洗浄とは,被洗浄体の表面に付着している汚染,または被洗浄体の内部に存在する汚れを,物理的,化学的な力で除去し,清浄な物質を得ることです。産業洗浄の目的と方法,高圧洗浄・化学洗浄の洗浄工法と使用機器,産業洗浄のはく離,ウォータジェットカッティングと水圧の関係などのついて解説します。
産業洗浄について ※
産業洗浄ということばを聞いたのですが,どういうものを指すのでしょうか。簡単に解説して下さい。
解説します。
1. 産業洗浄とは
洗浄とは,被洗浄体の表面に付着している汚染,または被洗浄体の内部に存在する汚れを,物理的,化学的な力で除去し,清浄な物質を得ることです。洗浄の目的は,製品の表面に付着している汚染(汚れ)を除去することにより美観を増し,より経済的価値をまし,現状の品質をそのままの状況で維持することであります。
2. 産業洗浄の目的と方法
機器,計器,プラントなどは長時間の運転により,その機能が著しく低下し,またはその機能が停止するにいたる大きな損耗をしていることがあります。洗浄をおこなうことによりその機能を元に戻し,正常な運転を期待することができます。さらに一定期間運転することにより,予防処理的な判断のもとで洗浄をおこない,危険個所を未然に探し出し,不測な事故により突発的な運転休止の事態を未然に防ぎます。洗浄の機構にはいくつかの段階があり,そのすべて,またいくつかの組み合わせによって,被洗浄体から汚染(汚れ)を取っていきます。
被洗浄体をウェットな状態におくことにより,汚れが膨潤し脱落しやすい状況になり,界面活性剤,アルカリ性溶液を加え,温度,圧力を加えれば,よりよい効果を得ることができます。高圧水洗浄法でも,最初に被洗浄体を低圧水で湿潤させることがあり,湿潤した汚染(汚れ)が,被洗浄体との間にすきまを作り,わずかな衝撃で汚染(汚れ)がはく離する工程です。汚染(汚れ)を被洗浄体から脱落または,溶解するステップで,化学薬品を使用する時は,コロイド状やイオン化して溶液とともに排出されます。高圧水洗浄では,水の衝撃力によって,汚染(汚れ)は細断されてはく離脱落します。
汚染(汚れ)物質の再付着を防止するステップで,脱落した汚染(汚れ)が,化学的,電気的な作用で被洗浄体に再付着することがあるので,その防止策を講ずることが必要です。高圧水洗浄法では,油脂を含んだ物質の再付着があるので,この場合は,界面活性剤などを併用することにより防止が可能です。汚染(汚れ)を被洗浄体から完全に排出することが最終のステップです。障害物やベンド部分などにははく離物質が停滞することが多いので,これらに対して具体的な処置を講ずることが必要であります。
3. 産業洗浄の対象
その分野のおもなものをあげると,化学工業におけるミキサー内の残留の除去,焼結部や熱交換器の内外部,遠心分離機,ろ過装置などです。火力発電所のボイラーやチューブ内に堆積したカスの除去,セメント工業の生産過程では,ロータリキルン内のスラッグとリングの除去,機械工業の鋳造工場では吹きあがった鋳物の砂落し,さらに機械加工機のバリ取,とくに複雑な加工面に対して効果を発揮します。
洗浄対象装置および機器を石油精製工場でみてみると,加熱炉,蒸留塔,反応塔,分離槽,熱交換器,凝縮器,冷却器,貯槽配管とあらゆる装置におよんでいます。
また,下水道管の洗浄があります。この管清掃に使用されるのが高圧洗浄法です。全国の大部分の都市でこの工法が大々的に採用されており,下水道管洗浄車として,洗浄に必要なすべての機材が架装されています。
下水道管の洗浄は,プランジャーポンプで加圧され発生した高圧水が,洗浄ホースの先端に取り付けた,高方斜噴射孔をもったノズルより噴出することにより,下水道管の汚泥を撹拌しながら前進して前方マンホールまで進めます。ここで停止させて,今度はノズルを汚泥のつまり具合や堆積物の種類に応じて,ゆっくり巻き戻すことにより,手前に汚泥を集めて下水道管の中を洗浄します。
