1989年9月に世界的な大手ベアリングメーカーであるSKF社が発表した,ベアリング寿命の予測理論式について解説します。
ベアリング寿命の新理論※
ベアリング寿命の理論について,新しい発表がなされたようです。簡単に解説して下さい。
解説します。
ベアリングの寿命は初期には(1)式があり,これを改善して(2)式が用いられてきました。
ここにC:基本動定格荷重
P:動等価負荷
p:指数 玉受軸→ 3
ころ軸受→ 10/3
Lna=a1×a23×L10 ・・・・・・(2)
ここに a1:信頼度係数
υ:動粘度
υ1:必要動粘度(nとdmによって定まる)
n:回転数
dm:ピッチ円直径
a23:寿命修正係数
信頼度係数a1は表1のように定まり,寿命修正係数は図1のように動粘度比によって定まります。
表1 信頼度係数 a1
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図1 寿命修正係数と動粘度比 |
理論式(1)ではベアリングに対する負荷条件のみを考慮していましたが,理論式(2)では信頼度係数,潤滑油の動粘度,さらに材質についての考慮が入れられました。
1989年9月に世界的な大手ベアリングメーカーであるSKF社が,バース大学のセミナーにおいて,新しくベアリング寿命の予測理論式を発表しました。これは数多くの実験結果から導びかれました。
(3)式がそれです。
Lnaa=a1×aSKF×L10 ・・・・・・(3)
ここに Pu:破壊負荷限界
ηc:汚染修正係数
aSKF:寿命修正係数
この理論は二つの新しい考えが含まれています。
破壊負荷限界Puがそのひとつで,清浄な潤滑油の状態で疲労が生じない最小の負荷を示します。
他のひとつは汚染係数ηc(イータシー)です。
ηcは潤滑油の状態を次のように示す修正係数です。
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図2にaSKFとηc・Pu/Pの関係を示します。
パラメータ κ はυ/υ1の粘度比を表します。
ベアリングの隙間は0.1~1.0μmであるとされ,潤滑油中の1μm以上の汚染粒子を除去することで寿命は飛躍的に長くなり,図3のように考えられていたのに対して,潤滑油が十分に清浄で,負荷がPu以下であれば図4に示すように無限に使用が可能であるとしています。
図3 古典理論と従来理論 |
図4 新理論 |
※Q&A第1集発刊時点