップスライドテストはもっと簡単です。スライドを液に浸漬した後一晩培養し,その外観から微生物の量を推定します。システムや機械が微生物の発生したことのあるものである場合は,現場での殺菌剤の添加を薦めます。

一般細菌

ディップスライドテスト-(左)検出せず,(右)10<sup>7</sup>以上

写真5  (左)検出せず,(右)107以上

12.微生物の発生をどうして抑制するか

水溶液中での発生するバクテリアやカビは刺激臭を発し,加工物や機械を腐食させ,フィルタや清浄機の機能を阻害します。その結果,クーラント寿命を縮めます。一般的に二種類のバクテリアが水溶性切削液中に認められます。酸素の存在中で繁殖する好気性バクテリアと無酸素状況で繁殖する嫌気性バクテリアです。混入潤滑油やその他の夾雑物はバクテリアの繁殖を促し,両タイプのバクテリアに培地を提供することになります。

13.好気性バクテリア発生のサイン

エマルションやソリューションタイプの液が不安定になるのは好気性バクテリア発生のサインです。これらのバクテリアは界面活性剤のような添加剤上で増えます。システムを清浄にし,適切に選定した殺菌剤を使用することが抑制対策です。

14.高濃度の嫌気性バクテリアを減少させる方法

嫌気性バクテリアは硫化水素を発生します。それが休み明けによく経験するあの臭いで,機械や製品の錆の原因でもあります。嫌気性バクテリアはクーラントの色を灰色から黒色に変化させます。休止後に最も強く臭うのは,混入油分が液槽の表面に上がってきて表面を覆い,酸素を遮断する膜を作り,嫌気性バクテリアを継続的に増加させるからです。週末にクーラントを循環させるか,殺菌剤を使用すればこの問題を少なくすることができるでしょう。クーラントに気泡を吹き込むことも嫌気性バクテリアの発生を防止するのに効果的です。また,殺菌剤を使用することはポンプを回すよりは実際的で,安価かもしれません。その場合適切な殺菌剤を選んでください。

“混入油分の除去”が大切です。クーラント表面に浮かぶ機械の潤滑油や油圧作動油はクーラントを空気から遮断し,嫌気性バクテリアの発生をきたします。特に機械停止前にはこれらの混入油分を除去してください。バクテリアの発生を抑制する最も効果的な方法は機械周りをよく清掃することです。新液を入れる前に液槽を定期的にクリーナで清掃してください。

15.カビの発生を抑制する方法

切削液中のカビの発生も大きな問題です。カビ発生の兆候は通常,液槽の壁に付着するヌルヌルの堆積物です。この堆積物はクーラントの性能を阻害し,特にろ過システムの性能を低下させます。一般的にカビとバクテリアは液中に共存し,栄養素を奪い合います。しかし,カビはバクテリアよりもずっとゆっくり繁殖します。カビの悪影響が問題となるまでには,数週間あるいは数ヵ月かかることがあります。カビをなくすためには真菌用の殺菌剤を使用しなければなりません。しかし,殺菌剤を投入するだけでは十分ではありません。再度の発生を防止するためには,カビの菌糸を削り取って,物理的に取り除くことが必要です。

16.クーラントを汚染するもの

クーラントの夾雑物として入ってくるものには,油圧作動油,防錆剤,摺動面油,埃,床クリーナ,金属切り屑などがあります。これらの夾雑物は静置されている液を空気から遮断し,バクテリアの発生を促進します。クーラントの滞留と夾雑物の混入は休日明けのあの臭いの原因です。継続的に夾雑物を取り除けばこの臭いの発生を防止できます。

集中システムの場合,クーラントの性状は1個所で測定と調整ができますが,個別システムの場合は数が多いとその保全管理は簡単ではありません。場合によっては最もよく使われる機械に集中して管理をせざるを得ないでしょう。多数の個別機械タンクシステムがある場合,クーラントのリサイクルシステムを構築すると良いでしょう。各液槽から計画的に使用液を抜き取り,それをバッチ処理し(清浄化する)新油で調整した液と1:1で混ぜ,機械に戻すような保全システムを設定すると良いでしょう。この方法により,クーラント寿命を延長し,使用中に問題が起こらないようにできます。

17.クーラントの清浄化

(1)静置とスキミング

十分な時間クーラントをタンク中に据え置き,静置することによりクーラントから夾雑物を分離します。金属の切り屑とか土砂などのような夾雑物は静置で取り除けます。その他,潤滑油のようにクーラント表面に浮かぶものはそこからスキミング(掬い取る)します。空気の吹き込みは夾雑物を表面に浮き上がらせる効果があります。

(2)ろ過

ろ過の方が積極的に除去できますが,高価な装置が必要となります。色々なろ過方法があります。どの程度まで,ろ過するかにより,装置は異なり,きれいにしようとすればするほど,複雑で高価な装置が必要です。システムの選定は,ろ過される液のタイプ,温度,圧力,流量,混入油分量,微生物の量,加工されている材料の種類等によります。

おわりに

クーラントを望ましい,最高の性能を発揮できるよう維持するためには,いままで述べたように以下の項目を適切に実施することが大切です。

(1)工作機械およびクーラントシステムを清潔にする。
(2)良質の水を使って,クーラントを調整する。
(3)濃度,pHを適正な範囲に維持する。
(4)混入油分やその他の夾雑物の混入を最小限にする。
(5)必要に従い,殺菌剤,防カビ剤を使用する。

クーラントの管理は決して難しいことではなく,日常の管理を正しく,正確に行うことによって,その目的を十分果たせます。

そうすれば,クーラントは長期間,腐敗もせず,トラブルもなく使用することができ,工具寿命も延長でき,最終的には最高の生産性と経済性を得ることができるでしょう。

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