そのほか,集合住宅(団地,社宅,マンション,事務所)ビルディングなどの中高層ビル内は,受水槽,揚水管,給水管,雑用水排水管,雑用水槽,汚水槽,蓄熱槽,下水道管,雨水管,雨水ます,汚水ます,などがあり,高圧洗浄法が使われています。この中でも日常生活に直接影響があるのは雑用水排水管で,この管は炊事場,浴室,洗面場の使用済みの汚水を外部に排出するための配管で,この管内には炊事場より米,魚,肉,油など不要なものが汚れた水とともに流され,グリス状になり管内に付着し,月数の経過とともに,汚物の層が厚くなり,管の内径が細くなり,流れが阻害されます。この汚物を除去する方法も高圧洗浄法が用いられます。
4. 高圧洗浄・化学洗浄の洗浄工法と使用機器
高圧洗浄機は,往復ポンプ(プランジャーポンプ),ポンプを動かす原動機,水タンクで構成されていて,アタッチメントとして,洗浄ホース,ノズル,噴射ガン,フードバルブが用いられます。
噴射ガン型洗浄は,噴射ガンをノズルマンが直接小脇に抱えたり,肩に担いだ姿勢で洗浄します。複雑な形状をした面に固着したスケール,油汚れした設備の外面洗浄,床,船舶の側壁,建物の壁,水槽,タンクの内外面洗浄,建設機材に付着したモルタルの除去,または油分を含んだスケールについては,高圧水に洗剤(溶剤)を混入するか温水を用いるとより効果的です。
フレキシブルホース型洗浄は,フードバルブに非常に柔軟で軽量な洗浄ホースを接続し,その先端に後方噴射ノズルを取り付けます。後方に噴射する高圧水の反動力により,ノズル自体は前方へ移動します。フレキシブルホースは,この力でホースともども管内を自走し,ある一定距離自走したノズルを人力が引き戻す際,はく離したスケールを手前へ引き寄せ管外へ排出します。小口径配管の内面洗浄および熱交換器のチューブ洗浄に利用されています。
化学洗浄は,設備,機器を取り外さないで洗浄するのに用いられ,火力発電所の大型ボイラを循環法で行います。循環法は薬品を溶解し,ポンプを利用して被洗浄体に送り,強制的に溶液を循環させ付着物を溶解する方法です。
5. 産業洗浄のはく離,ウォータジェットカッティングと水圧の関係
高圧水の高圧水区分の定義は,現在法的規制はないが,取り扱いによっては高度の危険性をふくんでいるので,日本洗浄協会で業界の自主規制として,低圧0kgf/cm2~10kgf/cm2,中圧10kgf/cm2~70kgf/cm2,高圧70kgf/cm2~300kgf/cm2,超高圧300kgf/cm2~1000kgf/cm2,超々高圧1000kgf/cm2以上としています。床,自動車の洗浄,被洗浄対象物の表面に汚れが堆積している状態の洗浄は中圧「洗う」,10PS位の出力のもので温水,溶剤混入もできます。被洗浄体と汚れが化学的に結合した状態で,金属の表面に発生したさびの除去は高圧,超高圧は「はく離」,大型では300PSの出力のものもあります。ウォータジェットカッティングは,合成ゴム,合板,アスベストセメント,紙,プラスチックなどを1000kgf/cm2~8000kgf/cm2の超々高圧「切断」で増圧機を用いた水だけではなく高分子粒などを混入させます。
「産業洗浄技能士」資格の取得方法
産業洗浄は技能検定試験で(高圧洗浄作業),(化学洗浄作業)の二つがあります。この技能検定試験に合格した人に「産業洗浄技能士」の称号が与えられます。
受験資格は中学卒業し3年以上,産業洗浄の実務経験が必要で試験は学科試験と実技(作業)試験の二つがあり両方に合格しないと「産業洗浄技能士」の称号が得られません。この試験の実施は都道府県職業能力開発協会が行っており,日本洗浄協会では,受験者の方を対象とした講習会を開催しています。
※Q&A第1集発刊時点