建設機械用エンジン油の潤滑管理と余寿命評価について解説します。建設機械に使用するエンジン油としては,現在大多数のエンジンメーカーが,API CD級以上の品質のものを指定しており,最近では,排ガス対策とオイル消費量の低減を目的としたCF-4級を推奨するメーカーもあります。
建設機械用エンジン油の潤滑管理と余寿命評価
建設機械に使用するエンジン油の潤滑管理とどの位使えるのか,余寿命を判定する方法についてご教示下さい。
解説します。
1. エンジン油の選定と管理
建設機械に使用するエンジン油としては,現在大多数のエンジンメーカーが,API CD級以上の品質のものを指定しており,最近では,排ガス対策とオイル消費量の低減を目的としたCF-4級を推奨するメーカーもあります。
粘度に関しては,各メーカーとも使用する気温によりエンジン油の粘度を指定していますが,幅広い気温の範囲で使用できるマルチグレード油を推奨するところも増えています。
日常の管理面では,オイルパン油量を毎日点検し,油量がレベルゲージの下限に近づいた時には必ず補給して下さい。なお,油量の点検や補給は,水平な場所でエンジン停止後,一定の時間をおいて行って下さい。また,その際ほこりや水が入らないよう注意することが大切です。
なお,表1に示しましたように,オイルの量が適正でないと,粘度,全酸価,凝集ペンタン不溶分が増加,全塩基価が減少するなど劣化が激しくなります。
表1 油量による劣化の比較(300時間)
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2. エンジン油の交換基準
エンジン油の性状がどのようになったら交換する必要があるかの目安は,各エンジンメーカーが設定しています。表2はその一例です。
表2 エンジン油の使用限界の一例
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なお。一般ユーザーは,このような試験を行うのが難しいことが多いので,エンジンごとにオイル交換時間が定められています。この交換時間を超えてオイルを使用しても,エンジンに不具合が発生するとは限りませんが,図1に示したように,交換時間が250時間と指定されたエンジンで,500時間無更油で運転した場合,エンジン摩耗量は増加します。
図1 使用油交換の有無によるエンジン摩耗量の比較(500時間運転) |
3. エンジン油の簡単なチェック方法
使用中のエンジン油の一部を取り出してみて,もし乳化していれば多量の水が混入した恐れがあります。手で触れてみて,摩耗粉,錆などの固形物があるかどうかを確かめます。臭いをかぎ,刺激臭や石油臭があれば燃料が漏れて入った可能性があります。以上のようなことがかなりはっきりと認められた場合にはオイル交換を考え,場合によってはエンジンの修理が必要になります。
さらに,現場での使用油の劣化程度を簡単に判断する方法にスポットテストがあります。
(1)清浄分散性および汚染度の判定
試験紙に使用油を1滴滴下し,その状態から図2-1のように清浄分散性(汚染物質をエンジン油内に保持できる性能)と汚染度を判断します。
(2)塩基性の判定
図2-2のように,試験紙に試薬を1滴滴下し,その広がりの中心に使用油を1滴滴下します。その後試験紙上に生ずる色の程度から,塩基性の強さを判断します。
熟練すれば,この方法により,エンジン油の交換時期の目安をつけることも可能です。
4. 余寿命の評価
使用中のエンジン油を定期的にサンプリングして分析し,その結果を図に記入すると,あとどの位使用することができるかという余寿命が推定されます。図3にその一例を示しましたが,新油と使用油の分析値を直線で結び,その延長線が使用限界と交差するまでの時間を求めます。これを,粘度,全塩基価,ペンタン不溶分等について行い,使用限界に達する最小の時間を余寿命とします。図3の場合にはt1となります。なお,余寿命まで使用したエンジン油は,金属分を含む分析を行い,異常摩耗がないかどうか,分析値の傾向は予測通りであるかどうかを確認します。なお,これは,エンジンが同じような条件で使われていることが前提になっています。
図3 余寿命推定の一例 |