メカニカルシールは,回転軸にほぼ垂直な二つのシール端面を有する端面シールで,密封環,二次シール,ばね機構,ドライブ機構の4つの要素で構成されています。
メカニカルシールの漏洩未然防止(基本構造とシールの原理)
メカニカルシールの基本構造とシールの原理について教えてください。
解説します。
メカニカルシールの漏れ防止をするためには,次のことが必要です。
(1)メカニカルシールの基本構造とシールの原理を知ること。
(2)最適なメカニカルシールの選定をすること。
(3)適切なメンテナンスをすること。
メカニカルシールは,回転軸にほぼ垂直な二つのシール端面を有する端面シールで,密封環,二次シール,ばね機構,ドライブ機構の4つの要素で構成されています。図1にメカニカルシールの基本構造を示します。
密封環は,回転軸にほぼ垂直な二つの平滑,かつ超精密仕上げされたシール端面を持ち,互いにしゅう動しながら漏れを制限する働きをする最も重要な要素です。どちらか一方の環は,弾性部材のばね作用と密封流体の圧力を利用して軸方向に作動します。
二次シールは,密封環に装着され,固定環とメカハウジング,回転環と回転軸との間の密封を行います。Oリング,Vパッキン,ベローズなどがあります。
ばね機構は,ばね作用により密封環を押し,シール端面に初期の接触面圧を与える働きをします。流体圧力により,密封環が押されるまでの間,シール端面からの漏れを防止します。コイルスプリング,ベローズなどが代表的なものです。
ドライブ機構は,軸の回転を回転環に伝達し,固定環の回り止めを行います。ピン,クラッチ,セットスクリューなどが代表的なものです。ベローズシールのベローズもドライブ機構の働きをしています。
これらの要素で構成されたメカニカルシールで最も重要なのは,シール端面です。シール端面間には,図2に示すように流体膜が形成されています。
この流体膜により,シール端面の潤滑を行うと同時に,シール端面間の大気側近傍で流体膜を破断させながら運転され,流体の漏れを制限しています。
この流体膜が厚すぎるとすき間が大きくなるので漏れが多くなり,薄すぎるとすき間が小さくなりシール端面同士が接触して焼き付きや摩耗の原因となります。適正な流体膜の厚みは0.5~2.5μm程度と言われています。この適正な流体膜厚みを得ることがシールメーカーの最も重要なノウハウです。