エンジン油の低粘度化 | ジュンツウネット21

エンジン油の粘度は,SAEの粘度分類で区分され,0Wから50までの10種類に分類されています。低粘度油とは,一般に0W,5W,10Wの粘度についていわれていますが,現在市販されているエンジン油は,5W-30,10W-30のマルチグレードの粘度が主流となっています。

エンジン油の低粘度化

解説します。

エンジン油の粘度は,SAE(アメリカ自動車技術協会)の粘度分類で区分され,0Wから50までの10種類に分類されています*1。低粘度油とは,一般に0W,5W,10Wの粘度についていわれていますが,現在市販されているエンジン油は,5W-30,10W-30のマルチグレードの粘度が主流となっています。

エンジン油の低粘度化は,省エネルギーの観点から,燃料消費を低減させる目的で急速に普及しています。また,寒冷地での低温始動性からも,低粘度油の要求があり,ますます10W-30などのマルチグレードエンジン油が一般的となっています。

しかしながら,低粘度化がさらに進むと,エンジン各部の摩耗を増大させたり,オイル消費を多くさせるため,一般の鉱油系エンジン油では,極度の低粘度化が難しく,揮発性の少ない合成油による低粘度化が普及しつつあります。

乗用車の燃費消費を現行よりさらに低減させてエンジン性能を維持させるためには,基油の選定が重要となっています。合成油を含め,粘度指数の高い鉱油系基油の開発が実用化されており,今後とも低粘度油の開発が進むものと思われます。低粘度化についての利点と問題点について,次のことがいわれています。

1.低粘度化の利点

(1)燃費低減効果

エンジン油の低粘度化は,流体潤滑領域において,摩擦損失を低減させ,燃料消費を低減させる効果があります*2。(図1

動粘度と摩擦トルク低減率(2,000 rpm)
図1 動粘度と摩擦トルク低減率(2,000 rpm)

エンジンの摩擦損失は,ピストンやピストンリングとシリンダライナ,クランク軸や連接棒などの軸受,動弁機構などの摺動部で発生し,さらにオイルポンプなどの補機類の作動でも発生しています。摩擦面が流体潤滑領域から混合,境界潤滑領域になると金属接触による摩耗が増大するため,低粘度化を進めるにはエンジン油の耐摩耗性,摩擦緩和性を考慮する必要があります。

このため,現在のエンジン油は,低粘度化とともに摩擦緩和剤,耐摩耗剤などの添加剤を付与し,さらに燃費低減効果を高めた品質設計となっています。

(2)低温始動性

エンジン油は,寒冷地において粘度が増加し粘性抵抗が大きくなり,エンジンのクランキングができなくなるため,エンジン始動の限界があります*2。(図2

このため,寒冷地では低温での始動性のよい5W-30,10W-30などの低温度マルチグレードエンジン油が使用されています。

エンジン油の低温始動限界粘度
図2 エンジン油の低温始動限界粘度

(3)低温ポンピング性

エンジン油は,低温において流動性が不足し,オイルポンプによる給油が不十分となり,エンジン各部で潤滑不足による異常摩擦が発生します。

エンジン油は,低温において油中に含まれるワックスが析出し,結晶構造となり流動性が悪化します。低温時における流動性は,ワックスの析出温度が低い,低粘度油が有効であり,寒冷地では5W-30などの低粘度マルチグレードエンジン油が一般に使用されています。

2.低粘度化の問題点

(1)エンジン各部の摩耗

低粘度エンジン油の,0W,5Wなどのシングルグレードでは,エンジンが暖気して高温となった場合に,適正な粘度が維持できなくなり,摩擦面において混合,境界潤滑域となり,金属接触による摩耗が発生します。特に摩擦,摩耗が厳しい個所は,動弁機構であり,エンジン油の耐摩耗性は,低粘度油ほど強く要求されています*2。(図3

Stribeck 曲線と摺動部の潤滑領域
図3 Stribeck 曲線と摺動部の潤滑領域

また軸受部の高せん断を受ける個所において,低粘度油は,高温(150℃),高せん断(106S-1)において,粘度低下となり油膜切れによる摩耗が促進され,焼付きや異常摩擦が発生します*2。(図4

高せん断粘度と軸受メタルの摩耗
図4 高せん断粘度と軸受メタルの摩耗

(2)オイル消費の増大

エンジン油の低粘度化は,基油の蒸発性が高くオイル消費が増加します*3。(図5)低粘度化にともなう蒸発損失とオイル消費の関係から,欧州の自動車用潤滑油においては,CCMC(欧州自動車工業会)規格で蒸発損失が規定されています。国内においても同様に,低粘度油の蒸発損失が問題化されており,通常の鉱油系では,低粘度化が難しくなっています。

オイル消費量の増加は,燃焼室内への堆積物を増加させ,さらに排気ガスとともに大気中へ放出され,環境対策としても問題となります。

潤滑油の粘度と消費量
図5 潤滑油の粘度と消費量

以上のように,エンジン油の低粘度化は,今後の省エネルギー・省資源としてさらに進める必要がありますが,摩擦・摩耗とオイル消費の対策が課題となっています。また,自動車の高性能化とともに,エンジン各部への潤滑条件が,ますます厳しくなっており,排気ガス対策を含めエンジン油への要求もますます厳しくなるものと思われます。

 

<参考文献>
*1 SAE HANDBOOK (1987)
*2 桜井俊男 内燃機関の潤滑 幸書房
*3 桜井俊男 新版潤滑剤の実用性能 幸書房

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック


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