廃油処理の現状と潤滑油のリサイクル | ジュンツウネット21

1.わが国における廃棄物の現状

廃棄物処理法によると,廃棄物とは「他人に有償で売却できないために不要になったもの」と定義され,一般廃棄物と産業廃棄物に大別されます図1*1。その廃棄物の総排出量は「2001年度ベースで一般廃棄物が約5000万トン,産業廃棄物が約4億トン」となり,使用済み潤滑油は大半が産業廃棄物として取り扱われています。

廃棄物の区分

図1 廃棄物の区分

産業構造審議会資料(製品毎の特性)より,品目別廃棄物の廃棄量の多い順に並べたものを表1に示しています。最も多いのは印刷情報用紙で1000万トンを超える量が廃棄され,その中で潤滑油は12番目に数えられており,品目別廃棄物の中では多い部類に位置付けられます。

表1 廃棄物の品目別廃棄量(ベスト15)
廃棄物
廃棄量(万トン/年)
1.印刷情報用紙
1.109
2.段ボール
943
3.自動車
552
4.石膏ボード
551
5.新聞紙
319
6.プラスチック製包装容器
281
7.紙製包装容器
225
8.ガラスびん
215
9.衛生用紙
172
10.繊維版(建材)
148
11.スチール缶
135
12.潤滑油
120(万kL/年)
13.衣料
106
14.金属製家具
103
15.タイヤ
101

出典:1998年度産業構造審議会資料

2.潤滑油のマテリアルフロー

図2では使用済み潤滑油のマテリアルフローを表しています。これによると,国内販売量211万kL/yrに対して,使用済み潤滑油の発生量は121万4000kL/yrであり,この一部は自家燃料もしくは委託再生による自社内での工業用潤滑油として利用されています。あと,残りの88万8000kL/yrは廃油収運業者に回収されて,その大半の56万2000kL/yrが廃油再生業者によってリサイクルされ「再生重油」に生まれ変わります。

このように使用済み潤滑油はリサイクルされる一方で,廃油のまま需要家の自家燃料,公衆浴場,農業用ビニールハウスの燃料に利用されるものや焼却に回るものがあることがわかります。

潤滑油マテリアルフロー(リサイクルの現状)

図2 潤滑油マテリアルフロー(リサイクルの現状)   出典:潤滑油リサイクル対策委員会資料

3.潤滑油リサイクルの問題点と潤滑油業界の取り組み

潤滑油はリサイクルされる一方で,潤滑油ユーザー(排出元),廃油回収,再生処理,再利用の各段階において多くの問題を抱えており,各段階における主な問題点は表2のようなことが考えられます。これらの問題を解決し,潤滑油リサイクルを積極的に進めるためには,事業者・消費者・行政等関係主体の連携のうえで,対策の検討と様々な取り組みが必要です。

表2 潤滑油リサイクルに際して発生する主な問題点
潤滑油ユーザー段階 (1)使用済み潤滑油(廃油)分別の不徹底
(2)産廃処理とリサイクルの認識不足
(3)使用済み潤滑油(廃油)保管設備の未整備
(4)潤滑油成分情報の不足(塩素含有等)
(5)使用済み潤滑油(廃油)の不適正処理 等
廃油回収段階 (1)回収困難な施設設計
(2)少量回収による回収コストのアップ
(3)無許可回収(少額買い取りによる脱法行為)
(4)回収費の経済性 等
再生処理段階 (1)再生技術のコストによる限界
(2)分析機器の未整備
(3)簡易分析計の未整備 等
再利用段階 (1)再生品の品質と信頼性確保(灰分,塩素分等)
(2)再生品の用途限定
(3)再生品供給力の恒常的不足 等

これからは,建築物や機械設備等の全てにわたって廃油はもちろん,廃棄物を容易に回収し,リサイクルできることを前提とした設計思想(欧米におけるBest Available Techniqueの考え方)の定着が望まれます。

潤滑油業界として現在,このような取り組みをしています。
(1)塩素系潤滑油分別回収の推進(図34)*1
(2)塩素系潤滑油表示ラベルの貼付(図5)*1
(3)塩素フリー化の推進(図6)*1

廃油分別パンフレット

図3 廃油分別パンフレット

廃油分別ポスター

図4 廃油分別ポスター

塩素系潤滑油表示ラベル

図5 塩素系潤滑油表示ラベル

潤滑油の塩素フリー化に関するリーフレット

図6 潤滑油の塩素フリー化に関するリーフレット

4.廃油処理の手引

廃油は「廃棄物処理法」に定められた産業廃棄物です。事業者として不要になった廃油等は有効利用する場合であっても,再生不可能な産業廃棄物を含有するため,法に定める産業廃棄物としての取り扱いをしなければいけません。

産業廃棄物は「排出事業者が自らの責任で適正に処理する」というのが基本的原則のため,事業者は基準に従って,産業廃棄物としての廃油を運搬または処分をしなければいけません。その中で廃油の保管はできるだけ屋内の場所に保管し,見やすい場所に掲示板を設けて,廃油の種類・管理者名・連絡先等の明記が必要です。その際に廃油は専用容器または,ふた付きのドラム缶に保管し,「塩素系潤滑油」「水系潤滑油」「非塩素系潤滑油」の3油種に分別することが望まれます。

しかし,一般的には排出事業者が自ら処理できない場合が多いので,その時には法に基づく委託基準に従って,地方自治体の許可を受けた業者との間で,産業廃棄物処理委託契約書(以下委託契約書)を結ぶことが義務付けられていますが,その手順を図7*1で表しています。

その時に注意すべき点としては,委託業者の許可証の写しをもらって許可内容を確認すると同時に,委託契約書に添付する必要があります。この委託契約書は5年間保管することが定められています。また,処理業者に引き渡す際にはマニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付も義務付けられています。

廃油処理委託の手順

図7 廃油処理委託の手順

 

<参考・出典文献>
*1 (社)潤滑油協会発行 潤滑油リサイクル―ミニハンドブック― 2004年1月30日発行
*2 (社)石油学会発行 PETROTECH 小特集 廃油のリサイクル 廃潤滑油リサイクルの現状と課題 OCT.2003 Vol.26 No.10別冊

リサイクル

最終更新日:2018年5月15日