地球温暖化防止のための分散型発電の本命,スターリングエンジン | ジュンツウネット21

スターリングエンジンについて解説する。エネルギーの有効利用ならびに再生可能エネルギーの利用を目的にスターリングエンジンを用いたコージェネレーションユニット,太陽熱発電システム,バイオマス燃焼発電システムの導入が開始されている。

明星大学 濱口 和洋  2008/8

はじめに

スターリングエンジンは,今から190年程前に発明され,その当時は数千台のエンジンが発売されたが,内燃機関の出現によりその姿を消している。オランダPhilipsは,一度消滅したスターリングエンジンの低振動と低騒音に着目し,1937年より開発を進めるとともに,その技術移転を多くの国々に行ったが量産化されることはなかった。

一方,日本においては,運輸省主導による船舶用スターリングエンジンの研究開発(1976~1981),その後の通産省主導による蒸気圧縮式ヒートポンプ駆動ならびに発電機駆動用スターリングエンジンの研究開発(1982~1987)が行われたが,実用化に至っていない。ところが,本エンジンは,熱源の多様性,静粛性,排気ガスの清浄性を有する環境に優しいエンジンとして,欧米において開発が継続され,表1に示すエンジンを用いた用途開発,フィールド試験,さらには商品化が行われている。特に,エネルギーの有効利用を目的とした家庭用コージェネレーションシステム(CHP),さらには再生可能エネルギーを利用した太陽熱発電システムおよび木質バイオマス燃焼発電システムのフィールド試験ならびに商品化が進められている。

表1 主な実用エンジンの仕様
国名
ニュージランド
米国
米国
ドイツ
デンマーク
スウェーデン
会社名
WhisperTech
Sunpower
INFINIA
SOLO
Stirling Danmark
Kockums
機種名
AC WhisperGen
EG1000
RG-1000
V161
SD3
V4-275R Mk III
熱源
天然ガスプロパン
多種
天然ガスプロパン
多種
木質バイオマス
多種
発電出力
1.1kWe
1kWe
1kWe
9.5kWe
35kWe
 
軸出力   
12kW
40kW
75kW
発電端効率
15%
32%
30%
24%
27%
 
熱効率   
30%
31%
38%
回転数
1,700rpm
50Hz(リニア)
50Hz(リニア)
1,500rpm
1,010rpm
2,000rpm
作動ガス/平均圧力
窒素/2MPa
ヘリウム/不明
ヘリウム/不明
ヘリウム/15MPa
ヘリウム/4.5MPa
ヘリウム/13.5MPa
形式4気筒複動揺動ヨークフリーピストン発電機フリーピストン発電機V2気筒単動クランク4気筒複動ロスV4気筒複動クランク
行程容積
122cm3
不明
不明
160cm3
4×1200cm3
4×275cm3
重量
150kg(含発電機)
35kg(含発電機)
60kg(含発電機)
460kg(含発電機)
1,600kg(含発電機) 
約800kg
主な用途 発電機,CHPなど CHP,バイオマス発電など 発電機,CHPなど CHP,太陽熱発電 木質バイオマス発電 潜水艦,発電機,CHPなど

1. 分散型発電システム

実用エンジンは,今まで潜水艦の無給気推進源,ヨットのバッテリ充電用などとして極わずかしか利用されていなかった。しかし,家庭用コージェネレーション(CHP)ユニット,太陽熱発電,バイオマス燃焼発電などの分野でフィールド試験のみならず試験販売さらには商品化が行われ,量産化も開始されようとしている。

1.1 家庭用コージェネレーション(CHP)ユニット

イギリスをはじめとするヨーロッパでは都市ガスを燃料とした一般家庭向けCHPユニットへの期待が高まり,すでに試験販売されたユニット,さらに2008年~2009年にかけて商品化予定のユニットもある。

