グリースを増ちょう剤別に分類すると石けん型と非石けん型に分類され、非石けん型はさらに無機系、有機系に分類されます。各種グリースの特性表を参考にして潤滑条件に合う適切なグリースを選択して下さい。また、グリースの製造方法とグリースの種類,選択方法,管理方法について解説します。
グリースの種類と使用方法について
機械メーカーの指定に,リチウムグリースを使用すること,とありました。グリースにはどんな種類があり,どうやって使い分けるのですか。簡単なグリースの製造方法の解説とグリースの種類,選択方法,管理方法についてわかりやすく教えてください。
解説します。
従来グリースは,耐水性のあるもの(カルシウムグリース)と耐熱性のあるもの(ナトリウムグリース)が使い分けられていましたが,戦後,機械の発展に伴い耐水,耐熱両面に良好なグリースとして,ご指摘のリチウムグリースが作られ,これが産業の高度成長に従い広く普及しました。
現在では,潤滑分野の80%を満足させることができると考えられます。生産量から見ても米国では59.2%(1979年),日本では52.3%(1980年)であることから見ても,一般的に安心して推薦できるものなのです。
1.グリースの種類
グリースには各種のものがありますが,増ちょう剤別に分類すると表1のようですので,潤滑条件に従い選択して頂く参考にして下さい。
表1 各種グリースの特性
◎…優,◯…良,△…可,✕…不可 |
金属石けんを増ちょう剤とするグリースの製造方法は,けん化法と混合法に分けられます。いずれも,ベースオイルに増ちょう剤を適度に分散させるもので,その他に,潤滑性能を向上させるために各種の添加剤が添加され,また場合によっては着色剤を使うこともあります。
けん化法は,ベースオイル,脂肪酸,または油脂,アルカリを混合し,釜の中でけん化させて製造します。混合法はあらかじめ作った金属石けんをベースオイルと混合,分散して製造します。
以上が一般的方法ですが,工程中の加熱,撹拌,冷却等の操作が増ちょう剤の内部構造,分散度を支配します。例えば,冷却工程で,放置して冷却すると石けん繊維は長くなり,急冷すると短くなる傾向にあります。製造方法はグリースにより異なりますが,各グリースにほぼ共通するものを図1に示します。

図1
2.グリースの管理方法
《保管上の注意事項》
(1)屋内保管のこと
なるべく冷暗所に保管して下さい。グリースは潤滑油と異なり,酸化されやすいので,高温多湿をきらいます。屋外とくに直射日光に曝される場合はドラム缶中の空気の膨張,収縮により呼吸作用を起こし,水を吸収することがあります。止むなく屋外に貯蔵する場合は,グランドシートをかけたり,別製蓋をかけるようにして下さい。
(2)横倒し厳止
グリースは潤滑油と異なり半固体ですので,横倒しにしたり転がしたりすると,グリース中に気泡を巻きこみ,その泡は使用する際にぬけません。これがポンプ圧送の折の支障になり,グリースの酸化を促進します。
(3)保管中の油分離等
グリースは保管中または使用途中の容器内で油が分離してくることがありますが,多少であれば気泡の入らないように静かに撹拌し復元させて,使用して下さい。
《運搬上の注意事項》
(1)積卸しに注意してください
縦位置のまま積卸しして下さい。
(2)縦位置のままフォークリフト,ドラムポーター,クレーン等で移動し,運搬器具のない場合はドラムを20o位傾けてころがす方法をお推めします。
《使用上の注意事項》
(1)異物の混入は厳禁
イ.容器の天部をあけておかない。不完全なふたをしない。
ロ.ベアリングはよく洗浄し異物がないようにしてからグリースをつめる。
ハ.取扱者の不注意による,ウエス,砂,ゴミ,の混入を防ぐ。
ニ.グリースの取り扱いは,使用する容器,手,へら等清浄なものを使用する。
(2)加熱しないこと
加熱により,グリースは酸化劣化をうけ,耐久寿命が短縮します。また,通常のリチウム石けんグリースの場合,120℃以上の熱をうけると相変化を起し,180℃以上では溶解します。このような加熱をうけたのち室温に戻っても,初期の状態に完全に復元せず,グリース構造変化を起し,所定の性能をそこなう危険性があります
(3)異種グリースの混合
イ.同一石けん基グリースの場合,混合による性能低下の危険性は少ないが,できるだけ避けることが望ましい。
ロ.異なる石けん基グリースの場合,一般に性能低下させる危険性が多く,避けるべきである。しかし止むをえない場合は,給脂量を増加し,旧グリースをほぼ完全におし出す必要があります。
(4)エアーを混入させないこと
保管上の注意でも申上げたように,集中給油,グリースガン給油,手ざしいずれの場合もよく注意してください。
さて,もとのリチウムグリースの話にもどりますが,リチウムグリースの中にも多種多様なものがあります。小形ベアリングで軽荷重,高速回転の潤滑には,ベースオイルのなるべく低粘度品を使用したものを用いるべきですし,高荷重,低速回転の場合には高粘度品を使用すべきです。また,物によっては長寿命を要求されますので酸化安定性のよいものを,非常に重荷重の所には極圧剤の入ったもの,衝撃荷重のかかるような場合は固体潤滑剤含有のものというようにその用途により変えるべきです。これらの選定には,気軽に油屋と御相談になることをお推め致します。