潤滑油そこが知りたいQ&A

カメラに使われる潤滑剤 | ジュンツウネット21

カメラにはどのような潤滑剤が使われているのか教えて下さい。

解説します。

まずはじめにカメラは,冬山の極寒地から,砂漠の灼熱地帯まで,ありとあらゆる場所で使われます。したがいまして,高温高湿から低温まで様々な環境下で機能・性能を満足できるようにしなければなりません。また,そのような環境下で長時間放置されることも珍しくありませんので,放置後も同様に機能・性能を要求されます。このような点が,室内設置型の機器等と大きく異なる点と言えます。

さらに,カメラは前述のあらゆる条件下においても,瞬間的な動作の中で,高速でなおかつ高精度の動きが要求されています。

例えばオートフォーカスレンズ駆動部(図1)は,被写体までの距離に応じて,レンズとフィルム面の間隔を変えて,被写体の像が正しくフィルム面に結像されるように,いわゆるピント調整を成すものですが,シャッターボタンが押されて,シャッターが開く直前に,瞬時に必要な量だけ駆動されます。しかも,その精度はミクロンオーダーで停止させなければなりません。このような精度を達成させるために,高度な制御方式を開発し,それを採用していますが,急激な負荷変動があると,制御誤差が生じてしまうことになります。

また,シャッター機構(図1)はフィルムに必要な露光量を時間的に与えるものですが,数秒から数百分の1秒まで,場合によっては数千分の1秒まで正確に露出時間が得られなければなりません。特に高速シャッターでは,負荷変動によるわずかな動作スピードの変化も,大きな露出誤差となってしまいます。

鏡箇部構成図
図1 鏡箇部構成図

1. 潤滑剤に必要な性能

このような高精度の駆動をあらゆる環境下で機能・性能を満足するために,温度依存性が少なく,瞬時に性能を発揮する潤滑剤が必要とされます。もちろん,温度依存症だけではありません。低しゅう動負荷性(低粘性),耐摩耗性等の条件も付随します。

さらに,レンズ付近,シャッター付近では,油の滲み出しが大きな問題となります。
 レンズ付近の場合は,油が滲み出すことにより,光が反射しないように処理してあった部分が反射するようになったりすると,光学的に悪影響を及ぼし,フィルムに不必要な露光がなされてしまいます。もちろん,レンズに直接付着してしまうとレンズ性能が出なくなりますので,絶対に避けなければなりません。

シャッター付近の場合は,非常に軽い羽根を高速で作動させていますので,油が付着すると,油の粘性で秒時に狂いが生じ,適切な露光量が得られなくなってしまいます。

したがいまして,レンズおよびシャッター付近においては特に,油の滲み出しのないことが要求されます。

材料という観点で考えますと,近年カメラの部品はプラスチックで成形されたものが大半を占めておりますので,プラスチックに影響を与えないということも要求されます。プラスチックも機能部位によって様々な種類のものが使われておりますが,潤滑剤によっては,表面が溶融したり,クラックが入ったりする場合もあります。いくら初期特性が向上しても,時間の経過とともに悪化してしまう場合もありますので,そのようなことのないように選択しなければなりません。

また,カメラとは直接は関係ありませんが,忘れてならないのが環境破壊問題です。当然のことながら,フロンやオゾン層破壊物質の使用は避けなければなりません。

2. 乾燥皮膜潤滑剤を多様

このように,潤滑剤に要求される条件が多岐にわたっているため,全てを満足させる潤滑剤を探すということに我々も苦労しているというのが実情です。

そのような中で,現在よく使われているのは乾燥皮膜潤滑剤と言えます。
 必要な部分だけ塗布する場合と,部品丸ごと塗装のように処理してしまう場合と二通りありますが,いずれも液状の潤滑剤で,塗布後乾燥するタイプのものです。

具体的には,用途に応じて異なりますが,代表的なものとしては,必要な部分だけ塗布する場合には,フッ素系樹脂と特殊結合剤を速乾性の溶媒に分散させたもの,部品丸ごと塗布する場合には,二液型ウレタン樹脂塗料が挙げられます。いずれも前記条件を満たすものを選択しております。

乾燥皮膜潤滑剤を多用している機構が他にもあります。それは,ズームレンズ付きコンパクトカメラの場合に付加されるもので,ズーム機構(図1)です。
 ズーム機構は,レンズの構成によって決まる焦点距離を変化させるものであり,分かりやすく言うと,広角から望遠まで,ある限られた範囲内で,撮影画角を撮影者の意思で調整できるものです。

具体的には,数枚のレンズにより構成されるレンズ群を複数の鏡筒(レンズを支持する円筒状の枠)に収め,その鏡筒をレンズの特性に合わせて光軸方向(フィルム面に対して垂直方向)に移動させ,レンズの間隔を保てるように構成されています。その鏡筒同士がスムーズに作動できるように同様の潤滑剤が使われています。

さらに近年,ズームレンズ付きコンパクトカメラも生活防水タイプのものがいくつか用意されておりますが,防水上,前記鏡枠の外周に沿ってゴムリングをかませ,相手部品との間を密閉構造にしています。

プラスチックの筒にゴムリングをはめてスライドさせるため,必然的にしゅう動抵抗が大きくなってしまいます。しかし,それをあえてスムーズに作動できるように同様の潤滑剤が使われていますが,しゅう動抵抗を極力抑えるために,フッ素系樹脂の含有量を増やしたりしています。またこれにより,撥水性も向上させています。

また,潤滑剤に要求される条件が若干異なる部位もあります。温度依存性については同様に必要な条件となりますが,油の滲み出し等,多少許容できる駆動部があります。

それはフィルム給送機構部(図2)です。フィルム給送機構は,基本的にはモーターの駆動力を歯車で伝達するのが一般的です。

駆動系構造図
図2 駆動系構造図

カメラを小型化するうえで,モーターも極力小さいものを選択するため,減速したり,必要な駆動部まで連結したりで,非常に数多くの歯車を使います。したがいまして,歯車の伝達効率が非常に影響してきますので,その効率を向上させるために潤滑剤が使われています。

軸受部は当然のことながら,場合によっては歯面にも使われることがあります。

このような部位では,代表的なものとして,基油にパーフルオロポリエーテルの合成油を使用し,フッ素樹脂で増ちょうしたものを使用しております。もちろん,フィルム給送機構部にも,油の滲み出しに対してシビアな部位もありますので,そのような部位では,前述の乾燥皮膜潤滑剤を使用しています。

全く別の観点でカメラ特有の厳しい要求事項があります。それは,カメラには必ずフィルムという感光材を入れて使うものですが,フィルムは化学変化に対して非常に敏感なものであるということです。

例えば,ガスの発生するような潤滑剤を使った場合,ガスの種類によっては,フィルムの感光材が化学変化を起こすガスかぶりという現象が生じたり,撮影済の感光した部分が元に戻ってしまう潜像退行という現象が生じたりすることがあります。せっかく撮った写真が台無しになってしまっては元も子もありません。これは,潤滑剤に限らず,プラスチック等にも言えることですが,材料や潤滑剤を選択する時には細心の注意を払っています。

以上のように,カメラとひと言で言っても,様々な機構が凝縮されており,それぞれ要求される条件が異なってきますので,必然的に使用する潤滑剤も種類が増えてしまいます。

そのため,ここに挙げた潤滑剤以外にも様々なものが使われていますが,ここでは主要部に使われている代表例に止め,その他は割愛させていただきますのでご了承ください。

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