イギリスのエネルギー供給会社であるPowergenは,表1のニュージーランドWhisperTechのエンジン発電機ユニットに基づき設計された図1に示すCHPユニットをイギリスEast Manchesterの一般家庭にすでに450台導入し実績を重ねている。なお,PowergenはWhisperTechと今後8万台のユニットを購入する契約を結んでいる。WhisperTechの家庭用CHPユニット(W480×D560×H840mm,150kg)の燃料には天然ガスを使用し,その発電出力は1kWe,熱供給はエンジン側とバーナの両方を用いた7.5~13kWth(給湯温度60℃)であり,その発電端効率は15%程と低いが,総合効率は90%に達する。低い発電端効率はエンジンの長寿命化とコスト低減を目的に作動ガスに2MPaの窒素を使用していることにある。このユニットの直流発電タイプは,すでにヨットのバッテリ充電用として販売されている。

(a)概観/Powergenの家庭用コージェネレーションユニット
(a)概観

(b)ユニット内部/Powergenの家庭用コージェネレーションユニット
(b)ユニット内部

図1 Powergenの家庭用コージェネレーションユニット*1

イギリスMECもまた同様のCHPユニットの商品化を進め,2008年末にはフィールド試験用ユニットを供給開始の予定である。同社のエンジンには,表1および図2に示す米国Sunpowerの1kWe級フリーピストンエンジン発電機EG1000(φ230×435mm)を用い,そのユニットのフィールド試験とともに量産化に向けた開発も行っている。本エンジンは,作動ガスを完全密閉できる構造を有し,運転時の静粛性が極めて高い。

SunpowerのEG1000エンジン発電機

図2 SunpowerのEG1000エンジン発電機*2

オランダENATECでは,表1および図3に示す米国INFINIAのRG-1000フリーピストンエンジン発電機を用いたユニット(W450×D500×H750mm)を2009年に販売予定である。本エンジンの寿命は5万時間,燃料に天然ガスを使用した場合の排気エミッションはNOxが5ppm以下,COが20ppm以下である。本エンジンは,日本のリンナイによりライセンス生産され,ヨーロッパにおけるフィールド試験用として,本年より1,000台以上出荷予定である。

INFINIAのRG-1000エンジン発電機

図3 INFINIAのRG-1000エンジン発電機

1.2 太陽熱発電システム

本システムは,米国およびドイツにおいて開発されている。一例として,米国New Mexico,Sandiaに設置されている米国SESによる6基の発電プラント(Dish Stirlingシステム,総発電量150kWe)を図4に示す。この1基のシステムは,反射鏡(0.91×1.22m)89枚からなる集光器により太陽熱を受熱部(レシーバ)の開口部(アパーチャ)φ20cmからスウェーデンKockumsU4-95エンジン(作動ガス:水素)のヒータ管壁(図4(b))に集熱し,管壁を810℃に直接加熱することによりエンジンが動作し,発電を行う。1基の発電出力は25kWe,システム効率は27%程度である。同システムはカリフォルニアのMojava砂漠に今後4年間で20,000基(500MWe)~43,000基(850MWe)設置するとのことで,その後さらなる大規模な設置も予定されている。使用しているKockumsエンジンは表1の同社75kWのV4-275R Mk IIIエンジンと同形式であるが30kW級に小型化し,太陽熱発電のみならずポータブル発電機やCHPユニットにも供給されている。

(a)Dish Stirlingシステム/25kWe級Dish Stirlingシステムと太陽光集熱部のエンジン発電機
(a)Dish Stirlingシステム

(b)エンジンの集熱ヒータ管部/25kWe級Dish Stirlingシステムと太陽光集熱部のエンジン発電機
(b)エンジンの集熱ヒータ管部

図4 25kWe級Dish Stirlingシステムと太陽光集熱部のエンジン発電機*3

図5にはスペインのアルメニアに設置されているドイツSchlaich Bergermann und Partnerの10kWe級発電システムを示す。その集光部の直径はφ8.5m,使用しているエンジンは表1のドイツSOLOのV161エンジンである。同エンジンは,2気筒単動クランクエンジンであり,作動ガスには15MPaのヘリウムを用い,膨張(高温)空間温度650℃において,発電出力9.5kWe(発電端効率24%)が得られる。本エンジンは,太陽熱発電のみならず,ポータブル発電機やCHPユニットなどの用途にも供されている。図6には米国INFINIAにより開発された3kWe級発電システムを示す。その高さは6.4m,集光部の直径は4.6mであり,エンジンには新たに開発した3kWe級フリーピストンエンジン発電機を用いている。INFINIAは本システムを2008年末より1,000基製造する準備を進めている。

