潤滑油添加剤が自動車の燃費へ貢献している分野のうち,エンジン油への摩擦低減剤の添加によるものについて解説します。
添加剤と燃費の関係※
添加剤は自動車の燃費にどの程度貢献していますか。
解説します。
潤滑油添加剤が自動車の燃費へ貢献している分野としては以下の項目が挙げられます。
1)エンジンにおいてエンジン油の低粘度化によって危惧される摩耗等の不具合の防止。
2)エンジンにおけるエンジン油への摩擦低減剤の配合。
3)マニュアルトランスミッションおよびデファレンシャルギヤにおいてギヤ油の低粘度化によって危惧される摩耗,焼付き等の不具合の防止。
4)自動変速機において燃費改良のため採用された連続スリップロックアップ装置付トルクコンバーターにおけるシャダーの防止。
ここでは,2)のエンジン油への摩擦低減剤の添加による自動車の燃費への貢献について述べます。
(1)燃費に及ぼす潤滑油の影響の評価方法
自動車の燃費に及ぼすエンジン油の影響の評価方法には以下のものがあります。
1)国内10・15モードによるシャシダイナモメーター実車燃費評価
2)ASTM 5Car法によるシャシダイナモメーター実車燃費評価
3)ASTM Seq. VI燃費試験方法
4)ASTM Seq. VI-A燃費試験方法
5)モータリングによるエンジン駆動トルク測定法
6)机上摩擦試験
エンジン油の省燃費性能認定には,3),4)が各々GF-1,GF-2の要求性能に含まれているため広く用いられています。
(2)摩擦低減剤の種類
摩擦低減剤の種類には以下のようなものがあります。
1)非油溶性固体潤滑剤
- 二硫化モリブデン
- グラファイト
- フッ素系ポリマー
2)油溶性有機金属化合物
- モリブデンフォスフェイト
- モリブデンカーバメイト
3)油溶性無灰型
- リン系
- エステル系
- アミド系
- 硫黄系
最近は油の外観およびフィルタ閉塞の観点から非油溶性固体潤滑剤以外のものが主に用いられています。
(3)摩擦低減剤の効果
エンジン油への摩擦低減剤の添加効果については数多くの報告がありますが,その一部を表1,図1,2に示します。
表1 FMの添加が自動車の燃費に及ぼす影響:その1
(出典:ASLE 79AM2C1) |
図1 FMの添加が自動車の燃費に及ぼす影響:その2 試験方法:エンジンベンチ燃費試験 |
図2 FMの添加が自動車の燃費に及ぼす影響:その3 試験方法:エンジンベンチ燃費試験 |
これらの試験結果からエンジン油に摩擦低減剤を添加することにより,0.5~5%の燃費向上を図ることができるといえます。
しかし,摩擦低減剤の添加は摩耗防止性や分散性の低下を生じることがあり,その使用においては充分な注意が必要です。
※Q&A第2集発刊時点