寒冷地における油圧装置(油温管理のコツ) | ジュンツウネット21

油圧装置の油温管理について解説します。油圧作動油は潤滑性やシール性を保つために,適度な粘性を備えています。作動油の粘度は油温によって変化します。システムの安定した作動を維持し,機器の寿命を維持するためにも作動油の粘度管理すなわち油温管理は重要です。

寒冷地における油圧装置(油温管理のコツ)

機械設備に油圧システムを使用しています。寒冷地のため,冬場などは機械を稼働させる時に油圧作動油の温度調整が必要なのですが,油温管理の方法について教えて下さい。
解説します。

ご質問の方の機械設備,油圧システムの具体的な内容がわかりませんので,一般的な内容としてお答えします。

1. なぜ油温調整が必要か 油圧作動油の油温調整が必要な理由

油圧作動油は潤滑性やシール性を保つために,適度な粘性を備えています。これは油圧作動油に必要な性能であり,ISOでは,37.8℃における粘度で作動油の粘度グレード表示しています。作動油の粘度は油温によって変化し,油温が低ければ粘度は高く,油温が高ければ粘度は低くなります。この粘度変化により油温機器,システムの性能は大きな影響を受けます。

1.粘度が高い場合
 油圧機器,配管における圧力損失が増大
 ・・・ポンプの吸い込み不良,出力低下,絞り部での流量減少,内部漏れ量の減少

2.粘度が低い場合
 油圧機器,システムにおける圧力損失減少
 ・・・内部漏れ増大による油温上昇,絞り部での流量増大,シール部からの漏れ増大,潤滑不良

作動油の粘度変化により,システムの制御流量が変化し機械の所定速度が変化します。油圧機器の内部漏れも変化し,漏れ増大で油温上昇がいっそう大きくなり,さらに内部漏れが多くなります。ポンプの吸い込み不良や潤滑不良等で油圧機器が破損したり,外部漏れが発生したりすることもあり得ます。したがって,システムの安定した作動を維持し,機器の寿命を維持するためにも作動油の粘度管理すなわち油温管理は重要です。油圧機器メーカのカタログにも,推奨作動油粘度が表示されており,少なくともその粘度範囲内で使用し,その油圧システムの設計温度に維持,管理することが重要です。

2. 作動油の温度管理

油温管理には,油温が高い場合に低くする,油温が低い場合に高くする機能を設ける必要があります。油温を低くする方法として,オイルクーラとオイルコンがあり,オイルクーラには水冷式と空冷式とがあります。水冷式は水を使用し熱交換器で作動油の熱を奪うもので,冷却水温と水量により交換熱量性能が変わります。空冷式は空気により作動油の熱を奪うもので,気温と風量で性能が変わります。

オイルコンはエアコンと同様で,エアコンが空気を冷却するのに対し,オイルコンは作動油を冷却します。周囲温度同調型と定油温型とがあります。周囲温度同調型は周囲温度が変化したら所定の差で油温も変化します……周囲温度と常に一定の差を保ちます。定油温型は周囲温度が変化しても油温は常に一定に保つものです。どちらを採用するかは,機械の要求により決まります。

クーラによる作動油の冷却には,タンクへの戻り配管にクーラを設ける方法と,冷却専用ラインを設けタンクの作動油を冷却する方法との,2つの方法が一般的です。タンクの戻り配管にクーラを設置する方法は,冷却専用ポンプを設ける必要がないので装置が簡単ですが,クーラ通過作動油流量が変化するとクーラの冷却性能は変化するので選定時注意が必要です。冷却専用ポンプを設けるとクーラ通過作動油流量ははぼ一定なので冷却性能は安定しています。また,この冷却ラインにフィルタを設けて冷却とフィルトレーションの両方を行うと作動油の管理としていっそう良好です。

オイルコン式では冷却管をタンクに浸漬する方式とタンクから作動油を専用ポンプで冷却部へ供給する方式があります。タンク浸漬式ではタンク内作動油が循環していて冷却された作動油が全体と交じり合いやすくなっていることが必要です。

油温が低い場合に高くする方法としてヒータを設ける方法があります。ヒータには発熱部が作動油に浸る投げ込み式,タンク側面に貼り付けるパネルヒータ,周囲の空気を暖めることでタンク,機器等を暖めるスペースヒータ等があります。投げ込み式の場合,発熱部の単位発熱量が大きいと作動油が局部的に焼け作動油の劣化を早めることがあるので,単位発熱量の小さいものを採用するのが望ましいでしょう。さらに,ヒータを使用せず,次項で述べるポンプを使用してヒーテングする方法もあります。

3. 寒冷地での油温管理

寒冷地での冬場の油圧装置の作動には,必要以下に油温を下げないようにすることが重要です。

(1)ヒータによる温度管理

ヒータとサーモスタットとを使用して所定温度範囲に油温をコントロールします。すなわち,下限油温まで温度が低下したら,サーモスタットの信号でヒータが入り,所定温度の上限に達したら,ヒータを切ります。これを自動的に繰り返すようシステム構成することで所定温度範囲に保つことができます。

(2)ポンプによる温度管理

定吐出ポンプを使用した油圧装置の場合,一般にリリーフ弁が安全装置として設けられています。このリリーフ弁を2圧制御し,油圧装置を使用していない場合は低圧(たとえば,2MPa程度)に設定し,油温が下限油温まで低下したら,サーモスタットの信号でポンプを駆動し,吐出油をリリーフ弁からタンクへ還流させます。この油は加熱されているのでヒータと同様の効果を持ちます。油温が所定の上限まで達したら,サーモスタットの信号でポンプを停止します。これを自動的に繰り返すようシステム構成します。

(3)アクチュエータとタンク間の配管内作動油の昇温

(1),(2)項での温度管理ではタンクの油温を管理していますが,タンクからシリンダやオイルモータまでの配管内の作動油については管理していません。この状態で作動させるとアクチュエータは低温の作動油で動かすことになり,速度が遅い,停止位置がずれる,1サイクル時間が長い等の問題が起こります。

その対策として,タンク油温度管理と併行して下記を行うと効果的です。

1.実際に装置を作動させる前に,数回ドライサイクルで作動させ,配管内の作動油温を上昇させその作動回数は装置,配管長さ等で一概に言えないので,実際に作動させて確認して回数を決めます。

2.大型油圧装置等で,タンクとは別にアクチュエータ近くにバルブスタンドを配置しているような装置ではタンクとバルブスタンドとの間の配管内作動油温を上げることが重要です。この場合,バルブスタンド内に圧力ラインとタンクラインとをバイパスする弁を設け,実際の作動前にこの弁を作動させ,ポンプ吐出油をバルブスタンド内でタンクラインに流し,タンクからバルブスタンドまでの配管油温を上昇させます。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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