自動車用エンジン油のオイルフィルタの寿命 | ジュンツウネット21

自動車用エンジン油のオイルフィルタの寿命 について解説します。内燃機関のオイルフィルタは,遠心式または分離式,表面式または端面式(ろ紙式,金網式,その他),デプス(depth)式または吸収式などがあります。自動車用オイルフィルタは,ろ紙式がほとんどで,エレメントの寿命は,1万km毎交換が標準になっています。

自動車用エンジン油のオイルフィルタの寿命

自動車のエンジン油はエンジンを清浄に保つため,絶えずオイルフィルタでろ過されて循環使用されていますが,このオイルフィルタにはどのような種類があり,使用期間はどれくらいでしょうか。自動車の車種によって違いはあると思いますが,わが国の代表的メーカのものを取り上げて説明してください。
解説します。

オイルフィルタの使用法には,フルフロー式とバイパス式があります。フルフロー式は,オイルポンプから吐出される油の全量をろ過する方式であり,オイルギャラリの油圧を調整するために,普通フィルタ前にリリーフバルブを設けて,一部ろ過しない油をオイルパンにもどしています。また,エレメントが目詰まりを起こしたり,コールドスタートの場合を考慮してフィルタにセーフティバルブを設けています。

バイパス方式は,オイルポンプからの油の5~10%をろ過しますが,残りの90~95%の油はろ過されずに摺動部に送られるため,フルフロー式より劣ります。最近の自動車エンジンではこの方式は単独ではほとんど採用されなくなりました。

内燃機関のオイルフィルタとしては各種のものが使用されていますが,大別すると―

(1)遠心式または分離式 (2)表面式または端面式(a.ろ紙式 b.金網式 c.その他) (3)デプス(depth)式または吸収式 などがあります。(図1図2)。

遠心式フィルタ構造図
(a)遠心式フィルタ構造図
ろ紙式オイルフィルタ(表面式)
(b)ろ紙式オイルフィルタ(表面式)
多板式,ごみをときどき落とす方式の油ろ過器(端面式)
(c)多板式,ごみをときどき落とす方式の油ろ過器(端面式)
図1 代表的な内燃機関用オイルフィルタ
ロールドティッシュペーパ形
(a)ロールドティッシュペーパ形
コットンマットフィルタ
(b)コットンマットフィルタ
二層式円筒こう配フィルタ
(c)二層式円筒こう配フィルタ
図2 デプス式オイルフィルタのエレメント

このうち,ろ紙式は多くの長所が認められ,現在の自動車用エンジンのオイルフィルタの主流となっています。ろ紙は性能向上と寿命向上のため,材質,抄紙法に特別な配慮を払い,0.5~0.7mm厚さでフェノール樹脂加工を行い,図3のようなアコーディオンプリーツ状にひだ折りして,ろ過面積を大きくしています。最近の油は清浄分散性能が改良されており,カーボン,SiO3摩耗粉などは比較的凝集しにくくなり,油中に分散状態で存在しているため,一種類の組成のろ材では,目詰まりを起こしやすいか,ろ過効率が低いかのどちらかの欠陥が生じます。

ろ紙式フィルトエレメント
図3 ろ紙式フィルトエレメント

この改良として,図4に示す,しま状粗密ろ紙があります。コットンリンタと比較的太い繊維径のレーヨンを混合した粗ろ過部と,リンタよりなる密ろ過部とを抄造機で同時に抄き合わせたもので,粗い異物は粗のろ過部,細い異物は密のろ過部で捕集して,各ろ層の気孔率の急激な減少を防止しながら,効率の向上を図っています。

しま状粗密ろ紙
図4 しま状粗密ろ紙

金網式はオイルストレーナ,燃料ポンプストレーナなどの簡単な箇所に多用されていますが,微細な粒子を除くことは不可能です。端面式は構造にもよりますが,本質的にはろ過すきまが比較的粗く,金網式と変わりません。

遠心式は油を遠心分離機に入れ,固形物と水分を除去するもので,3μm程度まで分離できます。特長は目詰まりがない,油圧がかかっても破損しないなどですが,一方,高回転を与える必要があり,ろ過効率が低いなどの欠点もあります。

デプス式は,異物がろ材に衡突して捕集される機会をふやして効率をあげる形式で,ろ材間の気孔径は比較的大きくても,ろ過層を厚くすることにより,ろ過効率のよい寿命の長いエレメントを作ることができます。欠点は通路抵抗の大きいことです。

なお,最近の傾向は,トラックなどのディーゼルエンジンの油中のすすを除く方法として,図2(a)に示すようなロールドティッシュペーパ形のオイルフィルタを普通のろ紙式フィルタと併用して,バイパス回路で用いることが多くなって来ていることです。自動車用オイルフィルタは,ろ紙式がほとんどですが,表1に示すろ紙面積のものが一般の自動車用に用いられています。エレメントの寿命は,ほとんどが1万km毎交換が標準になっており,特殊なものでは,2万km毎交換のものもあるし,また1万km毎以下のものもあります。

表1 自動車用オイルフィルタのろ過面積
エンジン容積
ろ過面積
360cc~1000cc
0.081m2
1000cc~1600cc
0.102~0.150m2
1600cc~2000cc
0.130~0.230m2
2000cc以上
0.150~0.40m2

オイルフィルタの寿命は図5に示すとおり油抵抗増加で表すことがJIS(D1615)に定められています。大体の寿命は抵抗増加が1kg/cm2を上回った時点と考えるのが,一般的です。

オイルフィルタの寿命とろ過効率
図5 オイルフィルタの寿命とろ過効率

アーステック



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最終更新日:2021年11月5日