潤滑油のろ過特性 | ジュンツウネット21

潤滑油のろ過特性について解説します。潤滑油を長期にわたって使用するためには汚染粒子の除去が大きな課題になりますが,そのためにはフィルタによるろ過に適した潤滑油か否かが問題となります。潤滑油の評価をろ過特性試験によって行うことは有効な方法の一つであると考えられます。

潤滑油のろ過特性

潤滑油を機械設備に障害なく長期にわたって使用するには,潤滑油のろ過が必要だと聞きましたが,ただフィルタでろ過をするだけで良いのでしょうか。ご教示下さい。
解説します。

潤滑油は長期間使用すると,多かれ少なかれ劣化が生じます。また金属粉などが混入することもあります。ベアリングに使用される潤滑油を清浄に保つためには高性能フィルタによるろ過を行うことがもっとも有効です。

現在各製造業界では,バブル最盛期の折り多大な設備投資を行ったため,市場が製品過剰となり,現状設備での製造コストの引き下げが課題となっています。そのために,下記の3つを行わなければなりません。

(1)製造のスピードアップ
(2)スピードアップに耐え得る原材料の開発
(3)製造機械のメインテナンス時間の短縮

この3つを解決するためには相反する問題をクリアしなければなりません。特に製造スピードを上げるとベアリングの摩耗が進み,頻繁なメインテナンスや部品の交換が必要となります。スピードアップとメインテナンス時間の短縮を同時に行うためには潤滑油の清浄度を向上させることがもっとも効果的な方法なのです。

1. SKF理論による清浄度と機器寿命の関係

世界最大のベアリングメーカーであるSKFは「ベアリングの寿命は潤滑油の清浄度に大幅に影響される」として,潤滑油が清浄であり,ベアリングに加わる負荷がベアリングの耐荷重値以下であれば,ベアリングは疲労しないという新理論を打ち立てています。

さらにSKF汚染係数ζc(0<ζc≦1)という係数を導入して,潤滑油の汚染により寿命に影響があると発表しています。

   ζc=0:非常に汚染されている
   ζc=1:非常に清浄である

図1に示すように,潤滑油が非常に汚染されている状態(ζc=0.05)に比べ,清浄な状態(ζc=1.0)の軸受は約50倍も長く使用できることがわかります。

軸受疲労寿命と汚染係数
図1 軸受疲労寿命と汚染係数

2. 潤滑油のろ過特性試験方法

図2で示したのは,潤滑油が高性能フィルタによるろ過に適したものであるかを評価する試験装置です。試験は評価する潤滑油を試験フィルタへ流した時,一定圧力に達するまでの総ろ過量を測定するものです。このろ過量をmLの単位で表し,「ろ過特性値」と定義します。ろ過特性値が高いほど長期にわたってフィルタによるろ過が可能であることになり,汚染粒子によるベアリングの破損を防ぐことになります。

ろ過特性試験装置
図2 ろ過特性試験装置

ろ過特性によるフィルタの評価は

第1段階:試験油そのもののろ過特性値の測定
第2段階:加熱下で試験油に水分を加えた水分添加油のろ過特性値の測定

の2段階の試験によって行います。潤滑油を長期にわたって使用するためには汚染粒子の除去が大きな課題になりますが,そのためにはフィルタによるろ過に適した潤滑油か否かが問題となります。この観点から潤滑油の評価をろ過特性試験によって行うことが有効な方法の一つであると考えられます。

3. 試験結果

市販されている代表的な潤滑油7種類を前出図2の試験装置を用いて分析した結果を表1にまとめます。評価については,1976年にアメリカのPall社で確立した試験結果の蓄積から得た経験値を基準とし,ろ過特性値が2000を超えた潤滑油を「良」とし,2000未満のものはフィルタによるろ過特性に適さない「劣」と記します。また,水分添加前,添加後の各試験油のデータを図3に示します。

表1 ろ過特性値測定結果
試験油No.
処理状態
最終差圧 kgf/cm2
最終ろ過量 mL
ろ過特性値
評価
A水分添加前
1.76
789
789
水分添加後
2.00
<10
<10
B水分添加前
1.76
634
634
水分添加後
1.78
<10
<10
C水分添加前
0.54
2012
2012
水分添加後
0.73
2082
2082
D水分添加前
0.59
2046
2046
水分添加後
1.10
2000
2000
E水分添加前
1.75
1072
1072
水分添加後
1.75
258
258
F水分添加前
1.75
1420
1420
水分添加後
1.82
360
360
G水分添加前
0.95
2000
2000
水分添加後
1.78
590
590
H水分添加前
1.80
85
85
水分添加後
1.90
240
240
製紙用潤滑油のろ過特性試験結果
図3 製紙用潤滑油のろ過特性試験結果

(1)各試験油の特長

水分添加前での比較では,ろ過特性値が2000を超える潤滑油は7種中の3種でした。試験油Hにおいては高性能フィルタによるろ過に全く適さないという結果がでました。このため,実際に設置した場合,フィルタはすぐに目詰まりして,メインテナンス時間を増大させてしまうと考えられます。同じ潤滑油であっても各試験油に使用されている添加剤は異なっていると考えられるので,ろ過特性評価において大きく結果が異なったものと考えられます。

次に水分添加後では,第1段階での新油の試験で2000を超えていたのは3種でしたが,水分と熱を加えた結果「良」の判定は2種に減りました。全般的にろ過特性値は低下しており,添加剤と水分が反応したと思われる油中の析出物も観察されています。

4. まとめ

以上の実験結果から,各社の潤滑油のろ過特性値には大きな差があり,同一用途で開発市販されていても,各潤滑油メーカーの使用している添加剤の相違によって高清浄度を保つのに適さない潤滑油のあることを確認できました。

高性能フィルタを設置しても,ろ過特性の評価を行わずに潤滑油を使用した場合に頻繁なベアリングの損傷,潤滑油の交換,フィルタの早期目詰まりを生じる可能性があり,当初の目的であるスピードアップとメインテナンス時間の短縮の達成は困難となります。潤滑油の使用にあたっては,ろ過特性値が良いものを選定し,高性能のフィルタを設置することが重要な点になるでしょう。

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック


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