船舶用燃料油中のFCC触媒が与える影響 | ジュンツウネット21

船舶用燃料油中のFCC触媒が与える影響について解説します。FCC(流動接触分解法)は,高いオクタン価のガソリンを製造するもので,ガソリンの他に分解灯軽油,分解残油を生成します。使用される触媒は,分解残油に混入します。船舶用燃料油として使用されるC重油は,分解残油を含むため,機関の摩耗を増加させる恐れがあると考えられます。

船舶用燃料油中のFCC触媒が与える影響

船舶用燃料油の中には,FCC触媒が混入しているものがあり,エンジンの異常摩耗の原因になるとも聞いていますが,大丈夫なのでしょうか。
解説します。

FCC(流動接触分解法)は高沸点留分に微細な触媒粒子を混合し,高温で分解して高いオクタン価のガソリンを製造するもので,ガソリンの他に分解灯軽油(LCO),分解残油(DCO)を生成します。使用される触媒は,Si(SiO2:シリカとして存在)やAl(Al2O3:アルミナとして存在)を含む硬質の微粒子でSiO2/Al2O3の比が2.5~4.8の物が使用されています。この触媒はサイクロンにより分解生成物と分離されますが,一部は分解残油に混入します。この分解残油は粘度が低く,硫黄分も少ないため,粘度調整材として重油調合材に使用されることが多い。そのため混入したFCC触媒により燃料噴射ポンプ,ピストンリング,シリンダライナ等に異常摩耗が発生する可能性があります。

舶用燃料油国際規格ISO8217ではJIS重油1種2号(A重油)相当ではアルミニウム+ケイ素(Al+Si)が25mg/kg(触媒微粒子総量としては約50mg/kgに相当する)以下に,JIS重油3種(C重油)相当ではアルミニウム+ケイ素(Al+Si)が80mg/kg(触媒微粒子総量としては約160mg/kgに相当する)以下に規定されています。また,その粒径は新触媒の場合平均で70~80μm程度であり,回収及び再生触媒は20~40μm程度です。

船舶用に使用されている燃料油は,A重油及びC重油で,わが国で実際に販売されているA重油の残渣油は,わずかでFCC触媒はほとんど含まれていないので問題はありませんが,C重油では機関の摩耗を増加させる恐れがあると考えられます。このため,遠心式油清浄機等での処理が不可欠です。

清浄機メーカーによると,油清浄機の清浄効果は,燃料油の性状,処理条件により一定でないため,一概に予測できませんが実績では分離効果を確認しており,清浄機メーカーでは,FCC触媒の分離効果を確認するため,FCC触媒を多く含む燃料油(995kg/m3 at15℃ 360cSt at50℃ アルミニウム含有量60mg/kg,アルミニウム含有量90mg/kg)を使用して,ピュリファイヤ・クラリファイヤそれぞれについて試験した結果(図1),5~10μm粒子では1/10に10~15μm粒子では3/100,それ以上では1/100以下となり,分離効率では(図2)80%でした。FCC触媒を含む燃料油(1012kg/m3 at15℃ 460cSt at50℃ アルミニウム含有量10mg/kg)を使用して,この燃料にアルミニウムで20mg/kgに相当するFCC触媒を添加した試験でも,分離効率では80%(図3 ab)でした。ISO制限値のアルミニウム+ケイ素(Al+Si)が80mg/kgのものでは残留触媒は16mg/kgとなり,微粒子径も10μm以上のものはほとんど除去されます。

キシレン不溶解分の粒径分布
図1
FCC触媒粉の分離効果
図2
FCC触媒を添加した試験
図3

触媒粒子が船舶用燃料にアルミニウムでは7mg/kg,シリカでは15mg/kg以上の場合シリンダライナ,燃料噴射ポンプの摩耗等の増加傾向があるとの報告がある他,触媒粒子30mg/kg添加した燃料油ではシリンダライナの摩耗が触媒無添加燃料と比較して2.5倍になったとの研究報告もあります。ですがこれらは遠心清浄機を使用していないため,FCC触媒粒子が20~100μmのものを多く含むためと思われます。

最近ではメンテナンスフリーの清浄機も発売されており,FCC触媒を含む燃料油は遠心清浄機で触媒を分離することにより80%程度が除去され残りの触媒粒子も小さくなり,FCC触媒を含む燃料油の使用が可能になります。

<参考文献>
*1. 三菱化工機,分析資料
*2. 塩出敬二郎,他 日本舶用機関学会誌,Vol.21,No.5
*3. 塩出敬二郎,他 日本舶用機関学会誌,Vol.23,No.8
*4. 花島 修 内燃機関 Vol.33,No.423
*5. 野村 宏次,舶用燃料の科学

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

アーステック



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