潤滑油が関係する化学物質について,主な関連法規類の概要,各法規類に該当する物質と使用例をまとめた。なお,ここでは人工的に作られたものに限らず天然産出物についても「化学物質」としている。
はじめに
近年,環境や人に対する化学物質の影響について意識が高まっている。ここ数年,「労働安全衛生法」の改正や「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」の制定等,環境保全や安全衛生に関する様々な関連法規類の改正や制定が行われている。
元来「無駄な力を使わない」ために使用している潤滑油も,その製造・使用・廃棄というあらゆる過程において化学物質として管理が要求されている。
さて,潤滑油の使用目的「無駄な力を使わない」とはどのようなことであろうか。
- 機械類の可動部分での摩擦の減少
- 摩耗や焼き付けの防止
- 動力損失の軽減
- 冷却・密閉・防錆等の効果
以上のようなことが挙げられる。機器類の長寿命化,省エネルギーに貢献している。
物質同士の接触に対し最適な潤滑油を選定し,必要に応じ必要な量だけを用い,周囲を汚染しないような使用・廃棄を行えば,潤滑油を用いたほうが環境に優しい製造技術となりうる。ただし,潤滑油の使用に際し,関係法規の理解,遵守が重要である。
潤滑油が関係する化学物質について以下の通りまとめた。
- 主な関連法規類の概要
- 各法規類に該当する物質と使用例
なお,ここでは人工的に作られたものに限らず天然産出物についても「化学物質」としている。
1. 主な関連法規類の概要
表1に潤滑油に関わる主だった法規類について記述する。
潤滑油はこの他にも「毒劇物取締法」,「特定物質の規制などによるオゾン層の保護に関する法律」,「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」,「悪臭防止法」,「油濁損害賠償保障法」,「下水道法」など多くの法規類により管理されている。
化審法については,元々環境中に出された化学物質が与える人への影響を考慮して制定された。しかし平成16年4月に施行される改正化審法では,現行の内容と大きく変わり,環境に対する影響が考慮されたものとなっている。
ところで,潤滑油が廃棄される際には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」における産業廃棄物(廃油)に該当するが,一方,産業構造審議会においてリサイクルガイドライン品目にも指定されている。廃潤滑油は非塩素系潤滑油,塩素系潤滑油,水溶性潤滑油と3つに分けられる。このうち非塩素系潤滑油のみがリサイクル可能で再生重油,再生潤滑油にすることができる。塩素系,水溶性のものはリサイクルが困難であるため,廃掃法に則り処理しなければならない。
表1 潤滑油に関連する主な法規・制度の概要
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2. 各法規類に該当する物質と使用例
潤滑油を構成する主な化学物質(基油・添加剤)について表2にまとめた。
PRTR対象物質や労働安全衛生法に該当する化学物質を1%以上(発がん性が指摘される物質については0.1%以上)含む場合には,該当物質を含有すること及び含有量を報告しなければならないことになっている。
また,鉛や塩素を含有する場合にも表示義務がある。
表2 潤滑油を構成する主な化学物質
:該当 食:食品衛生法 毒:毒劇物取締法 |
最後に
潤滑油が地球にやさしい技術であるためには,技術開発といったメーカーの努力だけではなく,使用する側も適正に潤滑油を使用することが重要である。
また,取扱者の健康や安全を確保するためにも法規制類の理解と遵守が望まれる。
<参考文献>
*1 若林利明:解説 特集・21世紀における潤滑油の技術課題潤滑油の技術的課題と今後の動向 トライボロジスト 第48巻第4号(2003)259~264
*2 山田太郎:廃潤滑油リサイクルの現状と課題 ペトロテック第26巻第10号(2003)
*3 楠山文彦:PRTR法と切削油剤 潤滑経済3月号(2002) 11~16
*4 (社)潤滑油協会編:2003年改訂版パンフレット「どうしてますか?廃油の分別(分別による循環型社会の構築)」
*5 (社)潤滑油協会 潤滑管理普及対策委員会:潤滑油剤法令ガイド