焼き付きは,過剰な摩擦がパッキンと軸との間で生じ,軸との接触面が高温になり,起こる現象です。
回転機器の運転初期に焼き付きが発生し,グランドパッキンが発煙した際の対策
回転機器の運転初期に焼き付きが発生し,発煙しました。対策を教えてください。
解説します。
初期運転時,軸との摩擦により,パッキンが焼き付きを起こし,発煙することがあります。焼き付きは,過剰な摩擦が軸との間で生じ,軸との接触面が高温になり,起こる現象です。
多くの回転用パッキンには,潤滑剤が含まれ,焼き付きを防止する働きをしていますが,パッキンの締付が強過ぎたり,DRY環境下(パッキンと軸との間に液体が介在しない状態)でパッキンを摺動させたりすることで焼き付きは発生しやすくなります。
(1)焼き付いた時は
ただちに運転を止めます。
パッキンの接面は数百度に達していることがあります。そのため,運転を継続すると,熱により軸やスリーブ表面へ大きなダメージを与え,復旧が困難になるケースがあります。
(2)運転を停止した後は
パッキンをすべて新品に交換します。
焼き付きを起こしたパッキンの接触面は多くの場合,硬化しており,継続して使用してもパッキンとして充分な性能が発揮できません。
(3)焼き付き対策
対策1:
締付を管理し,運転を開始します。運転開始時の流れを図1に示します。また,下記の手順により締付を行なうと焼き付きのリスクは大幅に解消されます。
図1 運転開始時の流れ |
○トルクレンチ等の専用工具を用いて,数回に分けて行い,一度パッキンをなじませます。
○ナットを緩めてから手締めで締め込みます。
<注意>強く締め付けたままスタートすると,焼き付きが発生します。
○漏れ量を見ながら少しずつ締め付け,回転機器に適した漏れ量に調整します(表1)。
参考)1回の締め付け量は,ナットの回転角で30°以下,締め付け面圧は,内部流体の1割増しを上限とします。
表1 適正漏れ量の目安
(注)標準漏れ量とは,シャフト径25mm,周速4.6m/sec,流体が水の場合 |
対策2:
軸との接触面に潤滑剤を塗布します。パッキンの内径側にグリース等の適当な潤滑剤を薄く塗布すると,始動がスムーズになり,軸と馴染むまでの潤滑性能を発揮します。
対策3:
熱放散性の高いパッキンを使用します(図2)。摩擦熱が蓄積されにくい炭素繊維系のパッキンを使用することで,焼き付きのリスクを回避することができます。
図2 パッキンの熱放散性比較 |