自動車輸出時の防錆処理 | ジュンツウネット21

自動車を輸出する際にどのような防錆処理を行っているのですか。

解説します。

1. 各国の防錆基準

カナダ,北米,北欧では,冬季に道路凍結防止のため散布される塩によって,自動車の車体が腐食します。一方,日本では,道路における塩害はまだ少なく,むしろ,沖縄のように,海からの塩分による腐食がよく知られています。

各国では,表1表2に示すような防錆基準を設け,日本からの輸出車に対しても,この基準に合格することが必要となります。

表1 カナダ,北欧5ヵ国の防錆コード
 
カナダ
北欧5ヵ国
対象
乗用車,バス・トラックのボディー部品
乗用車




ボディー表面錆なきこと 1.5年または6万km
3年
孔あき錆なきこと 5年または20万km
6年
構造部位のダメージなきこと 6年または24万km
なし
めっき部品の錆なきこと なし
3年
塗装不具合なきこと なし
3年
表2 GM,FORD,CHRYSLER “10-5-2-1”コード
性能要件 孔あき,錆なし
10年
表面錆なし
5年
E/Gルーム内錆なし
2年
床裏部品錆なし
1年

2. 自動車の腐食部位

表3は自動車の腐食に関する欧州の市場調査結果です。

表3 おもな自動車部位の腐食の種類と原因
部位
材料
特徴
原因
ボディー外板 スチールシート すき間腐食
付着物腐食
異種金属接触腐食
ボディー合わせ目,エッジ部などにつく水分,塩分,ダストなど
ホイルハウス,
フェンダー
スチールシート 孔食
全面腐食
すき間腐食
付着物腐食
飛石による塗膜の損傷
すき間や棚にたまる水分,塩分,泥
砂利による表面保護層の摩滅,はく離
ドアー,シル スチールシート 全面腐食
すき間腐食
付着物腐食
排水不十分なドアー,シル構造による水分,塩分,ダストの捕集
フロアー スチールシート 全面腐食
すき間腐食
付着物腐食
すき間やカーペットの下に集まる水分,塩分,特にエッジ部に沿って飛石による塗膜の損傷
シャーシ部材,
ピラー
スチールシート すき間腐食
全面腐食
付着物腐食
部材,すき間,溶接部にはいる水分,塩分,泥,飛石による塗膜の損傷
スプリング接着部,駆動装着部 スチールシート すき間腐食
全面腐食
疲労腐食
装着部の補強材によって形成されるすき間にはいる水分,塩分,泥
ブレーキパイプ 亜鉛被覆されたスチールチューブ 付着物腐食
異種金属接触腐食
孔食
亜鉛被覆が腐食して銅の層を露出する
銅に孔がある時に異種金属接触腐食がおこる
バンパー 装飾的なクロームニッケル
めっきされたスチール
アノード化されたバンパー
孔食 路上の泥,塩分,および排気ガス腐食を促進

車体の錆は外面と内面の両方から進行します。外面の錆は,道路上の小石がはねあげられ傷ついた塗装部分から発生します。特に車の下部ホイールハウスに多いようです。一方,内面の錆は,ドアやサイドシルなどの袋状またはボックス状構造部分や鋼板の合わせ部分など表面処理がしにくい場所で,泥水などがたまるととれにくい所に発生します。内面の錆は表面からは分かりにくいので気づいた時には手遅れになりがちです。

図1はスウェーデンにおける車体腐食の調査結果ですが,外面の錆は後輪まわり11,内面の錆はフロントドアー8での発生が最も多くなっています。

スウェーデンにおける乗用車の発錆部位
図1 スウェーデンにおける乗用車の発錆部位

3. 車体防錆剤の用途

 次の場所に防錆剤が使用されます。

(1)内面用

ドア等の袋構造部,特にヘム部や板の合わせ部用。(図2

車体内面部の構造
図2 車体内面部の構造

(2)床下用

車体フロア対地面,足まわり,シャシー用。

(3)新車外面保護用

新車の塗装面の保護用。

4. 車体防錆剤の組成

(1)溶剤希釈形

炭化水素溶剤に不揮発性の皮膜形成剤(アスファルト,マイクロワックス,酸化パラフィン誘導体,ラノリン誘導体など),防錆剤を溶解または分散させたもので,最も広く使用されています。

(2)乳化形

マイクロワックスと水を乳化剤で乳化させたもので,水が蒸発するとマイクロワックスの皮膜ができて錆を防ぎます。ただし,乳化剤が残ると防錆能力が落ちるので,皮膜形成後に乳化剤も揮発するような方式が多くなっています。

(3)ホットメルト形

アスファルト,マイクロワックス,ポリマーなどと防錆剤を配合した固形物で,加熱溶融して塗布します。溶剤を使わず,乾燥工程が不要な長所がありますが,塗布作業がやや面倒です。

5. 車体防錆剤の規格

公的には米軍規格とフィンランド規格があります。自動車メーカーは独自の規格を持っていますが非公開が多いようです。米軍規格MIK-C-62218Aは新車用(Type 1)と使用車用(Type 2),MIL-C-0083933Aがあり,溶剤希釈形の車体防錆剤ですが,溶剤として芳香族炭化水素とハロゲン化炭化水素の使用を禁止しています。塩害を想定した塩水噴霧試験や塩水浸漬試験のほか,繰り返し洗車した際の皮膜耐久性を評価する耐洗剤性,道路舗装用の砕石をぶつけて皮膜強度を見る耐チッピング性など多くの試験項目があります。

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