潤滑性能向上用市販添加剤の活用ポイント(固体潤滑剤を中心として) | ジュンツウネット21

住鉱潤滑剤株式会社 石橋 格,永田 幸司  2004/4

1.潤滑性能向上用市販添加剤とは

潤滑性能向上用市販添加剤は,もともと市販ギヤオイルなどに配合されている個々の極圧添加剤(EP剤),油性向上剤,酸化防止剤などの潤滑油添加剤とは異なります。

潤滑性能向上用市販添加剤とは,様々な潤滑油添加剤をバランス良く配合し,市販ギヤオイルなどに10%前後添加し潤滑性能を向上させるための商品を指します。

2.潤滑性能向上用市販添加剤の添加目的

(1)焼付き防止

(2)摩擦・摩耗低減
  1.油温低下
  2.異常振動・異音低減

3.潤滑性能向上用潤滑油添加剤の作用機構

(1)潤滑性能向上用潤滑油添加剤全般の作用機構(図1参照)*1

直接接触も含む潤滑に有効な添加剤の作用機構

図1 直接接触も含む潤滑に有効な添加剤の作用機構

1.油性向上剤
 脂肪酸,エステル,アルコールなどがあり,潤滑油基油より吸着活性なので,摩擦面に物理吸着または化学吸着による潤滑膜を形成して,摩擦面同士の直接接触を抑制し,摩擦摩耗を低減します。

 油性向上剤は比較的マイルドな条件の低温,低~中荷重下で使用されます。

2.添加剤自身が分解・重合して潤滑膜を作るもの
 Zn,Moのジチオリン酸塩,カルバミン酸塩など,有機金属化合物が代表的なもので,潤滑油添加剤自体が分解,重合して固体潤滑被膜を作り,この膜が下地金属に比べてせん断されやすいために,摩擦,摩耗を低減します。

 高温,低~高荷重下の幅広い条件で使用されます。

3.金属原子との反応により潤滑膜を作るもの
 硫黄系,リン系,塩素系の3種類があり,下地金属が鉄の場合,それぞれ硫化鉄,リン酸鉄,塩化鉄の被膜を作り,摩擦,摩耗を低減します。

 硫黄系とリン系極圧添加剤が主流で,塩素系極圧添加剤は,ダイオキシン発生が懸念されるため,塩素フリー化が進められています。

 高温,中~高荷重下で使用されます。

4.固体潤滑剤のへき開による摩擦低減
 二硫化モリブデンやグラファイトは層状構造を有しており,摩擦面に固体潤滑被膜が形成されると,滑り方向と平行になった面が容易にへき開し,摩擦,摩耗を低減します。

 高温,高荷重下で使用されます。

(2)固体潤滑剤による潤滑(図2参照)*2

固体潤滑剤による潤滑

図2 固体潤滑剤による潤滑

 流体潤滑が不可能または無効な高温および高面圧の摺動条件では,流体の代わりに固体潤滑剤のようにせん断強度の低い物質を固体間に薄く介在させます。

 固体間のすべりに関して最も簡単なモデルを使うと,摩擦力Fは

  F = As

で表されます。ただし,Aは接触面積,sは固体表面のせん断強度です(異なった固体間のせん断の場合には軟らかい方の材料のせん断強度)。一般に,硬い材料をしゅう動面に用いれば,Aは小さくsは大きく,逆に軟らかい材料を用いればAは大きくsは小さくなります。

硬い材料の表面に,軟らかい材料として固体潤滑剤の薄膜を何らかの方法で形成して,荷重を下地の硬い金属に受け持たせ,せん断を軟らかい薄膜である固体潤滑剤に受け持たせれば,Aもsも小さくなり,摩擦力も小さくなります。

 身近なものに例えるなら,舗装道路上が滑りやすい固体の氷で覆われたアイスバーン状態と言えるかもしれません。

4.使用に当たっての注意事項

(1)添加した潤滑油の性状などの確認

添加後の潤滑油の動粘度などが,添加前に比べて大きく変化しないかカタログ等で確認します。

(2)使用する潤滑性能向上用市販添加剤の作用機構の確認

III章で述べた作用機構のうち,どのタイプの作用をする潤滑性能向上用市販添加剤なのかを把握し,ニーズに合っているかを確認します。

(3)使用方法の確認

添加量と添加方法を確認し,厳守する。
 ※詳しいことは,各市販添加剤メーカーにお気軽にご相談下さい。

5.使用実例

ピッチング発生例

図3 ピッチング発生例

(1)スパイラルベベルギヤのピッチング進行防止(図3参照)*3
 1.装置:コンテナ移動装置の減速機
 2.使用油:工業用ギヤー油2種VG220
 3.油量:70L
 4.問題点:スパイラルベベルギヤにピッチング発生
 5.対策:スミコーギヤスペシャルオイルを10%添加
 6.結果:添加1年後,ピッチングの進行なし,なじみが出てきた。未添加の装置の場合は,ギヤーのピッチングが進行。全ての減速機に,スミコーギヤスペシャルオイルを10%添加。

ロータリーキルン サポート ローラー軸受例

図4 ロータリーキルン サポート ローラー軸受例

(2)サポートローラー軸受の発熱防止(図4参照)
 1.装置:ロータリーキルンのサポートローラー軸受
 2.使用油:工業用ギヤー油1種VG460
 3.油量:800L
 4.問題点:異常発熱発生
 5.対策:モリコンクF460を10%添加
 6.結果:添加後,発熱などの異常事態は起きておらず,問題なく操業。

<参考文献>
*1 木村好次:トライボロジーデータブック,(1991),19-22,テクノシステム
*2 日本トライボロジー学会:トライボロジーハンドブック,(2001),52,養賢堂
*3 日本トライボロジー学会:潤滑故障例とその対策,(1978),51,養賢堂

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