ギヤ油の省エネルギ性はどのように確かめるか | ジュンツウネット21

ギヤ油による省エネルギ性の評価は,取り扱いが簡単な実験室的摩擦摩耗試験による摩擦係数の測定から実機評価まで,いくつかの方法がありますが,これらの評価方法について,測定例を含めて紹介します。

ギヤ油の省エネルギ性はどのように確かめるか

解説します。

1. はじめに

オイルショックを契機に省エネルギ対策の検討が始まりました。産業用機械では消費電力の削減,自動車では省燃費を目標に省エネルギ型潤滑油の開発が進められ,省エネルギ効果をあげています。歯車の伝達効率を向上させるには,(1)低粘度化やマルチグレード化(高粘度指数化)によるギヤ油の撹拌抵抗の低減,(2)油性向上剤や固体潤滑剤などのフリクションモディファイヤ(FM:摩擦調整剤)の添加による歯車のかみ合い摩擦損失の低減が検討され,実用化されています。

(1)は,実用性能の把握が比較的容易な自動車用手動変速機油において,実用化が進んでいます。低粘度化によって油膜厚さが減少し,潤滑性に悪影響を及ぼすことがありますので,十分に潤滑性との関係を考慮する必要があります。

(2)は,自動車の終減速機油や工業用ギヤ油の分野で,実用化が進んでいます。FMとしては,有機モリブデン(Mo)化合物,固体潤滑剤であるグラファイトやMoS2などが応用されています。

また,合成系潤滑油(ポリ‐α‐オレフィン,エステル,ポリアルキレングリコール)は,それらと同一粘度の鉱油に比べ,高粘度指数でかつトラクション係数が小さいため,省エネルギ性を有しています。ポリアルキレングリコールは,伝達効率の低いウォームギヤによく応用されています。

ギヤ油による省エネルギ性の評価は,取り扱いが簡単な実験室的摩擦摩耗試験機による摩擦係数の測定から実機評価まで,いくつかの方法があります。以下,これらの評価方法および結果について紹介します。

2. 実験室的評価

(1)摩擦摩耗試験機

FMの選定や添加量に関し,おおまかな検討を行うときよく用いられ,LFW-1やSRV試験機などが使用されています。

(2)発生熱量計測式

摩擦損失のほとんどが熱に変換されることを利用し,損失量を発生熱量として検出する方法です。装置の精度などの影響を受けない温度計測のため,測定精度が高いことが特長です。本方式には直接式と間接式があり,直接式としては油浸法があります。(図1*1)。この方法は,無負荷運転でヒーター過熱したときのギヤ油の温度上昇と負荷をかけて一定時間運転した場合の温度上昇とを比較し,対応するヒーター電力から摩擦損失を求めます。表1*2に測定例を示します。有機Mo化合物による温度上昇抑制効果,すなわち摩擦低減効果が認められています。

油浸法試験装置(直接式)
図1 油浸法試験装置(直接式)*1
表1 油浸法による温度上昇測定結果*2
 
S-P系
S-P系+有機Mo
1回
23.15
22.75
2回
23.05
22.70
3回
23.25
22.65
4回
23.15
22.60
5回
22.90
平均
23.15
22.72

○試験油はともにISO VG100
○表中の数値は試験開始1分と12分後の温度差(K)

図2*3には,間接式の例として,自動車の手動変速機や終減速機を断熱した水タンクに入れ,熱平衡に達した時点における水タンク出入口水温差と冷却水量から損失を求める方法を示します。直接式の油浸法は,歯車のかみ合い摩擦損失のみの測定ですが,本装置は終減速機全体の損失を測定できます。しかしながら,上記両方式とも,歯車のかみ合い摩擦損失が一定になるところで測定するため,ギヤ油温に対して歯車のかみ合い摩擦損失が変化する場合への適用は難しくなります。

間接式の試験装置
図2 間接式の試験装置*3

以上の方法に対し,JARI(日本自動車研究所)で開発された拡大油浸法*4は,実機手動変速機内にヒーターとギヤ油温計測器を取り付け,負荷時と無負荷時の時間に対するギヤ油温度上昇率から歯車のかみ合い摩擦損失を求める方法です。この方法では,ギヤ油温度や負荷による影響を調べることができます。

(3)動力循環式

動力循環式歯車試験機が使用され,入力されるモーターの消費電力から,歯車の動力伝達損失を求める方法です。図3*5に試験装置を示します。負荷を与え,モーターで動力を入力します。この入力される動力は,この装置で失われる動力になるので,モーター消費電力から損失を求めることができます。このため,モーターの効率が測定精度に影響を与えます。本装置による測定例を図4*5に示します。鉱油系では,FM添加により摩擦損失が低減し,また,合成油系では,鉱油系より摩擦損失が小さくなっていることがわかります。


図3 動力循環式試験装置*5
動力循環式による摩擦損失測定結果
図4 動力循環式による摩擦損失測定結果*5

(4)動力吸収式

実機のウォームギヤやハイポイドギヤ(図5*6)を用い,入出力トルクの差から効率を求める方法です。この方法は簡単に効率を測定できるため,広く使用されています。本方法では,精度の良いトルク計が必要となります。ウォームギヤによる測定例を図6*7に示します。 グラファイト系ギヤ油は,S-P系ギヤ油より伝達効率が高くなっています。

ハイポイドギヤの効率測定装置
図5 ハイポイドギヤの効率測定装置*6
ウォームギヤ効率試験結果
図6 ウォームギヤ効率試験結果*7

3. 実機評価

以上示した実験室的評価に比べ,工場などで実機による評価を行う場合は,負荷などの変動があるため難しくなります。このため,実機評価は,負荷などの変動が少なく,比較的効率の悪い装置を選び,制度の良い電力計を用い,油温などの条件を供試油間でなるべく差がないようにして測定することが必要です。

実車評価は,シャシダイナモメータを用いたモード走行運転による燃費の測定や,複数の車両が路上を走行するフィールドテストによる燃費の測定が行われています。測定例としては,手動変速機油をSAE90からマルチグレードSAE75W-90にすることにより,EPA(アメリカ環境保護庁)燃費が約1.5%改善された報告があります。*8

<参考文献>
*1. 矢田:日本機械学会論文集,38,313(1972) 2388.
*2. 古谷他:トライボロジスト,39,10(1994) 876.
*3. H.Katoh,et al:SAE Paper,830573(1983).
*4. 細井他:自動車技術会学術講演前刷集851(1985.5).
*5. 根本他:日本機械学会論文集,55,520(1989)3039.
*6. 松尾:潤滑,31,4(1986)260.
*7. K.Matsuo,et al:5th international Colloquium,5,4(1986).
*8. 秋山他:トヨタ技術,32,1(1982)7.

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