油圧エレベータ作動油の選定と潤滑管理 | ジュンツウネット21

油圧エレベータ作動油の選定と潤滑管理について解説します。油圧エレベータは,作動を良好に保つため,エレベータの使用条件や使用環境等を考慮して,採用する作動油を選定する必要があります。また,作動油はその管理方法により,作動油の性能維持に大きな差が出,油圧機器,装置の性能,寿命に大きな影響を与えます。

油圧エレベータ作動油の選定と潤滑管理

油圧エレベータに使用される潤滑剤(油圧作動油)とその潤滑管理の方法ついてご教示下さい。
解説します。

油圧を利用した装置のひとつとして油圧エレベータがあります。エレベータの作動を良好に保つため,エレベータの使用条件(エレベータの種類,使用頻度)や使用環境(周囲温度,湿度,粉塵)等を考慮して,採用する作動油を選定する必要があります。

また,作動油はその管理方法により,作動油の性能維持に大きな差が出,油圧機器,装置の性能,寿命に大きな影響を与えます。ここでは,作動油の選択と管理のポイントを簡単に説明します。

1. 作動油と管理で考慮すべきエレベータの使用条件,環境

エレベータ用作動油の選択のポイントは油温変化であり,管理のポイントは油温変化と周囲環境です。すなわち,油温が変わると作動油の粘度が変わり,これによりエレベータ弁の性能,ポンプの性能が変化します。高温で使用する場合は高粘度作動油,低温で使用する場合は低粘度作動油,油温変化が大きい場合は粘度指数の高い作動油を選定します。作動油管理では油温変化が大きくならないようにすることと,定期的に作動油の性状調査をし,特に汚染度,水分の管理をします。

油温変化に影響を与える項目を次に示します。

(1)油圧エレベータの種類

油圧エレベータは制御方式から大別して,弁制御式,インバータ制御式およびこれらの折衷式(ハーフインバータ式)とに分けられます。このエレベータの種類により,作動油の油温上昇に大きな差があります。表1にエレベータの種類と油温上昇について示します。

表1 エレベータの種類
制御方式
制御方法
油温上昇
弁制御式 籠の走行パターンをエレベータ弁で制御
上昇:ポンプ運転
下降:自重下降
大きい
上昇作動での加減速時の余分なポンプ吐出量と下降時の自重エネルギは熱に変換されてタンクへ還流する。
インバータ制御式 籠の走行パターンをポンプの回転数制御で行う
上昇,下降ともポンプ運転
下降:回生運転
極めて小さい
上昇作動は必要流量分のみポンプから吐出し,下降は回生運転で,一般には回生エネルギを空中放熱させるので油温上昇は極めて小さい。
折衷式(ハーフインバータ式) 籠の走行パターンをエレベータ弁で制御
上昇:ポンプをインバータで運転
下降:自重下降
大きい
上昇時弁で制御する流量より若干多めにポンプから吐出するようインバータで回転制御するので弁制御式より発熱は若干少ないが,下降は自重下降で弁制御に同じ。

インバータ制御式は油温上昇が極めて小さいのに対し,弁制御式,折衷式は油温上昇が大きいことがわかります。

(2)使用頻度

前項で述べたようにエレベータの種類によって油温上昇の程度が異なります。油温上昇の大きいエレベータで使用頻度が多いと短時間で油温が上昇するので,作動油の選定と管理に注意が必要です。

(3)使用環境

使用される環境にも注意が必要です。周囲温度が高い,あるいは低い,温度変化が激しい,湿気が多い,粉塵が多い等,使用環境により油温への影響,水分,異物の混入による作動油劣化への影響があるので使用環境を考慮して作動油の選定と管理を行う必要があります。

2. 作動油の選定

弁制御式エレベータや折衷式エレベータの性能はエレベータ弁で決定しますが,前述したようにエレベータ弁の性能は作動油の粘度で変わり,エレベータに一般に使用されているスクリューポンプは粘度変化で効率が変わります。表2に作動油の選定を示します。

表2 作動油の選定
選定条件
選定方法
備考
使用環境
使用頻度
周囲温度が極めて低い 少ない 油温上昇は少なく,低温で使用されるので,低温作動油,低粘度作動油を選定する 低温作動油
超低温作動油
VG15 等
通常の外気温 少ない 一般に使用されている粘度の作動油を選定する。 VG32,VG46 等
多い 油温が上がりやすいので粘度のやや高い作動油,粘度指数の高い作動油を選定する。 VG46,VG56
高粘度指数作動油
周囲温度が高い 多い 作動油を高温で使用することになるので粘度の高い作動油を選定する。 VG56,VG68 等

表の低温作動油とは寒冷地での使用を目的にしたもので,高粘度指数作動油とは,油温変化しても粘度の変化が小さい作動油です。いずれも,油圧作動油メーカで製品化されています。

3. 作動油の管理

作動油が劣化してくると,エレベータ弁の性能に影響を与え,ポンプやその他の機器類の寿命にも影響を与えます。作動油の一般性能,評価方法等については,専門の書籍が出ており,作動油メーカからも技術資料として入手可能なので,ここでは説明を省略します。

(1)油温管理

油温変化が少なければ,エレベータ弁は安定した性能を発揮し,ポンプの吐出量も安定します。したがって,使用頻度が多い弁制御式では油温を上昇させないよう,オイルクーラやオイルコントローラを設置することが好ましいでしょう。これにより,弁の安定した性能発揮とポンプの吐出量変化が少なくなり,作動油の劣化防止の一策にもなります。

(2)汚染度管理

作動油に異物が混入すると,弁の作動不良の原因になるうえ,異物により機器類の摩耗促進,作動油の劣化が促進されます。一般にエレベータ用油圧装置には,産業機械等の油圧システムに使用される高性能のフィルタは設けられていない傾向があり,配管のフラッシング等も行われていません。比較的流量が多く,使用圧力が低いため圧力損失を低くしたいのと価格が厳しい等の内容からそのような状況であろうかと推察しますが,性能安定,寿命を延ばすために,設置時のフラッシング施工,および,オフラインフィルタ等の設置でタンクの異物を捕捉することが必要です。また,湿気の多い環境や温度差の大きい場合は,空気中の水分が作動油に混入し,作動油劣化の一因ともなるので,タンクのドレン口から定期的に水抜きを行う必要があります。

(3)定期的な作動油性状チェック

定期的に作動油をサンプリングして作動油メーカに性状をチェックしてもらうことも必要です。劣化している場合は作動油の交換をする必要があります。また,汚染度が高いと弁の作動不良の原因にもなるので,作動油のフラッシング,交換等を行う必要があります。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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