ウォームギヤーの適油選定方法 | ジュンツウネット21

ウォームギヤーの適油選定方法について,AGMAによる方法,Wallwork社の計算式による方法,CRAINE氏の推奨する方法,WATOSON氏による方法,日本能率協会の「潤滑管理者の適油表」による選定方法を紹介します。

ウォームギヤーの適油選定方法

密閉式円筒ウォームギヤーの適油選定には,経験的な選定方法のほか,いろいろな方法によるものがあると聞いています。代表的なウォームギヤーの適油選定方法の要点を紹介して下さい。
解説します。

ウォームギヤーは小さな容積で大きな減速,あるいは増速比が得られ,また回転が静かであるのが特徴です。したがって,減速機,巻上機,運搬機など産業機械用として広く使われています。

歯車のかみ合い面の運動をすべりの点で区別すると二つに分けることができます。

(1)歯車に沿ってのみすべりが作用するもの(平歯車,はすば歯車,やまば歯車,傘歯車など)
(2)歯形,歯筋方向の二つにすべりが作用するもの(ウォーム歯車,ハイポイド歯車など)

ウォーム歯は歯車のうち,そのかみ合いは滑りが大部分をしめているので,すべり速度が大きく潤滑条件として極めて過酷であり,摩擦損失が大きいため一般工業用ギヤー油と区別してウォームギヤ油があり,特有の品質性能をもつものが製品化されています。

歯車用潤滑油の選定は,歯車においても,軸受と同様のことがいえます。すべり合う面の間においてG=Zv/P(G;摩擦係数,Z;潤滑油の粘度,v;すべり速度,P;荷重)の関係が成り立ちます。Zv/Pの値が小さい場合には境界潤滑状態にはいり,油膜の破断による金属接触,融着を起こすことになります。Gの値を一定とした場合,P(荷重)が大きな値であって,v(すべり速度)が一定であればZ(潤滑油の粘度)を大きくすることが必要になります。すなわち,低速高荷重の歯車には高粘度油を選ぶことになります。

したがって,潤滑油適油選定にあたっては次の種々の条件を十分に検討することが必要です。

(1)歯車の種類;平歯車,はすば歯車,ウォーム歯車など
(2)運転条件;馬力,回転数,荷重,減速比など
(3)給油方法;循環,油浴,塗布,スプレーなど
(4)周囲温度

以上,一般的な適油選定に必要な条件を記しましたが,潤滑油の粘度が必要以上に大きいものを使用すると与えられた荷重を伝達するとき油膜の厚さが大となり,油膜は切れにくいものとなってスコアリングが起きにくくなりますが,歯車のかみ合い位置に供給することが困難となります。

ご質問のウォームギヤー油適油選定方法については従来よりいろいろな方法が発表されていますので,実際の機械に適応して検討の上適油の選定をして下さい。以下に代表的な方法を紹介します。

a)AGMA(American Gear Manufacture's Association 米国歯車製造者協会)による方法

AGMAによる選定表を表1に示します。

表1 AGMA No.によるウォームおよびコーンウォーム歯車用潤滑油選定表
中心距離(cm)
ウォーム回転数(以下)
周囲温度(℃)
ウォーム回転数(以上)
周囲温度(℃)
-10~16
-10~52
-10~16
-10~52
AGMA No.
AGMA No.
15以下「円筒形」
700
7Comp
8Comp
700
7Comp
8Comp
15以下「鼓形」
700
8〃
8A〃
700
8〃
8〃
15~30「円筒形」
450
7〃
8〃
450
7〃
7〃
15~30「鼓形」
450
8〃
8A〃
450
8〃
8〃
30~45「円筒形」
300
7〃
8〃
300
7〃
7〃
30~45「鼓形」
300
8〃
8A〃
300
8〃
8〃
45~60「円筒形」
250
7〃
8〃
250
7〃
7〃
45~60「鼓形」
250
8〃
8A〃
250
8〃
8〃
60以上「円筒形」
200
7〃
8〃
200
7〃
7〃
60以上「鼓形」
200
8〃
8A〃
200
8〃
8〃

b)Wallwork社の計算式による方法

Wallwork社の計算式
Z=60℃のレッドウッド秒粘度

ただし粘度に与えられた範囲は0~180,120~225,200~300,250~450,360~600,500~850,800~1,000,1,000以上です。減速装置が2組の歯車からなる場合には両方から算出した値の平均をとります。

c)CRAINE氏の推奨する方法

CRAINE氏が作動条件に応じてウォーム歯車に推奨した粘度表を表2に示します。いずれかの材料が銅合金を使っている場合にはマイルドタイプの極圧潤滑油のみを推奨しています。

表2 CRAINE氏の推奨するウォームギヤー油とその粘度
 
周囲温度 °F
作動条件とウォーム速度
-18~5
5~30
30~50
全部
普通
重荷重
普通
重荷重
断続
290EP
400comp
380EP
400comp
380EP
連続,ウォーム速度600rpm以下
290EP
400comp
470EP
600comp
570EP
連続,ウォーム速度600rpm以上
290EP
350comp
380EP
400comp
470EP

d) WATOSON氏による方法

WATOSON氏はH・Sc/Vを粘度の指標として用い表3を発表しています。ただしH;軟らかい方の歯車のビッカースかたさ,Sc;単位歯幅当たりの法線力1b/inを相対曲率半径inで除去したもの,V;ピッチ円周速度ft/minです。

表3 ウォーム歯車に対する適正粘度
100Sc
V
5以下
5~14
14~30
30~60
60~100
100以上
センチストークス@60℃
30
45
70
100
150
250

ウォームギヤーの適油選定方法をa)~d)まで紹介しましたが,この他にも歯面圧により求める方法,David Brown社による方法などがあります。また,日本能率協会の「潤滑管理者の適油表」によるウォームギヤー油の選定方法は表4のようになっています。

表4 ウォームギヤー油適油選定方法(日本能率協会)
運転温度(周囲温度) ℃
給油方法
適油
ISO粘度グレード
30未満 油浴 99~216(cSt @40.0℃) 150
塗布・充填 ギヤーコンパウンド 55~110(cSt @100℃)  
グリース 320~370(ちょう度 @25℃)  
30以上 油浴・はねかけ 一般 131~351(cSt @40.0℃) 150,220,320
高温 261~603(cSt @40.0℃) 320,460
塗布・充填 ギヤーコンパウンド 120~250(cSt @100℃)  
グリース 320~370(ちょう度 @25℃)  

ウォームギヤー油の選定は実際には形式(密閉式,開放式),歯型にかかる接触圧力,使用条件,材料,回転数,減速比,運転温度等各種の要因があるため適油選定は難しいといえます。とくにウォーム歯車は荷重,速度比も大きく歯車の温度も上がりやすいので適正粘度に余裕を持たせ油膜強度の大きな油を選定することが大切です。

<参考文献>
日石レビュー;第10巻,第3号 45~96
日本潤滑学界編;潤滑ハンドブック
(社)日本能率協会;潤滑管理者の適油表

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

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