10kWe級Dish/Stilring Eurodishシステム

図5 10kWe級Dish/Stilring Eurodishシステム*4

3kWe級solar dishシステム

図6 3kWe級solar dishシステム*5

1.3 バイオマス燃焼発電システム

地球温暖化対策の一つとして木質バイオマスを燃料としたエンジン発電機の用途開発が欧米で盛んに行われている。一例として,オーストリアBIOS BIOENERGY SYSTEMのバイオマスボイラと35kWeスターリングエンジン発電機が設置されている様子を図7に示す。このエンジン発電機はバイオマス燃焼用に開発されたデンマークStirling Denmark製で4気筒複動タイプである。同システムは,バイオマス発生熱量291kWthがエコノマイザ側146kWthとスターリングエンジン側140kWthに分離され,エンジン発電機により35kWeの電力を得るとともにエンジン廃熱の内105kWthならびにエコノマイザ側110kWthの合計215kWthを熱回収している。その総合効率は86%程である。本エンジンは,東京・あきる野市の温泉施設「瀬音の湯」において地域から出る製材所の残材を用いたボイラと組み合わせて施設への熱源および電力を供給するために利用されている。

BIOS BIOENERGY SYSTEMのバイオマス燃焼発電システム

図7 BIOS BIOENERGY SYSTEMのバイオマス燃焼発電システム*6

図8にはドイツSUNMACHINEの3kWe級木質ペレット燃焼発電ユニットを示す。本ユニットの右側がペレット燃料のホッパー(7.5~14.9kW),左側がスターリングエンジンである。本エンジンの作動ガスには33barの窒素が用いられ,その回転数は500~1,000rpmである。

SUNMACHINEの3kWe級ペレット燃焼発電ユニット

図8 SUNMACHINEの3kWe級ペレット燃焼発電ユニット*7

図9に示す(株)スターリングエンジンのST-5エンジン(米国STI)が,バイオマスのみならず食物残渣や可燃ゴミの焼却熱により発電・給湯を行うことを目的に日本国内でライセンス生産されている。エンジン性能は,おが屑を燃料とした熱入力(38kW)に対して発電出力3kWe(発電端効率10%程)そして熱供給10kWthが得られる。このエンジンは,すでに8台生産され,本年度は30台程度の生産が計画されている。このエンジンの特徴は,作動ガスに大気圧空気の使用にあり,自己過給によりそのガス圧力は5気圧まで昇圧されるので,作動ガスとして水素やヘリウムなどの高圧ガスを充填する必要がない。

(株)スターリングエンジンのバイオマス燃焼発電システム

図9 (株)スターリングエンジンのバイオマス燃焼発電システム

おわりに

スターリングエンジンはこれまで特殊用途での利用が主であったために量産されることはなく,その高価格が普及を妨げていた。しかし,温暖化防止の高まりとともにエネルギーの有効利用ならびに再生可能エネルギーの利用を目的にスターリングエンジンを用いた一般家庭用コージェネレーション(CHP)ユニット,太陽熱発電システム,そしてバイオマス燃焼発電システムの導入が開始されている。これらの導入が盛んになれば,スターリングエンジンの量産化が行われるとともにコストダウンが図られ,さらなる用途への展開が予想される。

 

<参考文献>
*1 http://www.whispergen.com
*2 http://www.ent.ohiou.edu/~thermo/me321/quiz.info/StirlCogen/StirlCogen.html
*3 http://www.stirlingenergy.com
*4 http://www.sbp.de/en/fla/mittig.html
*5 http://www.infiniacorp.com/main.php
*6 http://www.bios-bioenergy.at
*7 http://www.sunmachine.com

 

こちらもどうぞ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です