設備診断などでフェログラフィが用いられ,摩耗粒子やその粒子が発生してきた部位の摩耗量や摩耗形態を診ることができるそうですがその原理や効果などご教示下さい。
解説します。
フェログラフィとは油中の摩耗粒子を磁石を使って捕集し,その粒子の形状から発生部位の摩耗量や摩耗形態を診るシステムのことです。
現在は主に設備診断法の1つとして軸受や減速機などの故障予知に効果を発揮しています。
ほかに故障解析や潤滑剤の性能評価などにも使われます。
1. 磁石で捕集
磁石をただ油中に放り込んでも粒子は捕集しにくいのですが,図1のように磁石の上方にたてかけたガラス板の上に油を溶剤とともに流すと簡単にしかも大きさ順に粒子が捕集できます。
ところで,軸受材などの磁性のない非鉄金属粒子や非金属粒子は磁石を使うフェログラフィでは無理だと思われがちですが,摩擦する相手材が磁性体であればある程度ガラス板上では捕集できます。
2. 摩耗粒子から故障を予知
2.1 大きい粒子は故障の前兆
異常摩耗が近づくと大きい粒子が特に増えるといわれますが,この点フェログラフィは大きさ順に粒子を分けられるため他の診断法よりも早く異常摩耗が発見できます(図2)。
実際には図1に示すようにガラス板上(定量フェログラフィ)またはプラスチックチューブ内(DRフェログラフィ)の2ヵ所に光をあてて測定した光学濃度を使って診断します。
図2 摩耗過程と診断法 |
2.2 特有形状の粒子も故障の前兆
疲労や腐食摩耗などの形態的な異常摩耗から発生してくる粒子は表1に示すようにそれぞれ固有の形状を示しています。従って,粒子が形態的に類別できれば,それらが発生してきた部位の摩耗形態が類別でき,さらに摩耗状態が推測できます。
表1 粒子形状と発生形態の例
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3. 軸受や減速機に有効
図1に示すように異常摩耗を粒子の量から診るには機械より油を採取し,DRフェログラフィや定量フェログラフィで測定した光学濃度が定常濃度を50%越えたところで異常と診断すればよいことになります。
なお,オンラインフェログラフィは油の採取作業が省けますが,装置自体が高価です。
以上の定量はエンジンや歯車減速機の故障予知に有効です。
他方,粒子の形状から診るには2.2項で述べたように異常の形態の粒子を発見するだけで十分です。例えばラミナー粒子がころがり軸受油より発見されれば95%以上の確率で転動部に剥離がみられます。
このように,形状から故障を予知しやすい機種として軸受(ころがり,すべり),コンプレッサ,各種変速機などがあげられます。
なお,量的な異常が発見された場合図1中の点線で示したように分析フェログラフィを追加すれば異常の原因が明確になり,対策が立てやすくなります。