オイルエア潤滑とオイルミスト潤滑の違い | ジュンツウネット21

オイルエア潤滑とオイルミスト潤滑の違いがよく分かりません。ご教示下さい。

解説します。

近年,高速切削を目的として工作機械の主軸の高速化が著しく,高速主軸に用いられる軸受として転がり軸受が,一般的にその高い信頼性やあつかいやすさから,もっとも多く使用されています。

転がり軸受を高速回転で使用する場合,焼き付きや高い温度上昇の危険性が考えられ,潤滑方法の選択には,注意を要します。

dm・n値が100万以上の転がり軸受の潤滑方法には,オイルミスト潤滑や,ジェット潤滑があり従来から前者は,オイルミストによる環境汚染が,後者では大規模な給油設備による高いコストや,油のかくはん抵抗による動力損失などが問題となっていました。

これに対し,約7年くらい前よりオイルエア潤滑が開発,製品化され,オイルミスト潤滑と並び,そのシステムの簡便さから注目され,需要が高まってきています。

1. 原理

1.1 オイルミスト潤滑のミスト発生原理

オイルミスト装置は,ベンチュリ管を利用した給油器であり,空圧機器などのオイラーがこれに相当し,圧縮空気を使用して油をミスト化させます。給油器中で圧縮空気は,ベンチュリ管を通過する際に油を油槽から吸い上げ,油適を発生させます。この時点で油は細分化され,細かい粒子は給油管内に空気とともに流れ,大きい粒子は油槽内に落下します。

給油配管内に流れたミストは,ドライミストと呼ばれ,給油配管から枝分かれした各潤滑個所ごとに設けられたリクラシファイヤ(ノズル)によりウェットミストに変換されたのちに,潤滑点へ供給されます(図1)。

ドライミスト

図1

1.2 オイルエア潤滑の原理

オイルエア潤滑において,油滴は空気の流れによって分割され,短時間で分散され,空気の流れの方向に連続的に運ばれるという原理にもとづいており,実際に油滴は,狭い管の内壁に沿って潤滑点に向かって運ばれます。

潤滑点に到達した油は,摩擦点に溜まり,一方空気は,油をほとんど含まずに出口から排出されます。

定量ピストン式分配器

図2

オイルの供給方式としては,インジェクションオイラ式と,定量ピストン式分配器を使用したものがあり,微少油量供給の安定性や,オイル主管圧力の検知による異常診断の容易さから現在,後者が主流となっています(図2)。

2. システム

2.1 オイルミストの潤滑のシステム

機械潤滑用のオイルミスト潤滑装置は,大きく分けてミストを発生する装置と,ミストを軸受などの潤滑点へ吹きつけるノズル機構と,両者をつなぐ配管の3つになります。

オイルミストの発生装置は,できるだけ細かい油の粒子からなるオイルミストを,その容量に応じて発生し,供給するもので,一定条件(空気圧力,油粘度一定)のもとでは,概ね安定したオイルミストを供給することができます。

2.2 オイルエア潤滑システム

基本的な構成要素としては,次のように分類することができます。

(1)オイル供給ポンプユニット(コントローラおよびオイル圧力スイッチ付)
(2)ミキシングバルブ(定量ピストン式分配器内蔵)
(3)エア用圧力制御弁
(4)エア用圧力計
(5)エア圧力検知用圧力スイッチ

オイル供給ポンプユニットは,電動ポンプでも,空圧駆動ピストンポンプのどちらを使用してもよく,低粘度の潤滑油に対しては,性能上ピストンポンプがよく使用されます。

ミキシングバルブの吐出量は,定量ニップルを交換することにより0.03,0.06,0.10,0.16cm3/ストロークの範囲で変更可能であり,0.01cm3/ストロークに対しては,分配器内部構造の異なるものを選択することができます。

また吐出量は,上記ニップル交換と,コントローラの休止時間制御で,よりきめ細かな給油量をカバーすることが可能です(図3図4)。

オイルエア潤滑ユニット

図3 オイルエア潤滑ユニット

オイル供給ポンプユニット

図4

3. オイルエア潤滑とオイルミスト潤滑の比較

両システムの共通利点

(1)つねに新鮮な油を供給しているため軸受の寿命が延びる。
(2)つねにエアが潤滑点に供給されるため冷却効果がある。
(3)潤滑点にエアによる内圧が発生するため異物の混入を防止する。
(4)大規模の潤滑システムを集中管理できる

両システムともに共通した利点がありますが,基本的には,圧縮空気中にオイルを送り込む方式がそれぞれ異なります。潤滑油量の正確な供給に関していえば,オイルミスト潤滑は油粘度や空気圧力の変化で,オイラーのベンチュリ効果による滴下油量が影響を受けます。しかし,オイルエア潤滑は定量方式であるため,それらによる影響は皆無といえます。

使用に際しては,その目的などにより,コストや保守管理などで両システムともに一長一短があり,使用条件などを十分考慮して検討する必要があります。高速回転する軸受を潤滑する場合,その潤滑油量は,規定値より少なすぎると短時間で軸受が焼き付き,逆に多すぎる場合は温度上昇が発生します。空気による冷却効果と,微少油量による潤滑効果の有効な接点を容易に得ることができる点では,オイルエア潤滑が優れているといえます(表1)。

表1 オイルエア潤滑とオイルミスト潤滑の比較

比較項目
潤滑システム
オイルエア
オイルミスト
システムの特徴 各々の潤滑個所ごとにオイルエアを定量分配する 空気配管主管中にオイルミストを発生させ比例配分する
潤滑油量のバラツキ ピストン式分配器により規定量を確実に供給 空気圧力・油量調整により変化
潤滑油量の変更 分配器の定量ニップルの変更
タイマーによるポンプ駆動頻度の変更
(いずれの場合も定量的に変更可能)
空気圧力の変更
空気圧力油量調整ネジによる変更
(いずれの場合も定量的な変更困難)
空気量・空気圧力の変更 空気量は潤滑個所ごとに変更可能(潤滑油量の変化なし)
空気圧力は系統的に変更可能(潤滑油量の変化なし)
空気量は系統ごとに変更可能(潤滑油量の変化なし)
空気圧力は系統的に変更可能(潤滑油量の変化あり)
油粘度による潤滑油量のバラツキ 定量式のため,影響無 粘度の影響大(低粘度―多,高粘度―少)
配管による潤滑油量のバラツキ
環境汚染
空気量と潤滑油量の相関 各潤滑個所ごとに設定可能 空気量と潤滑油量が比例
機械的作動部分

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部

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最終更新日:2021年11月4日